―曲ノ思ヒ出 -1-

Craig Armstrong 「Finding Beauty」

【冬のある平日の早朝(6:30頃)、駅のホームにて。】
高校生だった僕は、電車を待っていた。
辺りはほんのりと薄暗く、ホームには自分しかいなかった。
空気は冷たく、吐く息は白くなっていた。
僕はおもむろに鞄からiPodとイヤホンを取り出す。そして、イヤホンを耳にセットした。iPodを操作して、「Finding Beauty」をかける。

理由は「ただ、聴きたかった」だけ。特に理由はなかった。
Aメロのストリングスの旋律が、冬の朝の雰囲気とマッチしているような気がして、暫くの間曲に聴き入っていた。
Bメロのサビに向かって盛り上がりを見せていた時。同じホームに人がやってきた。その人は、僕と同じ位の年頃で、他校の制服を身に纏っていた女の子だった。
サビが始まった時。彼女の顔を見た瞬間、僕は思わずハッとした。彼女は、中学校の同級生で、僕が好き「だった」人だった。
眼鏡をかけていた「彼女」は変わらず落ち着いていて、清楚で、綺麗だった。
僕は驚きで心臓が高鳴っていた。…しかし、Aメロの荘厳なストリングスと冬の空気の冷たさで我に返った。
久々に「彼女」と何てことない話題で話したい。でも、「彼女」はどう思うのだろうか…?
そうこうしているうちに、電車が到着した。
結局、僕は「彼女」に話しかけることなく電車に乗り込み、ひたすら「Finding Beauty」を聴いていた。

―そんな、少しほろ苦い、高校生の時の思い出。

あとがき…

最初に断っておきますが、このお話は「ほぼほぼ実話」です(何割か「思い出補正」ないし「結末が思い出せないが故」の脚色あり)。
ふと、書いておきたくて、この話を書きました。その光景は、今でも当時の情景と共に思い出します(胸のドキドキはもうありませんが)。

個人的に好きな曲のひとつである、Craig Armstrongの「Finding Beauty」。
その曲を知ったきっかけは、車のCMでした。

当時、登場当時のCMを見て、思わず息をのんだ記憶があります。
そんな印象もあって、4代目(BL/BP)レガシィが好きになりましたし、「Finding Beauty」も好きになりました。後に、「Finding Beauty」はiTunes(懐かしいですね…)で曲を購入して、聴いていました。現在は収録されているアルバム(「As If To Nothing」)のCDを購入して、iPodに入れています。
聴き始めた当時は「どんな感じの曲なのか?」ということをあまり考えずに聴いていました。しかし、「ある出来事」をきっかけに「冬に似合う曲」という印象になっていきました。そのきっかけが、今回書いたお話の出来事になります。
Aメロの荘厳なストリングスが冬の空気感とマッチしていたのもありますし、サビに向けての盛り上がりも素晴らしかった。何より、サビに差し掛かったタイミングで偶然同級生を見つけた瞬間、何気なく見ていた「Finding Beauty」の意味を肌感覚で理解し、ストンと心の中に落ちていきました。
その出来事がきっかけで、「Finding Beauty」は好んで冬の時に聴くようになりました。

何故、「好き『だった』人」だったのかは…察してください(※単に「告白したけど、『ごめんなさい』と振られた」からです。)。
(余談ですが、)その時の同級生とは、大学の時まで、親しき仲でした。大学卒業後、しばらく経って彼女は結婚しますが、それ以降、自然と連絡は途切れていきました。(今でも元気かつ幸せに暮らしていれば、何よりです。)

最後まで読んで頂き、ありがとうございましたm(_ _)m
また「曲との思い出」があった時に書いていこうと思います。

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