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【ZAKONE参加企業に迫る!vol.2】「カフェインコントロール」という新たなコーヒー体験、ストーリーラインの挑戦!

ZAKONE参加企業取材 第2弾では、デカフェコーヒーの研究開発に取り組むストーリーライン株式会社に取材を行った。ストーリーラインは単においしいデカフェを提供するのではなく、「カフェインコントロール」という新たなスタイルを提案し、現在多くのメディアからも注目を浴びている。カフェインは眠気覚ましに効果的だが、カフェインの過剰摂取は睡眠障害も引き起こすこともある。「カフェインを上手に摂取できれば質のいい睡眠をとることができるのではないか」、そこを出発点に取材をお願いした。本記事ではストーリーライン CEOの岩井順子さんにインタビューを行い、「カフェインコントロール」という考え方に至った経緯、ストーリーラインのコーヒーがおいしい秘密、そしてZAKONEでやりたいこと等を伺った。

ストーリーライン株式会社 代表取締役 CEO/CDO 岩井順子さん


1.発想の転換から生まれた「カフェインコントロール」という新たなスタイルの提案

世界第4位のコーヒー消費国である日本だが、デカフェの消費は全体の1%未満と極めて少ない。デカフェを消費するユーザも妊婦や服薬中の方など限定的で、加えて市販のデカフェは「高くてまずい」というネガティブイメージも根強い。ストーリーライン設立当初から「美味しいデカフェを提供する」というアプローチだけでは限界があると感じていた。

“おいしいデカフェがなかったので、当初は「おいしいものをつくろう」という単純な発想でしたが、市場が極めて小さい上に、嗜んでいるユーザも「デカフェを飲みたくてというよりは、仕方なく飲んでいる」人が多く、市場的に伸びる可能性も見込めませんでした味には自信がありましたが、このおいしいデカフェを、どう消費者に届けるかが、当初からの課題でした”

現在の市場トレンドに目を向けると、健康志向の高まりからヤクルト1000を筆頭に「食品の機能性」に着目した商品が数多く発売されている。その背景には「心身のコンディションを手軽にコントロールしたい」という消費者ニーズがあることに気づいた。またカフェインは過剰摂取により睡眠・健康に障害を引き起こすため忌避されることもあるが、覚醒効果や集中力向上等のメリットもある。ストーリーラインは、このカフェインの機能性に着目し、「カフェインコントロール」というコンセプトにたどり着いた。

“「時間帯やその日の体調、予定などを考慮してカフェイン摂取量を調整し、コンディションを整える」というコンセプトをユーザにお届けできれば、デカフェも妊婦さんを中心としたニッチな市場ではなく、コーヒーを飲む全てのユーザーが対象となり、一気に広がるのではないかと考えました”

「CHOOZE COFFE」の全てのドリンク/焙煎豆メニューにおいてカフェイン量が選べる

日本橋にある実証店舗「CHOOZE COFFEE」はそういった考えの下運営を行っている。全てのメニューからカフェイン量を選べるようになっており、レギュラーコーヒーとデカフェでの価格差もない。日本橋という立地もデカフェとは縁遠いビジネスマンが多い場所もあえて選んだ。店舗で取得したデータによると、「40%の人が低カフェインを飲んでおり、その半数は男性」だという。

“デカフェを頼むのは、女性が多いと思いきや男性の方が多く、時間帯についても午後はもちろんだが、朝頼まれる方も多いことが分かってきた。カフェイン量の選択ニーズは顕在化しつつあり、市場も小さくないと実感しています”

2022年にオープンした日本橋にある実証店舗『CHOOZE COFFEE(チューズコーヒー)』

2.「デカフェはなぜまずい?」-まずい理由から紐解く、ストーリーラインの美味しい理由-

そもそもなぜ「デカフェは美味しくない」と言われてしまうのだろうか。理由は大きく2つ、流通と技術の問題だ。流通の問題は、デカフェのほとんどはドイツか、カナダで加工が行われているが、消費国に届くまでの輸送経路は通常のレギュラーコーヒーに比べ、長く複雑だ。原料豆も品質が低いものを使用していることが多い。ストーリーラインは、近い将来原産地であるルワンダで工場を設け、現地で豆を加工し、直接日本に輸出する体制を計画している。実現するとCO2排出量もカナダ経由に比べ半分以下になるという。

“ルワンダで採れた豆を現地で加工できるようにし消費国に送ることによってコスト、CO2排出ともに抑えた上で、美味しいデカフェを提供できる。そしてなによりもルワンダに技術移転することによって、ルワンダのコーヒーを高付加価値化し、途上国農業の第二次産業化にも寄与していきたいです“

2つ目の理由はコーヒー豆のカフェイン除去技術の問題だ。デカフェの抽出技術はいくつかあるが、共通するのは「カフェインも抜けるが、カフェイン以外の成分も抜けてしまう」のが最大の課題だ。ストーリーラインは東北大学との共同研究により、超臨界二酸化炭素抽出法を用いて、カフェインのみを選択的に除去する技術を開発。さらに除去前と除去後の工程においても旨味や香りの成分が流出しないノウハウを持っている。

デカフェにまつわる流通の問題

“「カフェインを抜く」という技術はそんなに大変じゃない、時間をかければ絶対抜けます。それよりもカフェイン以外の旨味が抜けないようにするにはどうしたらいいのか日々研究をしている。美味しさを担保することがデカフェにおいて重要だからです。

ストーリーライン独自のカフェイン除去プロセス

3. 今後の展望とZAKONEでの活動について

ストーリーラインは「カフェインコントロール」の新たなコーヒー体験と共に、D2Cのような生産者と消費者が近いビジネスモデルの確立を目指している。そうすればコーヒー業界を巡る先進国バイヤー主導の利益構造に変革をもたらすことが出来るからだ。

“私たちが本当にやりたいことは植民地時代から変わらない、先進国バイヤー主導の利益構造の変革を促し、社会問題の解決に繋げていきたい。1杯のコーヒーを買うことが、生産者にどういう意味があるのか、消費者にストーリーを伝えるだけでなく、彼らのビジネス面での解決にも寄与していきたいです“

最後にZAKONEでの活動についても語ってくれた。

“まだ企画段階ですが、NTT東日本の睡眠事業とも連携して、「カフェインコントロールすることによって睡眠がどれだけ改善されたか」の定量化を図りたいと考えています。カフェインを適正な時に取る、取らないが出来れば睡眠の質向上に繋がると思います。ZAKONEを通して啓蒙していきたいです。


取材・文執筆 ZAKONE編集部 山下 航

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