『教養としての能楽史入門』読んでみた

この本は結構おもしろい。
能楽に関する本は、日本の文化なだけあって、さすがにたくさんある。しかし、新書サイズで、一般の人にもわかりやすく通史を教授してくれる本は、見当たらなかった。

「通史」であることが重要で、「能の作法」や、「あらすじの解説」などではないところに、この本の意義があると思う。

能は予習の必要な芸術である。というか、芸術一般は、少なからず予習が必要なものだ。制作側や演者の方は、「どなたでもお気軽にいらっしゃってください!」と勧めるが、それはオープントークであり、

実際、前提知識がないと、「よくわからなかった…」ということになっても全然不思議ではない。むしろ、能がストーリーを見せる芸術ではなく、『平家物語』も『源氏物語』もあんまり知らない我々が、あらすじをパッと見て、今日のハリウッド映画やアニメのように、「これは面白そう!」と思えなくて当たり前なのだ。

一回目の観劇は、それでもよいのかもしれない。二回目、三回目もそれでは観てる側としても能についてもっと知りたいという気持ちがでてきてもおかしくない。

そこで、以下のような能のあらすじを極力分かりやすく書いた本や、サイトにたどりつくだろう。

しかし、それもまた「なんでこんな中身のないストーリーなの?」となる。それも当然で、当時教養人にとって当たり前だった『平家物語』や『源氏物語』を現代人はあまりなじみがないのであり、

となると、そもそも能ってどういう思想なの?とか

結局、時代や様式の整理ができないと、「わかる」の入り口にも立てないのである(「わかっていない」と観劇してはいけない、ということではない。むしろ「わかりたい」から観劇するのかもしれない)。

そこで、この本の登場である。「なんで今の我々は能のことがわからないのか?」「なんで600年も続いてるのか?」「そもそもなんで始まったのか?」が分かる。能の予習として最適である。なぜか。結局、ストーリーや様式美については、我々は前提知識がなく、わかる部分が少ない。しかし、歴史については、能の通史においては、鎌倉時代も江戸時代も明治維新も、いわゆる「歴史」の視点でメタ認知できる。つまり、能の素人でもわかった気になれるのだ。

教養としての能楽史 (ちくま新書 1690) 

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