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西の果てのエデン・コーンウォール

イギリス、中でもイングランドにおいてロンドン以外の観光地といえばどこを思い浮かべるだろうか。
オックスフォードやリヴァプール、コッツウォルズなどの名が挙がるのではないだろうか。それらと比べると、日本ではあまり知名度は高くないものの、イギリス人から愛されている行楽地がある。
今回はそんなイングランド西の端にあるコーンウォール州を取り上げたい。

コーンウォールはこんなところ


コーンウォール州はイングランド最西端にあるカウンティ(州)である。アイルランドやスコットランドと同じく、歴史的にケルト民族の地域であり、イングランドの他の州とは異なる文化を持っており、またイギリス人に人気のある保養地としても知られ、多くの必見スポットを持っている。

コーンウォールへのアクセス

ロンドンからコーンウォールへは、電車で約4時間半程度の距離である。日中の特急列車でもアクセス可能であるが、ナイト・リヴィエラという夜行列車がロンドン・パディントン駅とイングランド最西端のペンザンス駅の間を結んでおり、そちらでもアクセスが可能だ。

また、ニューキー・コーンウォール空港とロンドン他各地の間で飛行機便も運行されている。

コーンウォールの名所① 西の果てと南の果て

グレートブリテン島の左下の端に存在するコーンウォールは、イングランドの最西端と最南端地点を有している。

最西端 ランズ・エンド

まず、最西端のランズ・エンドは、その名が示すようにグレートブリテン島の最果てと言われる。スコットランド最北部にあるジョン・オ・グローツとは、グレートブリテン島内の最も離れた地点であり、その距離約874マイル(約1406キロ) となっている。この、ランズ・エンドからジョン・オ・グローツまでを車やバイク、自転車などで一気に移動する人のことをEnd-to-Enderと呼ばれる。なお、自転車では平均して2週間程度かかるようだ。
おそらく日本人がチャリやバイクで宗谷岬を目指す感覚でチャレンジするのだろう。

このランズ・エンド、観光名所となっており、サインポスト(標識)はもちろんのこと、展示館や農場、果ては4Dムービーアトラクションまである、複合観光施設の様相を呈している。ので、なにもない地の果てを想像していると少し拍子抜けするかもしれない。

そして、この周辺はなぜかウサギがやたらと多い。

歩いていて見かけるぶんには良いのだが、道路にもわりウヨウヨいるので、レンタカーなどでアクセスする場合は注意してほしい。

最南端 リザードポイント

そのランズ・エンドから数十キロのところに最南端のリザードポイントがある。こちらはランズ・エンドとはうって変わって、灯台とカフェがある以外はほぼ何もなく、より地の果て感が味わえるかもしれない。

名所②イギリス版モン・サン・ミッシェル

モン・サン・ミッシェルといえば、日本人が大好きなフランスの一大観光地であるが、実はイギリスにも同様の場所がある。その名もセント・マイケルズ・マウントだ。そのまんまだ。

モン・サン・ミッシェルと同じく、干潮時には歩いて島まで渡ることが出来るが、満潮時には道は海へと沈み、船でのみ行き来が可能な島となる。
もっとも、モン・サン・ミッシェルが常時橋での往来が可能なことを考えると、こちらのセント・マイケルズ・マウントのほうがよりモン・サン・ミッシェル感を味わえるかもしれない。

干潮時のセント・マイケルズ・マウント

満潮時のセント・マイケルズ・マウント

干潮時には浜辺から10分も歩けば、セント・マイケルズ・マウントにたどり着くことが出来る。そういう意味でもモン・サン・ミッシェルより手軽だ。

入場料こそ必要だが、石造りの城や修道院を覗いてみるのもいいだろう。また、城から見下ろす庭園もなかなかの見どころだ。

名所③断崖絶壁の劇場

もう一つ、コーンウォールに来たら必ず訪れたい名所がミナック・シアターだ。

この屋外にある劇場は、絶壁を切り崩して作った劇場なのだ。
よって、舞台のすぐ後ろは海である。

海のシーンにおいて、他のいかなる先進的装置を備えた劇場よりも臨場感のある芝居が見られることだろう。

もう一つ、この劇場の驚くべきポイントとして、Rowena Cadeという女性が一人で50年かけて作り上げたということだ。

50年という歳月をかけて石を運び、劇場を組み上げていく。50年に遠く及ばない期間しか生きていない私には想像もつかない根気と努力だ。一つ一つの座席にも敬意を持って眺めたい。

名所④・イギリス人の愛するビーチリゾート

イギリスの中では比較的温暖であるコーンウォールは、イギリス人がバカンスを楽しむ地域としても知られる。中でも、屈指のリゾート地なのがセント・アイヴスだ。

私がコーンウォールを訪れたのは5月末のバンクホリデー(イギリスの祝日)であった。5月なのでまだまだベストシーズンには程遠かったのであるが、それでも特にセント・アイヴスはホリデーを楽しむイギリス人たちで溢れていた。

とにかく海がきれいだ。皆この海辺での時間を楽しみに各地からやってくるのだろう。私はセント・アイヴスには数時間の滞在しかし無かったのであるが、数日間ゆっくりと滞在することで、更に良さが感じられるのだろうな、と感じさせる街であった。

コーンウォールの名物

コーンウォールには食の名物もいくつかあるので、それも取り上げたい。

①コーンウォールのファストフード

まずはなんといってもコーニッシュパスティだろう。一言で言ってしまえば具入りのパイだ。コーニッシュパスティ自体は、イギリス全体で比較的ポピュラーであり、ロンドンでも駅などで購入して食べることも可能であるが、せっかくなら本場で楽しみたい。そのボリューミーなサイズ感で満足感のある一品だ。

その昔、錫鉱山で働く鉱夫たちが鉱山内部で食べるためのランチとして作られたのが発祥と言われている。錫は有毒であるので、パスティの皮の部分を手で持ち、触っていない部分を食べて、触った部分はその場に捨て、ノッカーという鉱山に住むと考えられていた妖精にあげていたというメルヘンな逸話もある。

中には熱々の牛肉にじゃがいもや玉ねぎなどが入っており、固めの皮で覆われていることもあり、長くアツアツの状態を楽しめる。

②スコーンはコーンウォール式のお作法で

もう一つ、コーンウォールに来たらスコーンも味わいたい。スコーン自体はスコットランドが発祥であるが、スコーンのお供に外せないクロテッドクリームの名産地としてもコーンウォールは知られている。温暖かつ牧草に恵まれたこの地は酪農に適しており、乳製品の品質にも定評がある。

そんなスコーンと紅茶をセットで楽しむのがクリームティであり、アフタヌーンティーより手軽な午後のお茶のアイテムになっているのだが、コーンウォールで楽しむそれはコーニッシュクリームティと言われる。

日本では高価なクロテッドクリームであるが、イギリスでは安価に楽しめるので、ぜひたっぷりと付けて楽しみたい。
そして、コーニッシュクリームティを楽しむのであればクリームとジャムの付ける順番に気をつけたい

写真のようにジャムを先に、その後クリームを塗るのがコーンウォール式である。これを逆にしてしまうとデヴォン式、と呼ばれるコーンウォールの右隣、デヴォン州のスタイルになる。
デヴォンも、コーンウォールと隣接しており類似した気候からクロテッドクリームを始めとする酪農の名産地であるのだが、このクリームが先かジャムが先か論争においてお互いに譲れないものがあるらしい。

私が選ぶイギリス・ベストレストラン

コーンウォールは漁業も盛んな場所であり、新鮮な海の幸を活かした料理も楽しめる。そして、私が1年間イギリスに滞在した中で、ベストレストランに選びたいレストランはコーンウォールにあるので、ぜひ取り上げたい。

鉄道の終着地、ペンザンスから少し離れたニューリンにそのレストランMackerel Skyはある。

イギリス在住のイラストレーターの方が絶賛されていたことで知り、足を運んでみたのであるが、開店からさほど経っていない時間にも関わらずこの通りの大行列であった。この時点でほぼ勝利は約束されたも同然、期待が高まる。

30分ほど待っただろうか。ようやく席へと通され、思うがままにシーフードを注文する。

カニのサラダに

エビのボイル。

ムール貝に魚のグリルと、ただの1つとしてハズレがない。
まず素材が大変に良いのだろう。そしてそれを活かす味付けも絶品であった。
よくイギリスは料理がまずいというイメージがあるが、以前の記事でも書いたが、実際のところさほどまずくはない。しかしながら、取り立てて印象に残るほど美味しいものというのもそこまでないというのは正直なところだ。フィッシュ・アンド・チップスも美味しいといえば美味しいのだが、私が食べたフィッシュ・アンド・チップスで一番美味しいと思ったのはベルギーのアントワープで食べたものであった。

そんな中で、イギリス滞在も終盤に差し掛かった頃に食べたこのシーフード料理は本当に印象に残った。味のクオリティもさることながら、価格も大変リーズナブルなのだ。ロンドンで倍額払ったとしても同じクオリティのものを食べることは難しいかもしれない。
※残念ながらメニューの写真を撮っていないので、参考までに壁のスペシャルメニューが映る店内を載せてみよう。

なお、スペシャルメニューのロブスター(16.5ポンド≒約2,500円)は既に売り切れていた。もしあれば迷いなく頼んだのだが、残念な限りだ。
コーンウォールを訪れた際は、ペンザンスに泊まるのでなくてもわざわざ足を運ぶ価値はあると太鼓判を押させていただこう。

コーンウォールのマグネット

コーンウォールのマグネット、といってもコーンウォールは地域の名前なのでマグネットも色んな場所で入手ができる。私のようなマグネットハンターにとっては入れ食いの場所だ。

最南端のリザードポイントはその灯台を。
最西端のランズ・エンドはサインポストが。
セント・マイケルズ・マウントは満潮で海に囲まれた姿。
セント・アイヴスは美しい海岸と家々。
4者4様の特徴を感じるマグネットになっている。
(リザードポイントは少し使いまわしな風景感はあるが。)

終わりに

今回はイングランドの端っこ、コーンウォールを取り上げた。ロンドンからどうしても距離のある場所であり、他の観光地と併せて訪れることが難しいという点もあるので、例えば1週間のイギリス旅行を計画するなかで選択肢としては挙げづらい場所ではあるだろう。しかし、何度目かの旅行であったり、長く滞在するチャンスが有るのであれば、このイングランドの中において独自の文化を育んだエリアを訪れることで、イギリスの新たな魅力を知ることが出来るかもしれない。

最後までご覧頂きありがとうございました。
次回は、ウイスキーの聖地を取り上げられればと思います。

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