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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【1月26日㈬~2月1日㈫】

感染者は増加中ですが(早くピークアウトしてくれ!)、ザジ配給作は全国各地で引き続き上映中。『MONOS 猿と呼ばれし者たち』は、2月5日㈯から長野 上田映劇、新潟シネ・ウィンドで、12日㈯からは東京 下高井戸シネマでの上映がスタートします。“カール・テオドア・ドライヤー セレクション 奇跡の映画”も、シアター・イメージフォーラムで続映中。2月12日㈯からは、名古屋シネマテーク、神戸・元町映画館でも始まります。各地の皆様、感染症対策万全の上、ぜひ劇場に足をお運びください。

既報の通り、残念ながら7月29日で閉館することが決まっている岩波ホールでは、1月29日㈯からジョージア映画祭2022がスタートしました。私も早速30日、『ピロスマニ』を観てきました。この映画は、映画祭の企画をされた画家・絵本作家のはらだたけひでさんの「人生を変えた」という1本。出控えの方が多いかも…と心配しましたが、場内はほぼ満席の大盛況でした。弊社配給のテンギズ・アブラゼ監督“『祈り』三部作”も、明日2月3日㈭、13日㈰に一挙上映されますので、ぜひこの機会にご覧ください。

テンギズ・アブラゼ監督作『祈り』

さて。先週の当通信の最後に、新規に買い付けを進めているクラシック作品を発表しようと思っていたのですが、あの時まだ契約が完了しておらず発表を見送っていましたが、このたび無事契約完了。トップ画像をご覧になればお分かりの通り、アニエス・ヴァルダ監督の『冬の旅』を久しぶりにライブラリーに加えることが出来ました。パチパチパチ♪

元々『冬の旅』は、フランス映画社さんが1991年にBOWシリーズの1本として、シャンテシネで公開したのが日本初紹介。1985年にヴェネチア国際映画祭で最高賞である金獅子賞を獲ったにもかかわらず、放浪の果てに寒々しい田舎道で野垂れ死んだ少女のことを、旅先で出会った人々が回想する話…という題材の難しさからなのか、フランス映画社さんを以てしても、日本で正式に劇場公開されるまで6年を費やした作品でした。しかしながら、欧米ではヴァルダ作品としては“最も商業的に成功した“作品、と言われていて、作品的にもヴァルダ作品の5本の指、もしくは3本の指には入る代表作の1本に数えられています。

ザジが「久しぶり」にライブラリーに加えた、というのはどういうことかと言うと、フランス映画社さんの権利が切れた後、ザジがビデオ化権を買い付けて、1996年にビームエンタテインメント(現ハピネット)さんでビデオを出して頂いた経緯があったのでした。その時のタイトルは『さすらう女』というものでした。『冬の旅』の原題は「Sans toit ni loi」。あの有名なシャンソン「サントワマミー」をもじったタイトルだそうで、言葉遊びが得意なヴァルダさんならでは。日本語に直訳すれば「屋根(家)も無く、法も無く」という意味です。ちなみに英語題名は「Vagabond」。こちらは「放浪者」という意味で、ビデオ邦題はこちらから派生したもののようです。

アニエス・ヴァルダ監督作『冬の旅』

ヴァルダ+ドゥミ作品の「どれを契約延長して、どれを手放すか」を悩んだ末に決めた話を先週の通信で書きましたが、実はその際『冬の旅』をパッケージ契約の中の1本に新たに入れることにしたのにはワケがあります。この春に都内で行われる特集上映の中での1回限りの上映のため、というのも一つの理由なのですが(詳細は後日お伝えしますね)、年明けの朝日新聞声欄に載った、70代の読者の女性の投稿に背中を押されたのでした。

見出しは「生きてみようと思った『冬の旅』」。その方の「最も心に残った映画」が『冬の旅』。90年代に映画館でご覧になった際、映画を観ながら、帰りの車中で、そして家に帰ってからも涙がとめどなく伝い、「彼女は私の代わりに死んでくれたのだ」と感じたのだそうです。先に書いたジョージア映画祭を企画されたはらだたけひでさんにとっての『ピロスマニ』と同様、こんなにも観る人の人生に深くかかわる映画だったのだと、あらためて感じ入りました。『冬の旅』も凄いけど、映画の持つ力って凄いです。

その『冬の旅』ですが、今後どんな形で観て頂けるようにするか、じっくり検討しますので、どうぞ楽しみにお待ちくださいね。

texte de daisuke SHIMURA








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