出生率、激減ペース突入
出生率は1.20まで低下
日本の少子化がさらに深刻化
してきた。
厚生労働省の
「人工動態統計月報年計(概数)」
によれば、2023年の日本人の
年間出生数は72万7277人となり、
過去最少を更新した。
合計特殊出生率(1人の女性が生涯に
出産する子どもの推計値)も過去最低
となる1.20にまで落ち込んだ。
ここまで落ち込むと、回復させる
ことは非常に難しい。
理由は、合計特殊出生率が長期
低迷すると子どもが少ないことが
当前となり、それに合わせて人々
の意識やライフスタイルが変化
していくからである。
そんな中、子どもが生まれづらい
社会環境がどんどん広がっている。
今回の結果で最も注目すべき事は、
出生数の対前年増減率が
「マイナス5.6%」
と大幅減になったことだ。
5%台の大幅下落となったのは
過去5年で3回目である。
日本の出生数はわずかな時期を
除いて減り続けて来たが、この
数年の下落は際立っている。
100万人を下回った16年と比べ
ると、23年は25.6%も少ない。
激減ペースに突入した印象である。
急落した足元の理由としては、若者
の暮らしが苦しくなっていることが
大きい。
賃上げが進んだとはいえ、それ以上
に物価が高騰し、国民負担率も高ま
っている。
さらに、実質賃金は下がり続けて
いる。
将来の不安も募っており、結婚を
しないという選択をする人や、
結婚しても欲しい子どもの数を
諦める人も少なくない。
それ以前の問題として、日本の出生
数が下げ止まらない最大の要因は
「母親不足」
にある。
過去の出生数減の影響で、出産期の
女性人口が減り続けているのである。
今更出産期の女性人口を増やしよう
は無く、政策ではどうすることも
できない構造的な問題ということだ。
婚姻数の下落に拍車をかける
経済動向と関係なく結婚しない人や
子どもを作らない人が増えている
こともある。
19年の婚姻件数は59万9007組
だったが、新型コロナウイルス禍
の影響で急落し回復しない。
23年は約2割少ない47万4717組に
減った。
国立社会保障・人口問題研究所の
「出生動向基本調査」(21年)
によれば、夫婦が理想とする子ど
もの数は2.25人で02年以降の長期
下落傾向に歯止めがかからない。
夫婦が最終的に持った子どもの数
を示す
「完結出生子ども数」
も1.90人と過去最少を更新した。
これら2つの要因が重なっている
所に、足元の経済不安が加わって
減少ペースが加速しているのである。
岸田文雄首相は
「若年人口が急減する2030年代に
入るまでが、少子化傾向を反転
できるかどうかのラストチャンス」
と繰り返しているが、
「母親不足」
の影響を考えれば、
「反転」
は現実的ではない。
現在の日本にできることといえば、
政策を総動員して減少スピードを
少しでも遅くするだけである。
ところが、政府の少子化対策は
相変わらず、生まれた子どもを
対象とした子育て支援が中心で
ある。
これも重要ではあるが、出生数の
減少ペースを遅くするには的外れ
である。
求められているのは
「子どもが生まれてこない状況」
の打開であり、具体的には結婚を
希望する人や欲しい子どもの数を
諦めている人への支援強化だ。
半世紀で人口半減ペース
出生数の対前年増減率
「マイナス5.6%」
というのは危機的な数字である。
今後もこれほどのペースで減り
続けるかどうかは分からないが、
現実となれば日本の人口は半世紀
(50年)ほどで半減する。
それは
「地方消滅」
レベルの話ではなくなるという
ことである。
もちろん、出生数の下落ベース
を下げることができたとしても、
「時間の問題」
であることには変わりない。
だが、社会の縮小が緩やかに
なれば、それだけ対策を講じ
る時間を稼げる。
問題は
「稼いだ時間」
を何に使うかだ。
もはや、現状の人口規模を維持
できると考えない方がよい。
一説に外国人の受け入れを拡大
すればよい、という考え方もあ
るが、焼石に水である。
理由は、日本人の減少数が大き
すぎて追いつかないからである。
それよりも縮小を前提とし、
人口が減っても大丈夫なよ
うに国家の作り替えを急ぐ
方が賢明である。
まずは、
徹底的なデジタル化、
機械化、
によって社会の機能破綻
を防ぐことである。
だが、それだけでは人手
不足をある程度解消でき
ても、内需の縮小という
人口減少の最大の課題は
残る。
それに打ち勝つには
「豊かな小国」
に学んで世界に勝てる産業
分野を短期間に作り上げる
しかない。
まさに根底からの社会の作り
替えである。
正しい少子化対策によって
どれだけ
「時間稼ぎ」
ができるのかが、日本の将来
を決める事となる。
<合計特殊出生率>
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