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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【6月19日㈬~6月25日㈫】

当通信でここ何週かに渡って「只今、作り込みの真っ最中」と前振りをしていた作品が先週末ようやくネット上で情報解禁となりました。9月20日公開の台湾映画『本日公休』です。

台中の、とある町のはずれにある理髪店を舞台に、店を一人切り盛りする女性店主アールイさんと、彼女が女手一つで育て上げた3人の子供たち、常連のお客さんたちとのエピソードで綴るドラマで、全編を通して柔らかなノスタルジーを感じさせながらも、家族なのに何故か上手くいかない感じとか、職人としての矜持とか、“老い”をどう受け入れるのか?とかを繊細に描き出していて、ちゃんと“今”の映画になっています。

チラシも完成!上映劇場で配布が始まっていますので、ぜひ手にお取りください! 

昨年3月の大阪アジアン映画祭で上映され観客賞と薬師真珠賞(俳優賞)を受賞し、一般公開を望む声も多かった映画で、私も大阪で観ていてとても気に入っていたので、映画祭の後しばらくして、長年のお付き合いの竹書房・Oさんから「これ買ったんですけど、一緒にやりませんか?」とお声をかけて頂いた時には、私的にはひとつ返事でOK。すぐに社内のスタッフにも試写してもらい賛同が得られたので、竹書房さん、オリオフィルムズさんとの3社提供、オリオさんとの共同配給、という形で公開する運びとなりました。台湾映画を手掛けるのは、2020年6月、コロナ禍の最中の公開となってしまったツァイ・ミンリャン監督作品『あなたの顔』(トランスフォーマー提供)以来4年ぶり。今回の共同提供、共同配給の 2社さんと組むのは、チェン・ユーシュン監督の『熱帯魚』/『ラブゴーゴー』再公開の際に宣伝のお手伝いをさせて頂いて以来5年ぶりです。

ポスタービジュアルはご覧の通り。いかがでしょうか?結構良い感じに仕上がったのでは?と自負しているのですが…。しかし、実はここに辿り着くまでには紆余曲折がありました。特に邦題。既に大阪アジアンで『本日公休』という原題のままで上映されているので、さほど精査もすることなく「本公開も原題のままで」という感じで進んでいました。が、気にかかっていた点がひとつ。原題は、主人公の理髪店の店主アールイさんが、とある事情で急遽店を閉めて出かけるところから来ているのですが、日本語的には“公休”は前もって定められたお休み、というニュアンスが強いですよね。本作はどっちかというと“臨時休業“。

なので、皆でもうひと踏ん張り頭をひねって、別の案を出し合うことにしました。題名を見たり聞いたりしただけで内容が想像出来る、いわゆるベタな邦題に傾きかけたこともありました。ここでは敢えて候補となった案は書きませんが、もし書いたら「あぁ、そんな題名にならなくて良かった!」という皆さんの声が聞こえてきそうです…。 

で、一周まわって原題のままの『本日公休』に決定したのは、話し合いスタートから約一か月後のことでした。しかしその一か月は決して無駄ではなく、何度も皆で話し合っているうちに、宣伝の方向性も見えてきた、というプラスの作用もあったことをここに記しておきます。話し合い、大事。 

メインキャッチコピーの「いつもどおりで? いつもどおりで。」は、本編中のセリフのやとり取りからの引用です。割とすんなり決めました。いつも同じ理髪店を利用している男性なら、身に覚えのあるやり取りですよね? あ、でも映画の観客のターゲットの半分は女性。美容室を利用したことがないので分からないのですが、こういうやり取りは美容室でもありますよね?きっとあるに違いない(笑)。 

予告編も完成して、既にシネスイッチ銀座では上映を開始、新宿武蔵野館でも今週末から上映が始まる予定です。邦題決定にもちょっと時間がかかりましたが、今回は予告編もディレクター氏にちょっと悩んで頂きました。理髪店でのお客さんとの日々のエピソード、母アールイさんを巡る子供たちのやり取り、常連さんの出張散髪に出かけるロードムービー的なパートを、バランス良く、説明過多にならずに、でも「何かありそう」と思って頂けるよう繋げるのが難しかったようです。幸い、ネット解禁後の評判が「泣けそう」「観たい!」と好評なので、悩んだ甲斐があった感じです。ぜひご覧になってみて下さい。尚、ディレクター氏がこだわったポイントは“猫”。そちらも要チェックです。

さて、今週のザジ通信。実はイタリアからお送りしております。イタリア映画の新作ショウケース、イタリアン・スクリーニングに参加するため、先ほどトリエステのホテルにチェックインしたところなのでした。過去1年のイタリア映画の購入実績を鑑みて、チネチッタが各国のバイヤー数社ずつを招待してくれるこのイベント。『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』を買い付けているものの、権利元はイギリスの制作会社なので、さすがに今年は招待は無いかなぁ~、と思っていましたが、権利を保有している『家族の肖像』、『8 1/2』の延長契約を交わしたりしているので、そちらの実績も考慮してくれたようです。ヴィスコンティ、フェリーニに感謝です。

機内で書いたこの日記を、ホテルのWi-Fiに繋いでアップしてから就寝。明朝から3日間、イタリア映画責めです。LINE UPに目を通すと、今年はあの監督や、この監督の新作も入っていて楽しみ!…と言いつつ、クローズドな催しなので、何を観るか、観たかは、具体的に書けないのが申し訳ないのですが、来週の当通信は、書ける範囲でイタリアン・スクリーニング報告をお送りしようと思います。どうぞお楽しみに!

texte de daisuke SHIMURA

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