現役ゲームクリエイターから見たら、ディライトワークス(FGO運営)は無能なのか? 開発編

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追記:2021年5月2日
なーんでこんな場末の記事に辿りついたのか見当も付かんのですが、どうにも変な人たちが湧き始めたので、コメント欄を閉鎖します。
あと言葉足らずの部分の補足とか一部過激な表現も訂正いたしました。 
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 この記事はとある友人Aに向けたものである。
 先日彼とモンスターをハンティングしながらの雑談の中で「ゲームクリエイターとして見たらディライトワークスってどうなの?」と聞かれたからである。

 実は私は大のFateファン、というかTYPE-MOONファンである。
 いわゆる「型月厨」というヤツで、既存のTYPE-MOON作品は媒体問わず網羅しているし、FGOもサービス当初から現在までプレイしている。
 仕事が比叡山の如く燃え上がった時以外、全てのイベントをこなしているし、配布サーヴァントだって全部持っている(自慢)。課金額も100万は越えているのではなかろうか。

 その運営であるディライトワークス(以下、DW)の話題は、FGOをプレイしていると色々入ってくる。友人Aも私と同程度のFGOプレイヤーであり、私以上に愛情深い型月ファンであるため、DWに対する感情は色々複雑なものを持っているので、このような質問が出たのであろう。

 ゲーム業界に身を置く人間としては、よう知らんのにとやかく言うのはアレなので、その場では「ちょっと調べてみるよ」と言ってみたが、調べるほどに色々な意味で面白い会社だったので、記事にしてみた。

 まずは結論から言ってしまうと、私が見るに、
「FGO制作チームだけは異常に優秀な人間が集まった変な会社」
 である。

 さて、まずは「ディライトワークス」という会社のパブリックイメージであるが、大抵評価が低い。特に友人Aもそう認識していたが、多く共有されているイメージは「Fateのブランドだけで売れているのに、FGOを自分の手柄と思ってイキってる連中」であろうか。

 これは先日の鳴り物入りで始まった「サクラ革命」の早期のサービス終了の件や、遡れば音楽ゲーム「バンドやろうぜ!」や死産した「ミコノート」、意味ありげなPVだけ公開されて数年も音沙汰が無いタイトル、Aimingと提携したと思ったら何も出さずに提携解消したり、ゴルフ事業とか始めてみたり、とにかく新規タイトルが出ない・売れない・つまらないのナイナイ尽くしの鳴かず飛ばずであるのが起因しているだろう。

 事実として「新規案件を始めては失敗ばかりしている」ので、この世間的評価もさもあらんというところだ。実は私自身もその点に関しては、これだけの過去事例がある以上、会社全体の評価としては素直にアカン会社だと思う。

 だが、「だからFGO開発としても無能」とイコールになるかと言われると、友人Aや世間の見解はゲームクリエイター視点でははっきりと「NO」と言える。というか、FGOというタイトルはこのDWのチームでないと成立し得ないとすら思っている。

 今回は、その根拠を記事のメインにしていこうと思う。
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 さて、まずは下記の記事をご参照いただきたい。元ソシャゲ運営会社の所属で、現在はフリーのゲームクリエイター、ライターである「かえるD」氏によるFGOの分析記事だ。

なぜ『FGO』はここまで大ヒットになったのか? ──『FGO』がソーシャルゲーム界の”特異点”となった3つの根拠

 非常に冷静かつ鋭い分析記事であり(何様?)、読み物として秀逸であることは確かだが、今回注目していただきたいのは、かえるD氏が余談としてサラッと書いてある部分である。

 実はこの部分に関して、私も全く同じ見解を持っている。
 この部分を詳しく解説しようとすると記事が一つ書けてしまうので、あえてかえるD氏も深くは書かなかったのだろう。
 だが、末尾にある一文は現場の人間からするとても感じ入った。

 つまり何が言いたいのかといえば、『FGO』は簡単には真似できない、ということである。
 元ソーシャルゲーム開発者としては、ほんとによくやりますなあ……と思うばかりだ。

 かえるD氏の感想はおそらく現場の人間でないと意味の深さを実感できないと思うので、友人Aに向けたDW関連記事第1回では「FGOチームの異常な開発環境」に関して解説したいと思う。

・前説 ゲームの開発ってつまり何?

 さて、色々語る前に前説として、ゲームというコンテンツの構造とそれを基にした開発現場の現状を提示しておきたいと思う。
 前の記事でも書いたが、ゲームは「メカニクス」と「テーマ」という二大要素で構成されている。つまり、

 メカニクス:プログラム、データ、仕様などのシステム
 テーマ  :キャラ、ストーリー、サウンドなどの素材


   もう少し身近な例で、コンテンツとしてのプロ野球に例えると、アウト3つで交替とか、三振で1アウトといったルールが「メカニクス」。
 バットやグローブといったプレイに必要な道具の見た目などが「テーマ」。
 そして、当然選手が「プレイヤー」だ。
 プロ野球という興行を取り仕切る日本野球機構が、さしずめ「運営会社」と言ったところだろうか。

 つまる所ゲームという媒体は、メカニクスという土台の上にテーマがあり、メカニクスが主、テーマは従となるわけである。そのため、当然、ゲームの開発現場は基本的に「メカニクス至上主義」である。

 「投手が打者に7cmくらいのボールを投げる」というルールが無ければバットの長さや太さは決められない。ところが、FGOというゲームはこの構造を逆転させた。メカニクスよりも、奈須きのこ氏のシナリオと武内崇氏のアートといった「テーマ」を開発のメインに据えたのである。

 この結果は、かえるD氏の記事にある通りで、FGOは圧倒的な「テーマ」の力で業界を席巻し、大ヒット作品となった。

 ユーザーの多くはFGOにゲームルールの巧緻さなど求めておらず、奈須氏のシナリオや武内氏のイラストといった『Fateワールド』の広がりを求めているのだから、それを形にするサービスにする、というとんでもない割り切りである。
 しかもこの方向転換が行われたのはサービス開始後である。
 開発期間中はあくまでベーシックな開発体制だったのだ。

 書籍「TYPE-MOONの軌跡(坂上秋成著、星海社)」によると、この方向展開の舵取りをしたのが、DWの塩川洋介氏である。
 数々の問題発言で炎上を繰り返し、やれ「塩害」だの「外圧」だの「お前もクソダサいバスターTシャツ着ろ」と散々イジられている彼だが、FGOの本質はメカニクスではなくテーマである、という点を見抜いた慧眼は、クリエイターの目から見ても素晴らしいと思う。

 でもまあクリエイターとしての手腕と性格は別物なので、彼自身の言動に問題があるとした友人Aには「仰る通り」としか言えない。
 そして、この方向転換でどのような血を見る現場になったのか、という惨状も開発に身を置く人間としては察して余りある。
 事項ではこの点に触れていく。

・「テーマ型開発環境」というタブー

 メカニクスとテーマの主従を入れ替える、という手法でFGOはヒットしたと前項で述べたが、ことゲーム開発現場では普通この「テーマ型開発環境」はタブーになっている。

 何故かというと、あまりにも失敗する可能性が高いからだ。

 いくら開発現場がテーマ型になり、その開発環境を整えたとしても、作るものがゲームである以上「メカニクス > テーマ」という構造は何も変わらない。しかし、主従を入れ替える以上、開発現場のフローは逆転する。

 つまりシナリオなりキャラデザインなりのテーマが上がって来なければ、そもそも開発自体が進まないのだ。そして当然ながら、多くのテーマは一個人のセンスや能力に依拠する製作物である。
 こう表現すれば、ゲーム開発の現場の人間でなくとも、普通のサラリーマンならばその危険性に気付いただろう。

 何十億というお金が掛かり、何百人ものスタッフが携わる開発計画の根幹を、ただの一個人のアウトプットが握ってしまうのである。

 この時点で勘の良い型月ファンは更にお気付きだろう。
 つまり「あの」奈須きのこ氏や武内崇氏が、ひとつのゲームプロジェクトのスケジュール全ての根幹になるということだ。

 ……地獄の入り口が早くも見えてきたと思うが、その片鱗は既に第1部6章の竹箒日記で見て取れる。

画像1

 この記事によると、奈須氏は締切を漏らした上で更には容量を増やしてDWに引き渡している。しかもシナリオ容量は平均的なラノベの1.5~2冊分であり、リリーススケジュールは動かしていない。

 テーマ型開発現場故に、ただでさえシナリオが遅延して制作が停滞して作業時間が削られた所に、想定した以上の作業量が降ってきたことになる。
 後で詳しく述べるが、私が経験した開発現場では、時間単位の作業量は想定の4倍以上になっていた。

 これもゲーム開発現場の人間でなくとも、普通のサラリーマンならば辛さは分かるであろうし、その環境にゾッとすると思う。

 クライアントと制作が同じ会社であり、クライアントの制作物が無くてはこちらは何も動けず、こく一刻と自分たちの作業時間が切り取られる中、ようやく届いた制作物は想定より量が多いのだ。しかもスケジュールは動かず、クオリティに問題があれば顧客に叩かれるのは、当然自分たちである。

 とはいえ、こういった理不尽は割とよくあるのが社会の辛いところだが、大抵は一過性のものなので、鉛を呑む気分でやり過ごすこともできようが、FGOは運営型のタイトルである。

 サービスが続く限り、DWのこの地獄のような開発環境は永遠に続くことになる。というか、2021年4月現在で既に5年8ヶ月も続けているのである。

・「テーマ型開発環境」の弊害

 ここまでの記述に関して、いやソレお前の想像だろう? と友人Aは思っているだろうが、実はこれは実体験である。私自身も似たような開発体制にいて、似たような苦い経験があるのだ。
 というか、原作者が関わるIPタイトルの開発に携わっていた者ならば、ゲーム開発と言わず、アニメやグッズ制作会社の人なんかも大抵はこの経験をしているのではなかろうか?

 私の例ではとある原作ありのゲーム開発現場では「原作尊重」の美辞麗句の下、テーマ型の開発環境が敷かれた。
 しかし、原作者のシナリオは遅れるわ、絵素材は上がって来ないわ、提出物に対する監修が遅いわで開発計画が遅滞し、世に出たのは間に合わせの低クオリティなサービスだったので、原作ファンにも愛想を尽かされてサービスは早々に終了してしまった。

 普通は「時間」と「クオリティ」は同じ天秤の両皿にあり、片方が重くなれば、片方の皿は軽くなるのである。これはゲーム業界に限らず、全てのビジネスシーンにおいても同様と言える真理であろう。

 ところが、DWの開発チームは先の第1部6章の竹箒日記で、奈須氏が感謝するほどの「クオリティ」を保ったままリリーススケジュールを漏らさずに辿り着いている。
「時間」を削られ、想定以上の作業を放り込まれたにも関わらず、である。

 これはもう開発現場の最前線にいるスタッフたちが、かえるD氏も考察しているようにシナリオの要素をとんでもないスピードでゲーム用に再構築し、身を削るような努力と執念じみた根性で作り上げているとしか思えない。

 実はこのような最前線スタッフの優秀さで成立していた開発現場も私は経験がある。
 さきの原作モノ開発現場が潰れた数年後、某国民的ロボットアニメ原作のソシャゲ開発にいたことがあるが、そこのスタッフたちは同じような「テーマ型開発環境」にいたにも関わらず、原作リスペクトの想いと各個人の能力でサービスを継続していた。

 クライアントにひっくり返された仕様を数時間で再構築するプランナー、それを形にするSEとプログラマー、3Dモデラーに2Dデザイナー、それらに合わせてバナーやインフォメーションを作り直す宣伝スタッフ。
 リリースまでの業務フロー上の各所に凄まじいとしか言いようがない優秀で熱い人材がおり、彼・彼女らの努力なくしてあのサービスは成立し得なかったと断言できる。

 テーマ型運営で潰れたゲームタイトルの経験があるだけに、この開発現場のスタッフたちの並々ならぬ実力と努力には脱帽し「こんな人たちがいるのかと」と目をみはった覚えがある。
 私が運営型タイトルに携わるようになって十余年になるが、彼・彼女らほど驚異的な働きぶりを見せた開発チームは他にはいない。

 そして、これこそが正に「テーマ型開発環境」の第二の問題である。
 開発の根幹となるものが原作クリエイター個人のアウトプットに依存するのと同じように、それをゲームという形に再構築する開発側のアウトプットもスタッフ個人の力量に依存してしまうのだ。
 つまりスタッフが相応に優秀でなけば、そもそもコンテンツが世に出ないのである。

 この現実を鑑みるに、おそらくFGO開発チームにも、開発の要所要所にこのような実力とFate愛を持つ人材が複数いるのではないだろうか? 

 当然ながら「ゲーム」という媒体はイラストなどの個人で完結するコンテンツではなく、プログラム、イラスト、シナリオ、バグチェック、宣伝など各要素ごとの制作担当チームが組み上げる総合エンターテインメントである。全部門でキーマンとなるスタッフがいないと成立し得ないのだ。

 FGOのバトルシーンにおいてはモーションは「俺たちのアンジョー」こと安生真氏、元デザインをバトル用キャラに描き下ろすのは「超有能水着礼装絵師」こと西藤浩輝氏、シャカP氏(ミス・クレーンの担当、おめでとうございます!)が担っているのはFGOファンならば周知の事実であるが、その他の部門は一体どんな人たちが作っているのか、いちゲームクリエイターとしては興味が尽きないところである。

 ちなみに、よく「DWは金あるなら人増やせ」という意見があるが、それが「テーマ型開発環境」において無意味であることは明白だろう。
開発のアウトプットさえ個人の「作品」と同意になってしまうため、中枢業務を行なえるような図抜けた人材が増えなくては意味が無いのだ。
  そしてそんな人材は容易に転がっていたりはしない。ましてや、5年以上もの蓄積のある運営タイトルに即時アジャストできる人間など存在しないのではないだろうか?

・FGO制作チームのヤバさ(良い意味で)

 さて、友人Aにはどれほど「テーマ型開発環境を運営型タイトルで行なう」ことが困難かということが、DW制作チームの底知れなさと併せて、おぼろげながらご理解いただけたら幸いである。
 その上で、DWの評判を改めて見てみよう。

「Fateのブランドだけで売れているのに、FGOを自分の手柄と思ってイキってる連中」

 これが開発者視点から見ると如何に的外れなのかが、よく分かると思う。
 テーマ型開発環境である以上、Fateのブランドに寄り掛かった作品であり、奈須氏や武内氏の作品があって初めて成立することは確かだ。Fateブランドが強固な地位を持っているのも事実であろう。
 だが、TYPE-MOONのコンテンツがいくら強かろうが、それはそもそも世に出ればこそである。

 おそらく「テーマ型開発環境」というのは、TYPE-MOONの制作スタイルに最も適した環境であろうが、それを運営型タイトルとして取り回そうとしたら、どれほどの血を見るかは前述の通り。またそもそもそれが形を成すには開発側にも優秀なスタッフが複数揃っていなくてはならない。
 こんな綱渡りを6年近く回せているのは、DWの開発チームの努力の賜物だし、間違いなく彼らの「手柄」である。

 何故かDWが色々な部門で外部協力会社を使ってることで「全部外注先の手柄じゃねーかwww」とキャッキャしてる人らがいるらしいが、今にち外部協力会社を使っていない開発現場など存在しない。
 そして、あえて偽悪的にいうと外部協力会社は「ツール」であって、それを使うのは発注元であるDWである。
 プロ野球選手に対して「あいつがヒット打てるのはバット、守備が良いはグローブ、走塁が速いのはスパイクのおかげで、本人は何もできないww」と笑う滑稽さしか感じない。良いツールを使えば誰もプロ野球選手になれるならば、全国の高校球児は皆プロになっていることだろう。

 話が逸れたがとにかく、いち古参のTYPE-MOONファンとしては、ぶっちゃけコンスタントに奈須氏の手掛けたシナリオが読める環境を作ってくれただけでも、DWのFGO開発チームには感謝の一念である。
 友人Aよ、よく思い出すんだ。FGO以前の奈須きのこ氏のシナリオに飢えていた俺たちを。 

 とはいえ、それで稼いだ金で出来たのが「サクラ革命」をはじめとした数々の失敗作であり、挙句の果てにはゴルフ事業とか始めているワケであるから、DWの上層部は全員FGO制作チームに土下座すべきだとは思う。

・終わりに

 さて、ここまでは「開発者視点」で物事を見てきたため、TYPE-MOONはさも極悪人のように見えるかもしれない。それも一面の事実であるが、決して忘れてはならないのは「テーマ型開発環境」が個人のアウトプットに依拠する以上、一個人のクリエイターにのしかかるプレッシャーは、果てしなく重いということである。
自分の作るシナリオが、イラストが、サウンドが、提出が遅れるごとに数十人から数百人の後工程にいる人間の時間を削り取っている、という事実が重くのしかかっているからである。

 過去多くのクリエイターは、このプレッシャーの前に一度は大きな挫折や停滞を余儀なくされた。メタルギアの小島監督やキングダムハーツの野村哲也氏といったゲーム業界の例に留まらず、エヴァの庵野監督、音楽シーンの有名ミュージシャンたちなど、その事例はあらゆるエンターテインメントの世界において枚挙に暇がないほどだ。

 奈須きのこ氏と武内崇氏が何を支えにしてFGOの運営を続けているのかは分からないが、いちゲームクリエイターとしては、それは開発会社、つまりはDWへの信頼に依拠するものであって欲しいと個人的には思う。

 TYPE-MOONはどんな無茶ぶりでも「DWならば形にしてくれる」と信じ、例え締め切りを延ばしてでもクオリティ優先のアウトプットに集中する。
 待たされる方のDWも「TYPE-MOONならば良い物を作ってくれるはずだ」と信じて待ち、血を吐くような努力の果てにそれを世に送り出し、ユーザーはそれを喜々として遊び、ファンコミュニティが盛り上がる。

 その様子を見て「お互い大変だったけど皆が喜んでくれてよかったね」とTYPE-MOONとDWが肩を叩き合う。そんな良い循環が生まれていることを願うばかりである。
ちなみに私は絶対にFGOの開発現場にはいきたくない。

・蛇足

 第1回にして私自身に苦い経験があるだけに、7000字越えの愚痴交じりのクソ記事を書いてしまったが、一応第2回も予定している。
 これは友人Aに挙げてもらったいくつかのDWやFGOの評判のうち、流石に実態からかけ離れているであろう事項について触れる内容になる。

 1つは、ゲーム開発における「パブリッシャー(企画会社)」と「ディベロッパー(開発会社)」について。具体的に言えば「ガチャはパブリッシャーのアニプレの権限で天井が付かないのはDWは関係ない。というか、多分ディベロッパーのDWにマネタイズの権限はそもそも無いと思われる」というお話。

 今ひとつは、SNSなどでよく売上のソースとして扱われるgame-iというサイトは、実際の売上を知っている立場からしたら、FGOを始めとした売上上位勢のコンテンツになると最低でも数十億円、酷い時は100億円以上金額がマイナス表記されている詐欺サイトであるというお話。

 もしボリューム不足ならガチで訴えられて社会的に死んだアンチ系まとめサイトの管理人たちの話とかも書くかもしれないが、これは流石に余談すぎるか。

 ただ、友人Aは把握している通り、私の家の風呂の配管が壊れたけど、緊急事態宣言で修理業者もすぐには来てくれないというトラブルが現在進行形で起きているので、予定は未定で。

・蛇足の蛇足

 これは完全に友人Aに向けての私信になるが、質問にあった「ナカイド」氏というyoutuberに関して。

 彼に対する一個人の評価であるが、主にメインチャンネルにあるネットの有象無象の情報をまとめ、分かりやすく発信している動画に関しては、エンターテインメントとして見る分には問題ないも思う。

 ただ、サブチャンネルにあるような彼の語る「ゲーム業界事情」だけは滑稽の極みなのでそれだけはネタとして見た方が良い。

 いくつか動画を拝見したが、ナカイド氏は開発現場が「メカニクス型」と「テーマ型」に分かれるという業界の基本知識さえ無いレベルであるし、おそらくゲーム開発現場に身を置いた経験も皆無なのでは無いだろうか? 
 あったとしても、責任ある立場で働いたことは一度も無いだろう。

 いずれにしても、ゲーム開発現場や業界事情を語れるほどの経験も知識も無い人間と断言できる。

 語り口や動画構成を見るに地頭は悪くないと思われるのだが、DWの内部告発者という一歩間違えなくても犯罪者のリークをもらえて嬉しくなっちゃったんだと思う。
 ファクトだけを伝えれば良いのに、そこに「感想」ならまだしも「見解」まで乗っけてしまい、ゲーム業界の事情通ぶっている節が垣間見えるのが非常にアレである。
 ちょうどDWの記事なので、その具体的な一例を出しておこう。

サクラ革命終了、Vtuberキャラはどうなった?

 この動画の7:20~くらいでナカイド氏は「公式HPに書いてあるDWの社員が100人減っている」ことを根拠に「FGOも開発の手が回っていないのでは?」と述べている。

 ナカイド氏がゲーム開発事情どころか、一般的なビジネス単語の理解すら怪しいと判明した下りである。

 確かにDWの公式HPには従業員数の数字が載っている。
 それが去年から100人以上減ったのも事実だ。
 だが、それは「社員数」ではない。「従業員数」である。

 つまり、正社員・契約社員・業務委託・個人エージェント・アルバイトなど業態・業務内容問わないDWに雇用されている「全従業員」が100人減ったのだ。従業員数=正社員の人数と思い込む時点で、もう色々アレである。

 とはいえ「100人減るのはただ事ではないのでは?」と思うかもしれないが、少なくともFGO開発にはなーんも影響が無いのではないか? と思われる。

 生放送でカノウヨシキ氏も語っていたが、オープンにされている求人情報によると、DWはコロナ対策に最も早くかつ徹底的に取り組んだ企業のひとつで、去年の春頃から開発環境が一部人員を除くリモートに移行している。

 つまりはあのドでかいオフィスビルの3フロア分の清掃員や警備員、イメージアップどころか、ユーザーに嫌われることしか書いてない勘違い記事にあった社内カフェや社内ゲームセンターの人員など、オフィス保全・福利厚生要員は大部分が契約終了しているであろう。
これは私の所属する会社も同じだし、コロナ禍によってリモートに移行したあらゆる業態の会社がこのような状態なので確かと思われる。

 またユーザーの心が離れた最大要因のひとつである、あの薄ら寒いノリのゴルフ事業も事実上潰れたようだ。
 私はゴルフ業界にはとんと詳しくないが、スポーツ事業というのはリアルイベントだけにとにかく人手を食うらしいので、そのプロジェクトで雇われていた外部人員も正社員以外は全員契約終了していると思われる。

 更に言えば「サクラ革命」の人員だ。
 ソシャゲ開発現場というのは、基本的に全体の7~8割は派遣や業務委託などの人員で構成されているのが常だ。タイトルが終わってしまうと、そこにいる人員は丸ごと余剰になってしまうので、必然的に恒常的に給料を払わなくてはならない正社員は少なくなるのである。

 私はこれまで数社のソシャゲ開発会社を渡り歩いているが、どの会社も人員構成だけは同じようなものだった。これは会社うんぬんではなく、ソシャゲというコンテンツそのものが「売れなければ即終了」という世界なので、おそらくDWも同じような人員構造だろうことを思われる。
 そのため、サクラ革命のサービス終了が内定した時点で、派遣社員などの外部人員の全てと契約終了を行なったことは想像に難くない。

 コロナ対策による全社規模でのリモート移行、コロナ被害で休止したスポーツ事業、サービス終了が決定していた大規模タイトル、とこれだけ要因が揃えば去年から「従業員が100人減った」というのは、別に何の不思議もない。複数のタイトル(プロジェクト)が同時期に終了したソシャゲ開発会社では、そう珍しくない事象である。

 勿論、これらは私個人の見解であり、ただの妄想だ。
 DWが正確な正社員数を開示していない以上、ナカイド氏の語ったように「100人減った従業員」の内実が「全て正社員」の可能性はある。が、「正社員以外の外部人員が減った」と考える方がより自然に思える気がするが如何か?

 というわけで、友人Aよ。
 ナカイド氏が語る「業界事情」とやらが、少なくともゲーム開発の現場の人間から見ると、経験も知識も欠いた人間がくっちゃべっているだけであることは分かってもらえただろうか。そんな人間の発する情報など何の価値も意味も無いので安心しよう。

 だが、勘違いしないでいただきたいのは、これはイコールでナカイド氏の動画に価値が無いことを示すわけではない。実際に起きた事実を述べているだけ動画は構成もよく練られており、語り口は痛快だ。
 どうやらナカイド氏はそういったファクト系の動画はメインチャンネル、ラジオ風に物事を語る動画はサブチャンネルと使い分けているようなので、メインだけ見れば問題ないと思う。


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