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【創作BL小説】箱庭の僕ら 10話

【善は箱庭から出られない】

さて、俺の高校生活は順調でもあり、順調では無いと言えばそれはその通りで…

クラスではまた学級委員を任され、成績も上々で、人間関係もうまくいっていたし、生徒会からはスカウトの人も来たりして、俺の人徳のせい?と自惚れたりして、なかなか楽しい高校生活を送っている一方、幼馴染みで、同じ宗教二世の美智が、俺にまとわりついて離れない。

どこからの情報か知らんけど「俺と美智は付き合ってる?!」とかなんとか(美智が言って廻ってるらしい)周りの友人からも冷やかされる始末だ。

確かにうちの高校で、美智は可愛いか美人か、そんな部類に入ってるらしく、文化祭でも美人コンテストに出場してたな。

そんな美人が俺の直ぐ側にいれば、誰だって俺となんかあると思うだろう。

まぁ、別に誰になんと言われようと構わないんだけど、「美智と俺は実は婚約してた!」なんて爆弾発言を親の前でかましてから、俺は美智のことをMAXで警戒していた。

相変わらず、母親は美智の話を良くするし、何かにつけて俺と美智をくっつけさせようとしているのがバレバレだ。

教義としては、俺は信者同士でしか結婚出来ないわけで、万が一、信者以外の””罪の人””と結婚するなんてことになったら、他の信者からの物凄いバッシングや陰口の嵐、上層部からは、助言という名目の呼びだしがあり、「もうセックスはしたんですか?」「どちらから誘いましたか?」「口腔交接はしましたか?」「その時感じましたか?」「射精はしましたか?」などというデリカシーの欠片もない質問を、調書を取られながら、初老の男性数人と両親の前で聞かれるという公開処刑が待っている。

双方の両親が、俺と美智が早くどうにかなって欲しいと願う気持ちはわからなくもない。

俺はというと、美智のことは好きでも嫌いでもない。正直小さい頃からどうでもいいし、一緒にいて面白くない。別に近くにいようが、ベタベタしてこようが、全く心が動かないんだ。

俺に気を遣ってくれてるし、こいつ俺のことが好きなんだなとちょっと切なく感じたりするけど、それで好きになるわけじゃない。

俺は光といた日々を思い返すと、美智のことは全然好きでもなんでもないんだと痛感させられる。恋とは、俺が光に対して抱いていた感情だ。

何かあれば、光に一番に知らせたい、光のことは何でも知りたい、光に幸せになってもらいたい、光に触れたい、髪を撫でたい、キスしたい、それ以上も…

光の肌はどんな感触だろう、スベスベしてるかな、光の首元に唇を寄せて、匂いをかいで、優しく抱きしめたい。そして、それからぐちゃぐちゃにして泣かせたい…

俺は宗教二世として、罪人なんだ、誰も知らないだろうが。
神様は心の中もすべて見ていると言われて育った。もし神様が俺を見ていたら、同性の男に恋をしている俺を大罪人として殺すんだろうか。

そんな神はクソ食らえ!と思っているけど、それを口に出すことは決して許されない。俺はこの自分が納得していない様々な規律やルールのあるこの箱庭で、一生過ごさなくてはならないんだ。

ただ、光ともう会えないんだと考えただけで、涙が溢れてきてしまう。街を歩いていて、偶然会えたりしないかな。いつか旅先でバッタリ会えたりしないかな、なんてちょっと暇になると、そんなことばかり考えている。

でも光と離れるって自分で決めたことなんだ、しっかりしろ!俺!
どうしたら、この思いを断ち切れる?思い出すのは、キラキラ光る黒目がちな大きな瞳で俺を見る、光のはにかんだ笑顔・・・・

時々、ほとんど無意識に、いつも光と過ごした高台の公園に足が向いてしまう。光と座った柵に腰かけて光が言った言葉を思いだす。

「善、俺たちは..…自由なんだ。善の”どう生きたいか”っていう意思は、誰にも邪魔できないし、善が望むなら、どんな生き方だって出来るんだよ。このことを忘れないで。」

光、それって本当か?どうしたら自由に生きられるんだ。自分の気持ちに嘘をつかないで生きられる?教えてくれ、光・・・・
俺は頬を流れる涙もぬぐわず、ただ夕焼けに染まる空を見上げていた。







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