創作してる人間は、映像研には手を出すな！を観ろ

　創作ってのは案外自由じゃないものだ。生業としてそれをする以上は締切という現実は否応なく迫ってくるし、チームやクライアントが絡めば自分の思惑だけでそれを行うことは不可能である。趣味で創作をするにも多かれ少なかれ何も制約なしで行うのは難しい。

　そんな葛藤を「映像研には手を出すな！」は鮮やかに描き切っている。

　舞台は人工島というちょっと変わった場所にある芝浜高校。アニメ制作を行う３人の女子高生にスポットを当てた作品だ。

　「女子高生になんかやらしとけば作品になるもんな知ってる知ってる」と設定だけ見るとなってしまうが、この作品はよくある「女子高生と○○」とは一線を画す熱量を感じさせる空気感で描かれている。

　主人公はこの浅草みどりだ。アニメの話になると饒舌になるけど、初対面の人間の前ではどもる、典型的ナードのようなキャラ設定だ。ちょっと特殊な点といえば、単純な絵が得意！みたいなキャラではなく、「アニメの設定や背景を描くのが好き」というやや踏み込んだ設定となっている。

そこと合わせて出てくるのが、水崎ツバメだ。カリスマモデルながら、本当はアニメーター志望で、こちらはキャラクターの動きを描くのが好きという設定で、主人公の浅草みどりと合わせてビシッと噛み合うようなキャラとなっている。

　この２人は、よく言えばベストマッチ、悪く言えばよくある組み合わせで、この２人のキャラだけでも「女子高生とアニメ制作」を組み合わせたそれこそバクマンみたいな作品は作れそうではあるが、この作品が「映像研には手を出すな！」とたらしめているのは、あと１人のメインキャラクターによるところが大きいと自分は思っている。

それが、金森さやかだ。このキャラは、アニメに興味もなく作中でも積極的にアニメについて詳しくなろうという姿勢すらない。しかし、このキャラが担うのは、プロデュースや運営だ。元々は主人公の浅草みどりの友人ということでアニメ制作に関わることになるのだが、この「プロデュースと運営」というスパイスが加わることで、この作品は一際輝いている。

　「映像研に手を出すな！」のアニメ１期では、作中で３本のアニメを作成することになる。普通のアニメなら無事完成！大絶賛！となるのだが、この作品は明確に納期というものが作中で意識されおり、毎回製作者側が「ここをもっとこうしたかった...」という状態で作品を公開することになるところにある。

　実際のアニメ制作に関わらず、創作の場面では１００％満足できる出来栄えのものを世に出すことなんていうのは不可能と言い切っていい。こうして文章を書いている自分でさえ、後から見返して「ここはもっとこう書けばよかったな」とか思うものだ。それは時間的な制約だったり、スキル的な限界だったり理由は様々だが、「映像研には手を出すな！」はここにアニメ補正というのは働かない。

「もっと時間さえあれば」とか「この手法を使えてればもっと楽だったのに」とかいった後悔をしながら作品は進んでいき、次回作では改善しながらもまた新しい後悔などを生み出していく。

　ちなみに個人的に好きな場面は、どうしても人の手が足りない時に、背景の外注をするのだが、苦労して説明しても結局違うものが納品されるというリアル感が現実の仕事を思い出せれて、一緒に冷や汗をかいたものだ。

（アニメ６話より　外注先に発注内容を伝えるシーン）

　と、ここまでリアル路線の話だけを取り出して「面白い」と書き続けたが、アニメ作成部分の夢のある部分、面白い部分というのの魅力の伝え方の面白さもこの作品を語る上では決して外せない。特にアニメの設定を考え、想像を膨らませているところは、特に主人公の浅草みどりが一際テンションが上がっているシーンとなるが、そのワクワク感がこちらにも伝わってきて否応なく自分のテンションまで上がってしまう。

（アニメ１話よりマシンの設定画　漫画版で見ても楽しそう）

（アニメ１話よりマシンの動きを想像しているところ　背景がこの場面にはラフな書き方となっており、設定を考えている途中の空気感が増している）

こんなように、アニメ制作の面白さと現実が葛藤する非常に見応えのある作品となっているので、是非見て欲しい作品だ。個人的な今年一番のハマり作品だ。

今ならアマゾンプライムで視聴できるので、プライム会員の方は是非こちらから視聴できるので是非。

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ここまで熱く書いてきたが、まだアニメ版しか視聴しておらず、恥ずかしながら原作の漫画版はまだ未読状態となっている。こちらもやはり面白いようなので、近日中には読みたいと思っている。いつ読めるかしら？

映像研には手を出すな！（１） (ビッグコミックス)

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