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絵の描き方

定期的に「どうやって絵を描いているのか?」と聞かれる事がある。その度に「普通に描いてます。CGでもアナログで描くのと同じです」と答えるのだけど、相手は微妙な表情で「なるほど、まぁそうか」と答えるだけだ。絵を描く事について客観的に自分を見つめた事がなかったので、この質問の意図も含めて今回色々と考えてみた。

質問者が自分でも絵を描く人の場合は、どんなハード・ソフトを使っているのか、どういう手順で描くのかと言った技術的な側面なのだろう。因みに私は下書きから仕上げまで一貫してデジタルで行なっているので、紙や鉛筆は一切使わない。そういう描き方はYouTubeなんかに上がっている動画のチュートリアルで覚えた。海外のコンセプトアートなどを手掛ける高度な技術を持った人たちがそういうものを結構上げているので、字幕はないけれど視覚だけで充分に勉強になる。特にコンセプトアートはCG独特のエフェクトやレイヤーは最小限に抑えて、ブラシを使い分けて素早く仕上げるので、元々アナログで絵を描いてきた人間にとってはとっつき易いやり方だと思う。ハードやソフトなどの道具はとりあえず毎日使って慣れていくしかない気がする。色々な物に手を出さずにこれだと決めた物を使い倒して、それを軸にして足りないものは他のハードやソフトで後々補っていく事をしないと、道具に使われてしまう。

質問者が自分で絵を描かない人の場合は、果たしてどういう意図で質問しているのだろうか。アイディアを浮かばせる方法?描いている最中の精神状態?絵を描こうと思った経緯?この辺に関しては推測の域を出ないのだけれど、少なくとも技術的な側面を質問されているわけではないのだろうと思う。アイディアに関しては外からの刺激で自分の中に溜め込んだ情報がひっぱり出される気がする。少なくとも私はそうだ。仕事の場合は意識的にそれを行うし、仕事以外で描くときは日常のふとした刺激でひっぱり出される。それを「アイディアが降ってくる」と表現する人たちがいるけれど、私は「降ってくる」という感覚は味わった事がない。どちらかというと「湧き上がる」の方がしっくりくる。湧き上がって来たらPCを起動して下書きをする。ここからはかなり理性的な作業だ。構図を考えて、配色を決め、光源を設定して、個々のパーツの質感やパース、距離、骨格、筋肉といった事をずっと意識しながら描き続ける。実はそんなに幸福感の高い作業だとは思えない。細部に囚われるとバランスが崩れていくので、常にもう1人の自分が側にいて、のめり込み始めると肩を叩かれる。こんな作業を繰り返しているせいか、絵を描いている時以外でものめり込もうとする自分を冷静に見つめている自分がいつもいてトランス状態になるほど熱中する事はほぼないと思う。だから酒を飲むのか。多分一番難しいのは絵を完成させる事のような気がする。終わらせる事、サインを入れる事、今はこれが限界だと認める事。

色々と考えてみたけれど、結局人それぞれなので絵を描くプロセスをもっと楽しく行なっている人はたくさんいると思うのだけれど、私はどれだけ理性的でいられるかという事を試しているような気がする。何のためにそんな事をしているのかと問われてしまったら、困るけれど。

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