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グリム童話ATM(毎週ショートショートnote参加)

道端に干からびて死にそうな蛙がいる。

げっ気持ちわる

避けて通ろうとすると、「助けてください。ATMに連れて行ってください」と言われた。

蛙が喋ったことより、蛙の口からATMと言う単語が出たことに驚き、つい足を止めてしまったのだから仕方ない。食べかけのチョココロネを無理やり口に押し込み、空袋に乗せてATMに運ぶことになった。(素手は無理だった)

蛙曰く、全てのATMは童話の世界と繋がっている。こちらの友に会いに来たが、思いの外日差しが強く死にかけていたらしい。

「実は私、あの有名な蛙なのです」

どの蛙なのか今ひとつぴんとこない。

駅前のATMに、指示通りやたら長い暗証番号を打ち込むと、想像もしなかった場所がガバっと開く。そっと蛙をのせると、「ありがとうございます。このご恩はかなら」のあたりでバタンと閉じた。

待てども一向に恩返しに来ないので、図書館であの童話を開いてみると、絵本の中の蛙はチョココロネを咥えて手を振っていた。

(411字)


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