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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【2月2日㈬~2月8日㈫】

“ピエル・パオロ・パゾリーニ生誕100年記念上映” 『テオレマ 4Kスキャン版』/『王女メディア』の公開まで一ヶ月を切り、宣伝の仕込みもたけなわ。ヒューマントラストシネマ有楽町新宿武蔵野館で発売中のポストカード付2回券(¥2,200)の売れ行きも好調で、あとは第六波が収束してくれるのを願うのみです。あぁ、神様、パゾリーニ様…。

今回の生誕100年上映にあたって、上映2作品の権利買付けの経緯については昨年12月の当通信で書いたので、今日はパゾリーニからはちょっと離れて、『王女メディア』役のマリア・カラスのドキュメンタリー作品にまつわるお話です。

『王女メディア』の一場面

ザジが自社配給作品の買付けだけではなく、他社さんがリリースするレンタルビデオ向けの、いわゆるジャンル物や、セル向けの旧作の買付けのお手伝いもしているのは、ザジ30年の歴史を振り返る連載“Histoire De Zazie Films‘’でも触れていますが、そうした作品の情報を収集する際に、自社では出来得ないけれど、確実にマーケットのある作品が見つかることがあります。時は2008年。フランスの会社のリストの中にマリア・カラスのドキュメンタリーがありました。私や、うちの会社のスタッフで、マリア・カラスやオペラに詳しい人間はいないので、ご興味のありそうな、とあるビデオメーカーの担当の方に紹介したところ、「ぜひリリースしたい!」と言ってくださり、具体的な条件の提示を受けて、買付け交渉を進めることになりました。ひと月ほどの交渉の末、無事フランス側と合意。さあ国内のビデオメーカーとも契約をまとめなければ…と思っていた矢先…

「やっぱりいりません。社内稟議が下りると思っていたけど、下りませんでした」。いや、そんなに簡単に言われても…。私はあなたに決裁権があるとばかり…。揉めました…。 細かな経緯は書けませんが、要はその担当の方と、まだ信頼関係が出来上がっていなかったがゆえのトラブル、ということなのでしょう。クライアントを失ったまま、フランス側との契約合意、という事実だけが残りました。年末ギリギリの時期でした。

仕事納めの日。年末のご挨拶に伺った、長年のお付き合いで信頼関係の出来ている、別のメーカーの担当の方に、トラブルの経緯を話したところ…、「面白いネタじゃないですか(トラブルが、ではなく、作品が)。やりましょうよ!私は詳しくないけど、詳しい人に力を借りましょう」。私は、あくまでも世間話として話をしただけで、既に信用を失ってもフランス側にキャンセルの意志を伝えるつもりだったので、意外な反応がかえってきてビックリしました。

年明け、仕事始め早々に“詳しい人”に相談しました。オペラやクラシックに造詣の深い某配給会社の社長です。「いいわよ。やりましょう」。そこでも即決。12月末の仕事納めの日に始まったプロジェクトは、突貫工事の後、3ヶ月後の3月28日に初日を迎え、結果的にスマッシュヒット、という早ワザの展開を見たのでありました。ディテールを書けないので、私の筆力では臨場感をもって再現することが出来ないのですが、怒涛の3ヶ月でした。劇場ブッキングにもまだ余裕のあった時代だから出来たことかもしれません。そんなことがあったので、マリア・カラスと聞いて、真っ先に浮かぶのは、「稟議下りないので、いりません」と、サラッと言ったあいつの顔!(恨)

『ラブ・ストリームス』の一場面

他社作品買付けの話題のついで、と言ってはなんですが、諸般の事情で昨年末の発売の予定が延期になっていたジョン・カサヴェテス監督の『ラブ・ストリームス』のブルーレイ発売日が決まりました!IVCより3月18日に発売!このタイミングに劇場上映権の再取得も目指したのですが、条件が合わずに(要は高い!)断念した経緯もあり、しばらくはスクリーンでご覧になれる機会が作れそうにありません。ぜひブルーレイでご覧ください!

texte de daisuke SHIMURA











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