自由と平等のトレードオフ

「君には平等を求める人の気持ちは分からないだろうなぁ」

と大学時代に先輩から揶揄されたことがあった。

たしかに思い返してみれば、当時は、お金や時間や体力、人間関係、その他(今とは違って?)何もかもに恵まれていて、平等の必要性を知らなかった。むしろ不必要とさえ思っていた。

自由と平等はトレードオフ(二律背反)だ。

片方が成り立てば、もう片方は成り立たない。

人は自由を求めているのか、それとも平等を求めているのか。

あるいは、その両方なのか。

時が経ち、ロールズの『正義論』に出合うことによってその答えがすとんと腹落ちした。

20世紀を代表するアメリカの政治哲学者ジョン・ロールズは、その著書において「2つの正義原理」を提唱している。

すなわち、正義とは

(1)すべての人が平等な自由の権利を有すること。

(2)最も不遇の人の利益が最大化され、経済的機会が均等であること。

であるという。(※翻訳・解釈筆者)

人は自由と平等を求める。しかし、人がそれらを求める限り、システムとして不平等が存在する。

真の自由と平等とは何か。

正義論が教えてくれるのは

その不平等の中において、恵まれている人たちは恵まれていない人たちの利益が最大化するように行動し、すべての人の自己実現の機会を平等にしていけばよい、ということである。

恵まれている人は、社会に助けられての結果なのだから社会に借りがある。

だから社会的弱者に分配することは「正義」なのだ。

では、その正義を実現するためにはどうすればいいのか?

ロールズが後年に発表した論文がその道を示唆してくれている。

そのタイトルは、他でもなく

『原爆投下はなぜ正義ではないのか?: ヒロシマから50年』(『Reflections on Hiroshima: 50 Years a fter Hiroshima』)であった。

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