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ばあちゃん ザ ファイナル

福島のばあちゃん家に、ケータイを忘れた。
ブルーとホワイトのバイカラーの、折りたたみケータイ。
「音楽ケータイ」を謳っていて、折りたたんだまま、着うたの再生や停止ができる。
こないだ最終回を迎えたドラマ「花より男子」の道明寺も同じのを使っていた。

忘れたままでもいいか、と思った。
ぼくには友達がいなくて、メールで気散じする相手もいなかった。
せっかくの音楽機能も、着うたは高いし、あんまり買いすぎるとお母さんに怒られる。
それに、ばあちゃんはだいぶボケてきていて、ばあちゃん家を出てからのほんの数十分で、ぼくのことを忘れてしまっているかもしれない。
怪訝な顔をされるのは、嫌だった。

それでも、ケータイを買ってくれたお母さんが怒りそうなので、戻った。
ばあちゃんは、「これか。また来いよ」と言ってケータイを渡してくれた。

3年後、ばあちゃんは80歳で死んだ。
ケータイを渡してくれた時が、ぼくにとっては最後だった。

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