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クリスピードーナツ立ち上げからの大ヒットの秘策〜行列ドーナツの仕掛け人「清水元承」さんが語るマーケティングの本質とは?

先日、トビタテ留学ジャパンの有志が運営しているマーケティング勉強会「#トビタテマーケ会」に参加して来て13年前とかなり昔の事例ですが、温故知新という通り、学びがあったので備忘録として書き残しています!

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今回の講師について

清水元承さん
一橋大学卒業。1997年東京三菱銀行入行。証券投資部にてリスク管理業務に従事。PCスクール企業を経て2003年キアコンに参画、小売業再生案件に携わる。その後アパレル企業にて経理・財務を担当。2005年リヴァンプにてクリスピー・クリーム・ドーナツ・プロジェクト着手。2006年6月クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社 執行役員経営企画部長就任。現在トビタテ留学JAPANファンドレイジングチームに在籍。

今回は、以下のような内容をまとめています!

(1)オープン前の戦い〜広告費0円の挑戦〜
(2)理念〜合言葉は、クリスピーの理念、Creating magic moment!〜

そもそも皆さん、クリスピー・クリーム・ドーナツは知っていますか?アメリカ発で、全世界で646の店舗を展開しているドーナツチェーンです。日本で1店舗目である新宿店のオープンは2006年12月15日で、開店日からクリスピードーナッツは大ヒットし一時期多くのメディアに取り上げられてあっという間に「行列のできるドーナツ店」の称号を手にしました。なぜいきなり行列を産むことが出来たのか。

・オープン前の戦い〜広告費0円の挑戦〜
実は日本でのオープン前に本社から、典型的な広告を打つなと言われていたらしいです。そこで最初にやったのが街角でドーナツを配るという活動です。新宿のサラリーマンは昼時にご飯を食べに外に出ることが多いということが分かっていました。そこで昼時に歩いている一人一人に「新しくやるドーナツ屋ですよ」と伝えながら一日200箱、一人に1ダース(12個)を配る、家に帰ったり、事務所帰ったら家族とか職場の人とかと食べてくださいと伝えていたそうです。実際、一人で12個も食べれないので、それを社内でシェアをする人が大多数で、結果として一人に配ってるけれども、1人だけにリーチするのではなく一回配るごとに11人が食べることになる。そして実際に食べた人は当時流行っていたmixiとグリー等のSNSで色々投稿してくれたそうです。

そもそも街角で配ると、なんやこれとかなり人が集まって来て行列ができる、興味を持つ人が列に並びさらに増えて、行列ができてどんどん人がきて、っていうループができていたそうです。そこでさらにバズらせるために
行列ができている写真をTV局等に写真を送って連絡し、取材にくるという形でマスメディアも結果としてうまく活用できたそうです。その結果実際にお金をかけたのはドーナツと、配る人件費だけで多くの人にリーチすることができました。

まとめると
・やった施策は
クリスピークリームドーナツを「オープン一週間前」から「一箱(12個入り)」を「お昼の時間帯」に「OL」に「無料」で配った。

・その結果
(1)持ち帰った人が、オフィスや家でシェア
(2)ただでもらえるというお得な情報が口コミで発信される。
(3)情報を聞きつけた人がドーナツをもらいに行き、サンプリングに長蛇の列ができる
(4)その行列をメディアに報告しTVで報道

結果「宣伝費0なのに、大人気ドーナツ店として全国的に認知される」

・オープン後の戦術〜合言葉は、クリスピーの理念、Creating magic moment!〜

もう一つマーケティングではなく、理念という観点で参考になった点があるのでまとめています。清水さんが、本社のマーケティング担当者であるCMOにずっと言われていたのが”Not selling. Don’t forget Always. そして私たちはマジックモーメント屋である"という言葉でした。最初の頃でこそ、その真の意味は分からなかったようですがアメリカの店舗にて研修をしていた際に分かったそうです。当時米国の店舗では並んでいる人にできたてのドーナツを「Would you like to try to eat hot original donuts?」と言いながら一つ差し上げるということをやっていたそうで、清水さんがドーナツを一人の女の子にあげた時に「Yummy!!!」と言われた際にめちゃくちゃ可愛くて、それと同時に喜んでくれるのがめちゃくちゃ嬉しいという体験をしたそうです。

そして「あ、これがマジックモーメントなのか!」ということがわかったそうです。マジックモーメントとは、ドーナツが出て来た時の瞬間にお客様が心が動く瞬間を作るブランドの魂であり、売っているドーナツとかコーヒーとかはその手段である、私たちは人の心を喜ばせるマジックモーメント屋なんだっていうのが分かった。そしてその経験をしっかり社員に伝え続けたそうです。その結果オープンしたのは12月の寒い時、熱々のドーナツを日本でも配っていたそうです、そこから帰ってきた社員が「マジックモーメント20個作って来ました」っていう言葉を発するほど浸透したそうです。

具体的な事例として挙げられていたのが、一人の店員の方が接客を担当したおばあさんが耳が遠く、目が弱い方だった為カウンター越しではなくて、側で接客をし、その上「電車の行き先が分からない」と言われた際にも付いて行き、そこから先の細かい方向まで教えて挙げて帰ってきた。後日そのお婆さんから感謝の手紙が来た。「すごい優しい店員さんで助かりました。本当にありがとうございました。」と。こういう動き方をした人を積極的に表彰したことによってと自分の頭で考えて、動いていいんだっていうことが組織に伝わり、結果としてどんどんお客様にいい体験を提供することが出来たそうです。

まとめると
・クリスピードーナツはマジックモーメント屋であるということを伝えていき、マジックモーメントとはどういうことなのかということを社員・アルバイトの方々に体験してもらいながら様々な事例を作っていく、いい事例を表彰することで組織として理念をベースに自発的に考えて行動する人がどんどん育成することができ顧客の満足度を高めることが出来た。

・他にもためになったこと
また香港のクリスピードーナッツは2年で撤退していたそう。なぜなら、ドーナツがそもそも存在していなかった。日本には既にミスタードーナッツがあり当時1000億くらいの市場がほぼ独占されていた。ドーナツってなんですかという0から市場を作っていくのは難しいということが分かった。

最後に清水さんがすんなりきたとおっしゃっていたドラッカーのマーケティングの言葉を共有します。

マーケティングとは”セールスをなくすこと”である。

これは顧客にプッシュしなくとも、自然に「売れてしまう状態」をつくるのがマーケティングということです。今回は、ドーナツを配ることによって多くの人に認知し、お金を払わずともマス広告が取り上げてくれたという事例で結果的に買いませんかと言わずとも、人が来るという状況を生み出したのでした。そして顧客の体験価値を高める組織作り、カルチャーがあったからこそ当時のヒットを生んだのではないでしょうか。

*因みに現時点でのドーナツ市場は少し苦しいようです。興味がある方はぜひ見てみてください。
・ドーナツ市場の行方
https://jp.ub-speeda.com/analysis/archive/47/

・創業前のお話はこちらに
http://hitogoto.com/moto/

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最後に宣伝です。

本記事はforent株式会社のKohei Tsukazakiがトビタテ留学ジャパンのメンバーが独自で運営した「#トビタテマーケ会」の学びをまとめたものです。過去にもこういう記事を書いていたり今後も発信していく予定なのでTwitterでも是非フォローして下さい!

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