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絶対に負けられない意地と意地 ルヴァンカップ2019決勝戦

ある日、仕事から帰宅した私は酷く疲れていたんだ。
忘れない金曜日の夜。
仕事で結果が出せなくて、本当にふがいなくて、情けなくて、そしてSHISHAMOという3ピースバンドの『明日も』という曲と出会った。
歌詞が本当に自分に重なってくるところがあって泣きながら聴いた。
あの日から、よく聴く好きな曲の1つだ。

木曜日の夜に弟から久しぶりの連絡が来た。
ルヴァンカップの決勝戦のチケットがあると。

今年のルヴァンカップの決勝戦は川崎フロンターレとコンサドーレ札幌の対戦だった。

川崎フロンターレは過去に4回、決勝戦に進んだが4回の試合ともに無得点。
4回とも準優勝と涙をのんでいる。シルバーコレクターと揶揄させてしまう事もあった。

コンサドーレ札幌は広島や浦和で指揮をとったペトロヴィッチを監督へ招聘。着実にチーム力をつけて、クラブ史上初となるトーナメント決勝戦まで進んだ。

両チームともに勝てば『ルヴァンカップ初優勝』
どちらにも【絶対に負けられない理由があった】

決勝の舞台は埼玉スタジアム2002
最寄り駅の浦和美園駅に着くと川崎フロンターレとコンサドーレ札幌のユニフォームを来たサポーターで埋め尽くされていた。
コンサドーレ札幌のサポーターは札幌から来ている人もいた。

試合前にサポーターが贔屓のチームに声援を贈る。
両チームともに決勝戦の舞台にふさわしい気合いのこもった精一杯の声援だ。
すでに私は感動して泣きそうだった。好ゲームになる予感がした。

絶対に優勝したい両チーム、先制点はコンサドーレ札幌がとった。開始10分。赤のユニフォームが大きく躍動する。初優勝に向けて幸先の良いゴールだ。
対して川崎フロンターレ側には過去4回の苦い思い出が甦る。前半は徐々に川崎フロンターレが押し込みチャンスを何度も作るが1点が遠い。
反対に素早いカウンターで危ないシーンも多々あった。

最初のドラマは前半ロスタイムだった。
川崎フロンターレがロスタイム中にコーナーキックのチャンスを作り、そして同点に追い付いた。
過去4回とも無得点となっていた呪縛から解放された瞬間だった。

試合は後半に入り前半同様に前半ロスタイムのゴールで流れを作った川崎フロンターレが徐々に押し込みはじめてチャンスを多く作るがゴールネットを揺らせない。

後半の時計の針が進むが両チームともにチャンスはあるがゴールまでに至らない。そして88分。後半残り2分に次のドラマが生まれる。
途中出場していた川崎フロンターレの小林選手が素晴らしい胸トラップから川崎フロンターレサポーターの待つゴールへ足を振り抜きゴールを奪った。
初タイトルを狙うコンサドーレ札幌側は大きな悲鳴に変わる。
悲願の優勝を狙う川崎フロンターレ側は優勝まで2分とロスタイム分だけ。
コンサドーレ札幌の選手に明確な焦りがあり、危険なファールもあった。
素晴らしいドラマがフィナーレを迎えようとしている。
会場にいたお互いのサポーターも恐らく感じていたはずだ。

しかし、だけど、負けたくない、諦められない。
後半ロスタイムだった。前半ロスタイムに川崎フロンターレが同点に追い付いたようなシーンでコンサドーレ札幌がコーナーキックのチャンスを得た。

主審は時計を確認している。もう、ラスト1プレーだろう。
コンサドーレ札幌のゴールキーパーもゴール前に上がり覚悟を決めた。
そして、ドラマはまた起こった。コンサドーレ札幌がラスト1プレーで同点に追い付いたのだ。

両チームの絶対に負けられない気持ちが、ロスタイムで同点に追い付くドラマを生んだ。

そして試合は延長戦に入る。流れは、まさに土壇場で追い付いたコンサドーレ札幌に傾きつつあった。
そして川崎フロンターレが守るゴール前で、守備側のファールがあり、なんとこれが一発退場のレッドカード。

川崎フロンターレは1人少ない10人になってしまった。
でも、まだ同点だ。
このゴール前のフリーキックを止めれば、まだチャンスはあるはず。。。
ゴール前には選手が8人並ぶ大きな人の壁ができていた。
コンサドーレ札幌のフリーキック。キッカー福森選手の蹴ったボールが綺麗にゴールネットを揺らした。
まさに芸術的なファインゴールだった。

川崎フロンターレは相手チームよりも1人少ない上に勝ち越し点を献上してしまう。

しかし、選手は諦めなかった。1人少ない川崎フロンターレは全員で守るコンサドーレ札幌のゴールに迫っていく、攻撃の人数をかける分、守備のマークが難しくコンサドーレ札幌の素早いカウンターに何度も苦しむ場面もあったが、1人少なくなったコートをとにかく選手がコートをよく走って防いだ。試合は90分+ロスタイム+延長戦分もある。選手はとにかく疲労困憊だったはずだ。川崎フロンターレはそれでも、コンサドーレ札幌も両チームともに優勝を信じて、優勝に向かってよく走っていた。

延長後半。開始前に川崎フロンターレは円陣を組んでいた。何を話していたかは想像に難しくない。

絶対に負けられない気持ち。川崎フロンターレの執念は三度の出来すぎたドラマを作った。延長後半にまた小林選手が同点に追い付くゴールを決めたのだ。

そして絶対に負けられない、負けたくない両チームの素晴らしい試合はPK戦で決着する事になった。

キッカーがお互いに3人目まで全員成功で3対3の同点で両チームともに譲らない。
4人目のキッカー、川崎フロンターレの車屋選手の蹴ったボールはゴールの枠を捕らえなかった。
思わずショックのあまりに呆然と立ち尽くす選手へ懸命に声をかけるチームメイト。
そしてコンサドーレ札幌の4人目、川崎フロンターレの5人目もゴールが決まり、
コンサドーレ札幌の5人目のキッカーだ。

このゴールが決まったら初タイトル。初優勝。

私の気持ちは川崎フロンターレのゴールキーパー、新井選手と完全にリンクして感情移入していた。
『ゴールキーパーはサッカーでヒーローになれるポジションなんだ』
『自分がゴールを止めて試合に勝つ。最高じゃないか。』
『キーパーはとにかく気持ちが大事だ。どんな時でもチームを鼓舞して一番後ろから声を大きく出していけ。』
いつかのセリフが頭の中で思い出した。
そして、川崎フロンターレのゴールキーパー新井選手がコンサドーレ札幌の5人目のシュートを止めた。

何度も見た。この両チームの試合では『もうこれで決まった』という常識的な考えが通用しない。

PK戦ですら6人目の『延長戦』に突入した。
そしていよいよこの感動的な記録にも記憶にも残り続けるであろう試合にピリオドがつく時がきた。
川崎フロンターレは6人目も決めて迎えた
コンサドーレ札幌の6人目、蹴る瞬間にキッカーに迷いが大きく生じた。助走を減速してしまって放ったシュートを新井選手は冷静によんでいた。
がっちりと抱えてキャッチ。
ゴールキーパーがヒーローになった瞬間だった。

なんという素晴らしい試合だろう。
何度も何度もどちらのチームもピンチに追い込まれたが、絶対に諦めない気持ちが素晴らしいドラマを生んだ。

表彰式で両チームが称えあい握手をする姿。
サッカーを観戦していた他チームのサポーター。
多くの人が観戦したこの試合の感想をコメントしているが本当に『感動』な試合だった。


ダメだ。もうダメだ。立ち上がれない。
そんな自分変えたくて今日も行く。
良い事ばかりじゃないからさ。痛くて泣きたい事もある。
誰よりも早く立ち上がるヒーローに会いたくて。
痛いけど走った。苦しいけど走った。
報われるかなんて分からないけど。
とりあえずまだ僕は折れない。
ヒーローに自分重ねて。明日も。

大好きな曲を聴いたらまた今日の感動的なドラマの試合をきっと思い出すだろう。

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