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偶像の街・ブラチスラヴァ

10年前、私が一人旅への思いを新たにしたハンガリー・スロバキア旅行の、その最終目的地がブラチスラヴァであった。
オーストリアやチェコといった中欧の人気観光地に囲まれた小さな国スロバキア。その首都たるブラチスラヴァについて今日は取り上げていきたい。

ブラチスラヴァはこんな街

ブラチスラヴァ(Bratislava)は中央ヨーロッパの国、スロバキア共和国の首都である。スロバキアの西部、オーストリアとハンガリーとの国境に近くに位置しており、人口約45万人と同国最大規模を誇る。

新石器時代にはこの地に人が定住し始めており、10世紀初頭にはハンガリー王国の拠点・ポジョニとして成長を遂げた。16世紀にハンガリーの首都・ブダがオスマン・トルコの侵攻を受けると、そこから2世紀ほどはハンガリー王国の首都にもなった。その後1919年にチェコスロバキアの一部となった際、ブラチスラヴァと改名され、スロバキア共和国の独立にあたって同国の首都となっている。

ブラチスラヴァはスロバキアの西端に位置している。スロバキアを東から西へと旅していた私がブラチスラヴァにたどり着いたのは、旅の終わりの頃であった。

当たり前のように45分遅れた電車はブラチスラヴァ中央駅へ。

Meskanie = 遅れ

一国の首都としてはこじんまりとした印象を受ける駅だ。

早速市内へと向かう。
ブラチスラヴァ観光の目玉といえば、やはりブラチスラヴァ城だろう。

このドナウ川のほとりの小高い丘に要塞ができたのは紀元前のこととされている。その後ローマ、ニトラ公国、ハンガリー王国など支配者が変わるにつれて城は増築されていった。
17世紀、ハプスブルク帝国の時代にバロック様式へと改築され、ほぼ現在の外観となった。
その後19世紀初頭の火事で一度は焼失したものの、1953年から再建が始まり、かつての優美な姿を取り戻している。

ブラチスラヴァ城はその外見から「Overturned table (ひっくり返したテーブル)」とも呼ばれる。

遠景

現在、内部は歴史博物館になっており、内部を見学することもできる。

内装が極めてシンプルであるのは、再建されたのが近年であり、かつ当時のチェコスロバキアが社会主義だったからだろうか。

それでも、いやその分白亜の内装を展示品とともに楽しむことができる。

また、丘の上に位置する関係上、展望台からはドナウ川沿いに栄えるブラチスラヴァの町並みを一望することができた。

ブラチスラヴァ城も位置する旧市街は街の一大観光エリアである。さほど大きくないエリアであるので、徒歩だけで十分に見て回ることが可能だ。

街を走る旧式の路面電車が古い町並みとよく調和している。

とくに名所とされているのは、かつて旧市街を守ったミハエル門

ブラチスラヴァ最古の聖マルティン大聖堂等が挙げられる。

なにかのイベントで中には入れなかった

それらに劣らず、街歩きをしていると印象的なものに随所で出くわす。
それが銅像である。

最も有名なものは広場にほど近い交差点にあるチュミル(Čumil)だろう。

スロバキア語で「観察者」の名の通り、地面から上半身だけを出して道行く人たちをじっと見つめている。

彼の上にはなぜか存在を示す標識がある。
世界一意味のない標識だと思ったが、彼は2度ほど車に轢かれたことがあるらしく、これ以上轢かれないようにとの配慮によるものらしい。

その他、中央広場にはナポレオンが。

ナポレオンといえば19世紀初頭にブラチスラヴァを陥落させた将軍である。
ブラチスラヴァからすれば侵略者なはずであるが、2世紀の時を経て赦されたのか、今では定番の記念写真スポットになっている。

その他、童話作家のアンデルセンや

ブラチスラヴァとの関係性は不明

ただの一般人であるシェーナー・ナーチの像など、いたるところでユーモラスな像と出会うことができる。

有名な道化師の孫で、この格好で街を歩き「あなたの手にキスをします」と言いながら旧市街をあるき回った人物らしい。(参考)

銅像はスロバキアが社会主義支配から脱した頃、ブラチスラヴァに明るさを取り戻すため、当時の市長のアイデアで設置され始めたものであるらしい。

その後、銅像の数も増え多くの観光客が微笑みと共に足を止めるスポットになっているわけで、市長のアイデアは見事にハマったと言えるだろう。

スロヴァキア名物

ブラチスラヴァは、オーストリアの首都ウイーンから1時間程度で訪れることができる。そのため、オーストリア観光のついでに日帰りで観光することも可能で、実際そのようなルートで訪れるツアーも少なくないようだ。

実際、私がスロバキアを観光していた中で、唯一日本人と出くわしたのがここブラチスラヴァの街であった。

いずれにせよせっかくスロバキアまで足を運んだのだから、スロバキアの名物料理も食べておきたいところだ。

私がブラチスラヴァで訪れたのは、スロバキア料理を供するパブだった。

広い店内はスペースごとにコンセプトが異なっているようだ。

せっかくなのでスロバキア産のビールを頂こう。

あるいはビールが苦手な人はスロバキアのコーラであるコフォラ(Kofola)を飲んでもいいかもしれない。

チェコスロバキアが社会主義であった頃、西側諸国の製品でありコカ・コーラの入手が難しかったために生まれた独自のコーラである。
正直味は覚えていないが、通常のコーラに比べて炭酸弱めですこしスパイス感のある味わいらしい。

そして、スロバキアの定番料理といえばハルシュキ(halušky)である。

ハルシュキとは、じゃがいもを潰して小さく丸めて茹でたニョッキのような食べ物である。そこに羊のチーズを和え、カリカリに炒めたベーコンを載せたブリンゾベー・ハルシュキが、スロバキアの国民食とも言うべき食べ物であるそうだ。

味は上記の情報を得た上で食べれば、おおよそ想像のつく味といえる。でもせっかくならばその想像を実際に確認するということも必要な作業だろう。

ブラチスラヴァのマグネット

ブラチスラヴァのマグネットがこちら。

ドナウ川の向こうにそびえるはブラチスラヴァ城やミハエル門。そして名物の銅像たちの姿も収められた、ある意味全部入りのマグネットと言えるだろう。

夜のブラチスラヴァ

ブラチスラヴァ城と並んで街の新旧の"新"のランドマークに位置づけられるのが、UFOタワーだ。

ドナウ川にかかる橋を利用して作られたこの展望台がなぜUFOと呼ばれるかは、その姿を見れば一目瞭然だろう。

高さ95mの展望台からはブラチスラヴァの旧市街を見渡すことができる。

旅の終わりのノスタルジーを感じるには最適な場所かもしれない。
そういえば観光最後の夜は、いつもどこかで夜の街を眺めている。

ドゥブロヴニクのスルジ山や、ポルトのドン・ルイス1世橋。
そういった絶景名所と比べると、そこから眺められる景色は地味なものかもしれない。
しかし、その絶妙な地味さ、いや素朴さこそがスロバキアの魅力を表している。そんな気がしている。


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