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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【4月14日㈬~4月20日㈫】

東京にも再び緊急事態宣言が発令される流れになって来て、落ち着かない日が続いています。映画館でクラスターが発生した前例はないので、これから来るゴールデンウィークも含め、時短のみ、もしくは座席を限定する、という予防対策を併せて行うにとどめて、上映自体は続けてくれたら…と願っています…。

そんな不安定な状況下でも、公開に向けての仕込み作業は予定通り行われています。前々回の通信で触れたとおり、先週末には、クラシック作品の再映決定の情報が解禁されました。トップ画像のとおり『ファンタスティック・プラネット』です。作品の大ファンである渋谷HUMAXシネマのスタッフの方のラブ・コールを受け、昨年12月急きょ1週間限定の上映が実現した本作ですが、SNSでも盛り上がりを見せ、初めてご覧になる若いお客様も多数ご来場下さり、満席回も出る予想以上の大盛況。「今度はもうちょっと時間をかけて宣伝して、2週間やりましょう!」と再度お話を頂き、めでたく再映の運びとなったのでした。チラシ、予告も新たに作成。チラシにはおなじみのみうらじゅん氏、予告には、『夜明け告げるルーのうた』他の湯浅政明監督から、素敵なコメントも頂きました。ぜひチェックしてください!

「ファンタスティック・プラネット」キーアート2021

この機会に、ザジフィルムズと『ファンタスティック・プラネット』の関わりを振り返ってみようと思います。映画自体は1973年の製作ですが、日本で公開されたのは1985年。本作を日本に初めて紹介した配給会社は、ケーブルホーグさん。ザジが本作を買い付けたのは1995年。実はこの作品、その年にフランスのARGOS FILMSと締結したクラシック作品のパッケージ・ディールの中の一本なのでした。

ARGOS FILMSは、ポーランド出身の伝説的映画プロデューサー、アナトール・ドーマン氏の会社。そのパッケージ・ディールの中身は『ベルリン・天使の詩』、『パリ、テキサス』、『ブリキの太鼓』、『男性・女性』、『彼女について私が知っている二、三の事柄』、『二十四時間の情事』、『夜と霧』、『ラ・ジュテ』、『少女ムシェット』、『バルタザール、どこへ行く』等々、錚々たるLINE UP。当時、設立まだ6年目だったザジフィルムズにとっては、大きな挑戦でした。

外国映画の権利の契約期間は、最近は配信など権利の多様化に伴って、様々になってきたのかもしれませんが、基本的には短くて5年、長くて7年です。なので長く扱い続けたい場合は、契約期間が終了になる前に、更新せねばなりません。権利期間中に、利益を出すことが出来なかった作品は更新をあきらめざるを得ませんが、新たに別の会社が可能性を見出して買い付けることもあります。また、人気のある作品は、金額が高騰して更新したくても、別の会社がより大きな金額を提示し、その結果権利が移ってしまうこともあります。そんな諸々の事情もあり、お察しのとおり、上記の作品群、今は別の会社が権利を持っているものも多いです。

そんな弱肉強食な(笑)買い付けの世界で、このARGOS パッケージ中、ザジが1995年から一度も手放さず、権利を更新し続けているのが『ファンタスティック・プラネット』です。こんなに長いお付き合いになるとは、最初の契約時、想像もしていませんでした。もうかれこれ4回は契約更新しているでしょうか(何年か間が空いて再契約、というパターンの作品は『二十四時間の情事』、『ラ・ジュテ』など何本かありますが)。

最初にザジで劇場公開したのは、2000年。同じルネ・ラルー監督の『時の支配者』や、ヤン・シュヴァンクマイエル監督『アリス』などと併せ、“ファンタスティック・アニメコレクション”と銘打っての特集上映でした。その後も、劇場からお声がかかれば出す、という感じでやってきましたが、こんなに注目度が上がったのは26年の間で初めて。HUMAX渋谷で限定販売中のTシャツ付特別鑑賞券も、順調に売り上げ枚数を伸ばしている、とのご報告を頂いております。なぜ今、『ファンタスティック・プラネット』なのか?については、今後じっくり検証してみたいと思っています。

そうそう。間もなくリバイバル公開される大島渚監督の『愛のコリーダ』のフランス側のプロデューサーも、同じくアナトール・ドーマン氏であることをお伝えしておきましょう。つくづく凄いプロデューサーだったのだなぁ、と今更ながら驚いてしまいます。

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※1994年、ARGOS FILMS事務所にて。この4年後にドーマン氏は亡くなりました。私は当時31歳。フランス語も出来ないのに、よくもまあこんな大きな契約を!と、思い出すだけで手に汗を握ってしまいます。若さゆえですね。

さて。最後に。映画とは全く関連がないので、冒頭には書きませんでしたが、この週の個人的に一番大きなトピックスは、感染者激増中ながら、様々な対策を講じつつ東京国際フォーラムで無事開催された〈ザ・ヒット・ソング・メーカー 筒美京平の世界 in コンサート〉を観に行けたこと。これについて書き始めたら、延々と私の“筒美京平愛”を綴ることになってしまい、当通信の趣旨と離れてしまうので触れませんでしたが、一言だけ。空前絶後の素晴らしさでした!あ、もう一言。私が小学校3年の時に初めて好きになったアイドル!麻丘めぐみさんのデビュー曲「芽ばえ」のイントロが流れ、ご本人がステージに現れた瞬間、私の涙腺の堤防が決壊したことだけは記録として残しておきましょう(笑)。WOWOWでも放送される予定だそうなので、ご覧になれる方はぜひ!WOWOWさん、ノーカットで頼みます!2曲歌った歌手、編集して1曲のみ(「わたしの彼は左きき」のみオンエア)、とか許しません!

                      texte de Daisuke SHIMURA







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