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草食系男子に教えられたこと(毎週ショートショートnote参加)

ピンポンがなってドアを開けるとレジ袋をさげたタケル君が立っていた。

「今日はステーキね」

タケル君が鼻唄を歌いながら肉をジュウジュウ焼くと家中にニンニク醤油の匂いが漂った。

「トウモロコシの粒は必ず偶数なんだよ」

付け合わせのバターコーンを掬おうと苦戦している私を見てタケル君が教えてくれた。

こんな風にどこかで聞いたことがあるような、無いような豆知識をタケル君はいつも教えてくれる。

「タケル君は博識だね」

私が褒めるとニンマリ笑って血の滴るサーロインに齧り付いた。

ところでタケル君、ベジタリアンじゃなかった?という言葉を飲み込んで、私の残した脂身も食べるタケル君を見ていた。

目が覚めるともう昼過ぎで、ベランダに出るとタケル君の姿が見えた。

数週間前、団地にやってきたタケル君は、今日も杭に繋がれたまま雑草をモシャモシャ食べている。時々ポロポロ糞を零し、めぇーとか鳴きながら。

私はボリボリ尻を掻いて布団に戻り、もう一度寝ることにした。

(410字)

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