へっぽこぴーりーまん書紀〜2社目編 東京編⑦
東京2年目。モチベーションは落ち始め、客先とうまくいかないことが起こり始める。
キングでのトラブル
担当した最大顧客のホームセンターキング。
卸問屋の営業 増田と最初に喧々諤々の論戦をしてしまう。
発端は、増田が勝手に客先に値引きを出してしまった。
その補填をメーカーに請求してきたことだ。
当然ながら、会社に相談した結果Noとなる。
「請求を受け付けられない。」ことを増田に伝える。伝えたものの、増田はのらりくらりとかわす。
その応酬の後に、ボクは増田に対してブチ切れてしまったのだ。
応酬の果て
「そっちが勝手に値引きを切るからです。ルール違反ですよ!」
「なんで事前に言わないんですか?」
そんな厳しい言葉を、ボクは増田にぶつける。当時のボクは30代前半。増田は40代なかば。
いくら正論といえど、年下から辛辣に詰問されるのは増田のプライドを傷付けた。
多分増田とボクは似ていた。互いに気付いてなかっただろうけど。
プライド高い。一見と違い、責められると意外と脆く、心を閉ざすところが。
何より、営業マンとしては増田のキャリアのほうが上。ややこしいキングで上手く自社のシェアが取れているのも増田の営業手腕によるところが大きかった。今にして思えば。
ボクは、東京赴任当初にセキヤの卸問屋の営業担当との間でたまたま成功した「強気交渉パターン」に酔っていた。
強気。というか強弁で相手を弁論のように言い負かす。その結果言うことを聞いてもらう。
自分がコンプレックスを抱いていたこともあってか、それに快感を覚えて酔っ払ってしまったのだ。
増田とは、売り言葉に買い言葉の応酬になる。増田とボクとの関係は拗れ、ホームセンターキングとまともに商談ができなくなる。
なぜなら、あくまでキングへのフロントマンは増田。商談をするにも増田を通す必要があるからだ。
ボクの頭から抜けていたこと
ルール違反はあったかもしれないが、増田はビジネスパートナー。
彼がいないと、ものごとが進まないということだ。
ボクは彼を悪者として会社に報告していた。
しかし、「売るための苦肉の策」として増田が見込みで先に値引きを切った。
と功罪ミックスで報告することもできたはずだ。そうすれば、会社を巻き込み穏便に解決できたような気がする。
ボクは自信のなさから、相手を打ち負かす。マウントを取ることに固執しすぎていたように思う。
欠品
そんな応酬のさなか、商品の大規模な欠品が起こってくる。
水筒が世の中的に爆発的に売れることによる欠品。
欠品は長期化した。
欠品となると、顧客に頭を下げなければならない。
事細かにコミュニケーションを取らなければならない。
ボクは増田と拗れた関係を引きずり、まともにコミュニケーションを取れない状態になってしまっていた。
大人の対応。顧客志向ではない。営業マン失格である。
(増田も大人げない対応だったこともあるが…)客先関係は拗れ、欠品対応も互いに建設的に話せなくなってしまう。
キングは全国展開しており、商品供給については、他の営業拠点と調整しなければならない。
増田はボクに腹を割らなくなっており、テキトーな情報しか入ってこなくなっていた。
本田にその点を突かれ、足利にも正確な情報が取れないことを突付かれる。
担当変更
翌年。ボクはホームセンターキングの担当を解かれ、代わりに全国チェーンのJBCホームセンターを担当することになる。
単純な担当変更とボク自身は思いこみたかったが、そうではなかった。
前職場と通算し、バツ2。客先とのトラブルで担当を外された扱いだった。
「増田が悪いんです!卸問屋の組織に問題があります!」ボクは息巻いてみせた。
しかし、ボクがそれを立証するには地道な仕事の積み重ねが足りなかった。
何よりレッテルを貼られた状況から、「コイツの言うこと(仕事ぶり)は正しい」と説得できるブランドを確立できていなかった。
破滅へのカウント・ダウンがはじまっていた。
(→次回に続きます)