樵のジレンマについて考えてみた
今回のお話
樵のジレンマという寓話があり、長期的に投資すべき対象を放置し、現状のままリソースを全投入するという話である。
目の前の斧が錆びていたり、刃こぼれしているにも関わらず、ただ忙殺されて斧を振り続けるというのは、そんなの普通気づくでしょと思いがちですが、案外自分たちも嵌りがちな罠なのであるという話です。
なぜ研がないのか
樵のジレンマを仕事に置き換えてみると、以下のようになります。
斧を振る=何らかの業務を何らかの手段で行う
斧が錆びるor刃こぼれする=現状の手段に何らかの非効率があり改善の余地がある
斧を研ぐ=業務遂行のための手段あるいは業務フロー自体の改善
斧を研ぐということは、単純に斧を研ぐこともあれば、より効率性の高いチェーンソーに取り換えるということも含まれるのです。
つまり、斧というのは、個人のスキルであり、業務フローまたは組織の体制なども含まれた概念であるとも言えます。
さて、寓話を読むと誰しもが、「斧研いだらいいのではないか」とツッコミを入れるでしょうが、現実にはそうなっていない場合もあるのは、一体なぜでしょうか。
以下の4つの理由があるのではないかと考えています。
1.研ぐ時間がない
2.研ぐ必要性を感じていない
3.研ぐ方法を知らない
4.研ぐことを諦めている
1.研ぐ時間がない
研ぐ時間がない=研ぐことへの価値あるいは優先順位がものすごく低いということです。
今のやり方を変えることによる短期的な生産性ダウンをものすごく高いコストだと捉えてしまうことにあります。
厳しい言い方をすると、長期的な効率性を比較検討や考慮せず至極短期的な視点に陥ってしまっているということになります。
これは、個人のスキルや、チームでの働き方どちらにも当てはめることができます。そしてこれの悲しい結末は、斧を研ぐことを提案する優秀な人から辞めていくことです。
これの問題点は、個人としては、市場価値が相対的に低くなってしまうこと。チームとしては、優秀じゃない人が残り続けることです。ジリ貧ってやつです。
解決策としては、以下があります。
個人なら、
1.スキルや職種のロードマップを見る
2.毎日・毎月なんらかの取り組みを習慣化する
3.一度外を見てみる
チームなら、
1.振り返りを行う。改善策のアクション決めまでセットで。
2.外と比較する
3.ちょっと研いで上長に見せてみる
どちらにしても現状を知ること、相対比較すること、取り組んでみることです。
「頭では分かっているが」という状態が、長年続いてはいませんか。
わかるとできるに、雲泥の差がありますが、誰しも手を動かして始めてみないとできないのです。人より時間がかかるとしても人より時間を投下すればよいはずです。
ITエンジニアなら誰しも聞いたことがあるかもしれませんが、Write Code Every Dayです。継続が力なりということです。こればかりは優先順位を最高にして取り組むべきです。
2.研ぐ必要性を感じていない
こちらはやっかいです。チームで働いていると現場やメンバーは必要性を感じているが、上司やトップは全く必要性を感じていないというのが、往々にしてあります。
さて、必要性を感じさせる方法にいくつかありますが、アンチパターンは失敗で気づかせることかなと思います。誰もが疲弊するケースが多いためです。
これもまた感じさせる方法としては、外を知り、着手可能と思わせることです。
前節でも書いた通り、外を知ることに重きを置いています。
なぜならば、社内では競合になりにくいためです。外を知る方法には、記事を見る、イベントに参加するなど様々ありますが、できるだけ1次情報に近い方が良いです。
例えば、面談をしてみる、イベントに参加する、座談会に出てみるなどです。記事やスライドなど外部に情報をオープンにする企業が増えて、外の取り組みを知る機会がものすごく増えましたし、そういう流れになっていますが、それだと表層的なものしか掬い取れなかったりするため、なるべく実際の人ベースでの情報を取るようにすると良いです。
自分(たち)にどれだけできていないことがあり、できることがあり、という自分の中で相対比較ができ、自分の位置というのがなんとなく理解することができます。
そのなんとなくの理解=ギャップを知ることで自分の中で研ぐ必要性というのを感じ始めるのです。
3.研ぐ方法を知らない
樵のジレンマに陥る原因を考えてみると、多忙というのは要素の一つとしてあるかと思いますが、一番の要因は、リソースがひっ迫しても現状で乗り切ってしまうことだと思います。
現状のスキルや体制で上手く行っているため、スキルやフローの改善に取り組まないというのはあるあるです。
それ故に、どこを改善する必要がわからない、あるいは認識がないため、研ぐ方法=スキルやフローの改善に関する情報収集・インプットがおろそかになります。
その結果、どう改善すれば良いのかわからないという状態が続き、改善の優先度が低下したままとなります。
この解決方法の一つは、2.と同じく外部を知ることがあります。
外部を知ることで自分(たち)との差分がわかります。その差分を知ることができれば、差分を埋めるために何をすればいいのかということを検討することが可能となります。
そこまで行くことができれば、差分を要素分解して、これのためにはあれが必要というようにスモールに情報収集をすることができるようになります。
4.研ぐことを諦めている
改善する時間がないというのが、樵のジレンマに陥るあるあるで最も多いのではないでしょうか。
目先のことを考えると、確かに現状のままで問題ないかもしれませんが、ビジネスやIT技術など仕事に関すること・ものは、とても変遷が激しいです。
何が言いたいかというと、変化しないものは、相対的に価値が下がっていくということです。これは、個人のスキルもしかり、組織もしかりかと思います。
自身(あるいは組織)の強み・弱みというものは、相対的なものです。
あくまで外と比べた上で強い・弱いというのが、定義されるはずです。
だとすると、変化を受け入れて取り組んでいかなければ、価値が目減りしていくことは想像しやすいことかと思います。
もちろん、価値が目減りしていくことに対して強迫観念的にとらえる必要はないですが、認識しておくことは重要です。
こちらの解決策としては、具体性に欠けますが、現状維持はゆるやかに価値損失につながるという認識を持つことかと思います。
最後に
色々と樵のジレンマに関して、思うことを書いていきましたが、樵のジレンマ状態が、組織で定着してしまうことの一番のデメリットは、樵のジレンマから脱出した人が抜けていくことです。
個人にフォーカスされた時代になって、より自分自身でキャリアやスキル形成にアクティブになったことで、それに対して硬直性のある組織にいるメリットは、そういった観点では一切ないはずです。
改めて個人の樵のジレンマの改善策の第一歩を考えてみると、それは変えられることを変えるまで取り組むことかと思います。
複数個の改善点に対して、取り組むと時間がかかりすぎる、かつ、中途半端な結果になるため、ひとつひとつ取り組んでいく必要があります。
いつしか、「祈る時間」を増やすためにもまずは一つ取り組んでみるのはいかがでしょうか。自戒を込めて。
それでは、また。
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