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広島ウインドオーケストラ第61回定期演奏会に行ってきました

2024年6月9日、ロックの日です。つまり僕の日です。(?)

今日は広島のプロ吹奏楽団、広島ウインドオーケストラ(以下広島ウインド)の第61回定期演奏会に行ってきました。

これがまあ、凄かったです。

父親の闘病のことがあるので、前日、なんなら当日まで行けるかどうかわからず、昨夜行けそうだなと判断して、SNSで団員の方が「当日券あるよ」と投稿していたので当日券で聴いてきました。S席5,000円です。財布の残金が半額になりました。(現金を持ち歩かなさすぎという話も)

広島ウインドについては僕が広島に来たのが15年くらい前で、下野竜也さんが音楽監督に就任されたのが13年前の2011年です。それ以降、たぶんコロナ禍を除いてちょくちょく定期演奏会には顔を出しています(なので数回、たぶんまだ10回は行ってないかな)。僕が2017年に開業してからは招待状も送っていただいています。

今回は上記のように僕の事情で期日までにご招待に返事が出来なかったので、当日券で参加したという具合。

プログラムは下記のとおりです。

J.バーンズ:祈りとトッカータ

西村朗:秘儀VIII《地響天籟》

西村朗:秘儀IX《アスラ》

<休憩>

西村朗:秘儀VI《ヘキサグラム》

團伊玖磨:ブラスオーケストラのための《行列幻想》

広島ウインドの強みはいくつかありますが、一つがこのプログラミングです。定期演奏会ではプログラミングアドヴァイザーとしてコンサートホール業界(?)では有名な国塩哲紀さんが関わるので、毎回興味深いプログラミングをしてきます。
(実は僕は国塩さんから見ると大学の吹奏楽部の後輩にあたり、東京にいた大学生の頃からお世話になっております)

僕は吹奏楽の仕事をしていて、他社の出版作品もセレクトして販売するし、CDも聴くので、今回も全曲聴いたことがあるはずなんです。でも僕はクラシックの曲を覚えるのが得意ではなくて(ロックの曲なら覚えるんだけど)、毎回「どんな曲だったっけなあ」と思いながら聴くことになります。

バーンズの「祈りとトッカータ」は学生時代に演奏したことがあるのでさすがに覚えていましたが、この曲の演奏が始まった瞬間のあの空気。

「これ俺が知ってる曲じゃねえ、もはや秘儀じゃん」

もともと迫力のある作品ではあるのですが、地からマグマが出てくるような冒頭のメロディー、ゴジラでしたね。なおかつ音がめちゃくちゃ美しいんです。バンドの集中力もハンパないです。この1曲でもう「参ったー」という感じだったのですが、あな恐ろしや、これはあくまでも「秘儀」への前奏曲でしかなかったのです。

続く「秘儀VIII《地響天籟》(ちきょうてんらい)」「秘儀IX《アスラ》」はさらに集中が求められるド迫力かつ超緻密なセンシティブ・オブ・センシティブな作品ですが、まあ見事でした。信じられないですね。下野さんが作る音楽表現がズバ抜けてすごいというのもあるのですが、それに演奏で応えるというのも相当難儀です。それが出来るようになった。ここに広島ウインドの成長があると思います。

休憩を挟んで「秘儀VI《ヘキサグラム》」。ブラス・ヘキサゴンの委嘱で6重奏のために書かれた作品ですが、何人で演奏しても良いらしく、今回はそれぞれのパートを倍にして吹いたり吹かなかったりの足し算引き算をする形で、12人で演奏。下野さんが指揮をするという形でした。

6曲の組曲ですが長い曲なので、1曲ごとに下野さんが解説を入れてくれて、聴衆も飽きずに楽しめる工夫がされていましたね。てかこの曲も容赦ないですね。西村朗さんマジ天才。亡くなられてしまったのが本当に残念です。

ここまで下野さんが「熱湯風呂」と表現した現代的な曲が続いたわけですが、最後にようやく熱湯風呂から解放されることになります。生誕100年記念でもある團伊玖磨「ブラスオーケストラのための《行列幻想》」。

この曲の明るさに救われた聴衆も多かったのではないでしょうか。しかししかしだがしかし、現代的な作品を集中して聴いていただけに、細かい音を聴ける耳になっていました。團伊玖磨という作曲家がいかに常人離れしていたかということが聴衆にわかるように仕組まれていたわけです。「秘儀」シリーズに比べるとだいぶ明るいですけどものすごい緻密な曲です。これまた見事な演奏でして。もう笑っちゃうくらいというか、笑うしかない感じになってました。

広島ウインドについては前回の60回定期演奏会も凄くて僕はテンション上がりまくってたんですが、今回はさらにそれを上回る出来で、ほんともう最高でした。文句なしです。

(参考までに60回定期演奏会の感想はこちら)

S席5,000円と書きましたが、倍以上の価値があった。こういう演奏会はそうそうないです。

開演前に国塩さんに久しぶりにお会いして少しお話をしていたのですが、今回の後、また少し団内の体制が変わるようです。

これは現場で会う約束をしていた作曲家の正門研一さんからも聞いたのですが、古参のメンバーの役職が変わったり、コンサートマスターが変わったり、そういう組織的な変化があるようです(古参のメンバーが辞めるわけではないそう)。

そう考えると、前回の60回も節目ではありましたが、今回の61回定期演奏会も節目で、下野さんが就任してから今回の定期演奏会までをひとつの期間とするなら、間違いなく今日がそのクライマックスだったなと思うような手放しで称賛できる演奏でしたし、「秘儀」を中心に組まれた最高のカップリングでのプログラムだったと思います。このプログラミングでここまで見事な演奏を出来る広島ウインドのメンバーが凄いですね。

体制が変わるといっても下野さんが退任されるわけでもないでしょうし、国塩さんもそのままプログラミングアドバイザーを続けられるそうなので、今後どこまで高みに昇っていくのか、楽しみしかないです。

国塩さんと下野さんによるプログラミングに耐えうるスタミナと、下野さんの音楽表現に応える力はついたと思いますので(本当はもっと下野さんは要求している可能性もおおいにあります)、この先は未知の世界という感じがします。

ぜひ広島交響楽団のような「広島の顔」になってほしいなと思いますし、他の地域のプロ吹奏楽団にも刺激を与える存在になってほしいなと思います。そして広島ウインドを聴くために全国から聴衆が集まるようなバンドになってほしい。

吹奏楽の演奏会でこんなに幸せな時間を過ごせた経験は過去にも数えるくらいしかありません。下野さん、国塩さん、広島ウインドのメンバー、スタッフ、そしてお手伝いの皆さん(フロアのお手伝いをされていたのは学生さんだと思いますがさわやかですごく良かったです)、ありがとうございました!

あと、正門研一さんからお土産(湯布院 天使のショコラケーキ)を頂きました。こんなペーペーにお気遣い頂き誠にありがとうございます。

みんな、広島に広島ウインド聴きに来てくれよな!

次回の定期演奏会は2024年10月5日です。

詳しくは広島ウインドのホームページにて・・・


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