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詩・ショートショート

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2023年1月の記事一覧

オーロラ・ブックストア 【ショートショート】

『あーあ、なんか面白いことないかなぁ』 職場からの帰り道、電灯がポツポツと寂しくついた商店街を歩く。 入社して3年目。仕事にも職場にも慣れた。俺の業務は毎年同じことの繰り返しだから、今年は本当に流れ作業のように過ぎ去っていった。後輩も来たことがないからずっと下っ端だし、なんというか、張り合いというものが全く無い。 『これで、いい出会いがあったら話は別なんだけど、さ』と心の中で呟く。流れ作業のくせに毎日しっかり残業があるせいで、職場以外の人間と会う時間も無い。今日は定時2

「オーロラ・ブックストア」 あらすじ

新卒3年目の「俺」は、流れ作業のような日々に嫌気がさしていた。そんなある日の帰り道、見覚えのない書店を発見する。そこはちょっと変わっていて、専用の腕時計が自分の本の好みを学習し、手に取るだけで振動で知らせてくれるらしい。そしてゆくゆくは、触らずとも本が勝手に光るという。 職場の同僚に話を聞くと、光輝く「運命的な出会い」があったという。出会いに飢えていた俺は本気で通い出すが……。 本編↓↓

積み木 【詩】

いつも答えを探している 穴に合う積み木を探して そっとはめこんでみる ここは四角 ここは三角 ここは丸……と思いきや楕円で 直前で必死に引き伸ばしてみる いつも答えを探している 心の部屋に帰ってきて やれやれと一息つく ここにも四角 あっちに三角 だけど手元にあるのはIだけ どちらの”わたし”が正しいの いつも答えを探している はまらない積み木を抱えて

起き抜けのモーニング 【ショートショート】

目覚ましの電子音が、頭上で鳴り響いた。 布団から右手を出し、ノールックでボタンを押す。全く起きる気がないときの押しかた……というわけでもなく、スヌーズを発動させすぎて癖になってしまっただけだ。といっても、今はもう1度寝るんだけど。 布団を頭まですっぽりと被ろうと、左手もちょこんと出して掛け布団の端を引っ張り上げる。そのとき、自分の目を疑った。白いはずのカバーが、オレンジ色に見えたからである。 一度、目を閉じてみる。そして開いてみた。オレンジ色である。今度は天井をしばらく