リードナーチャリングの専門家が少ない理由
BtoBマーケティングは今でも人材不足の領域ですが、特にリードナーチャリングの領域では専門家が極めて少ないです。私が今まで会った人たちでいうと、人口が多い順に
リードジェネレーションの専門家(Web広告、SEO、Web制作など)
セールスの専門家(インサイドセールス、フィールドセールス、セールスイネーブルメントなど)
カスタマーサクセスの専門家(オンボーディング、クロスセル、コミュニティマネジメントなど)
リードナーチャリングの専門家(メルマガ、MA、インサイドセールスなど)
でした。求人サイトや採用媒体を見ても、1〜3の募集はよく見かけますが、4の募集はほとんど見かけません。たまに見かけても、SFA/CRM/MAの導入・運用支援やレポート・ダッシュボード設計などシステムに寄ったものが多く、メルマガのシナリオ設計といった施策のプランニングに寄ったものはほとんどありません。これには以下の原因があるでしょう。
①ナーチャリングが必要なフェーズに到達していない企業が多い
ナーチャリングが必要なフェーズとは「リードジェネレーションを十分に行い、多くのターゲットリード数を蓄積できた状態」なのですが、多くの企業はこの状態に到達することもできていません。ナーチャリング以前に、リードジェネレーションで失敗しているわけですね。
例えばリード数が1,000など少ない場合、ナーチャリングをやってもn数が少なく、有意な結果が出ないことがほとんどです(開封率30%、クリック率2%と仮定しても、開封300、クリック20しかない)。それよりもリード数を増やしたほうが商談を多く創出できるでしょう。
もちろん、数だけ多くてもターゲットリードに合致しないと意味がありません。私がエンタープライズSaaSを開発する某メガベンチャーの支援をした際、リスト数は2万件ほどあったのですが、ほとんどがSMBのリードであり、エンタープライズ企業のリードは1,000件ほどでした。実質的に1,000リードしかいないわけであり、この状態でナーチャリングを行っても効果が低いため、先にリードジェネレーションにフォーカスしました。
②ルーチンワークでナーチャリングを行う企業が多い
多くのBtoB企業にとって、ナーチャリングは大きなリソースを割くほどの重要施策ではないので、基本的に「片手間」「兼務」になります。Web広告やSEOであれば専任担当者を置くことがありますが、メルマガやMAに専任担当者を置くのは珍しいでしょう(専任を置くのはBtoCで、LTV向上や解約防止などの目的がほとんどです)。他の業務が忙しい以上、担当者もナーチャリングにそこまで注力できないため、ルーチンワークのようなナーチャリング施策が増えます。
以前「ナーチャリングのためにメルマガを配信している」と自称する企業に会ったことありますが、中身を見ると
送っているのはセミナーや展示会の案内のみで、コンテンツのバリエーションがほとんど無い
同じようなメールを送り続けた結果、開封率やクリックが下がり続け、オプトアウト率が上がっている
件名やCTAの工夫はほとんど無し
商談創出数などの効果測定もしていない
という状態でした。マーケティング担当者が片手間にメルマガを配信していたのですが、これではナーチャリングの経験が積めるわけがないですね。
③マーケティング担当者にセールス経験が不足している
BtoBのメルマガ経験のある方はご存じの通り、メルマガ単体でリードを商談まで誘導するのは困難です。メルマガとは読者が能動的に受け取る情報ではないので、「興味はあるが資料請求しない」といった受動的な潜在層が多いからです。よって、
メルマガを配信し、クリックした人にインサイドセールスが架電する
セミナー申込者に対してインサイドセールスが架電する
など、インサイドセールスと絡めることがほとんどです。ナーチャリングを行うためには架電経験は無くても構いませんが、
どのようなリードを渡すとインサイドセールスが架電しやすいかを仮説立てる力
インサイドセールスにどのように話してもらうと商談に繋がるかを想定し、トークの流れを設計できる力
などセールスイネーブルメント、営業企画のスキルが必要となります。セールス出身のマーケティング担当者ならともかく、The Modelなどの分業化された組織においてマーケティング担当者がこういった経験を持っていることは稀でしょう。こうしたスキルの習得難易度の高さも、ナーチャリングの専門家が生まれづらい原因だと考えられます。
私自身はリードジェネレーションとナーチャリングを得意分野としていますが、これは会社員時代にインサイドセールスも経験していたこと、フリーランスになってからもいくつかナーチャリングの案件を受けることができ、経験を積めたのが大きく寄与しています。もしナーチャリングに課題を抱える企業がいらっしゃればご連絡ください。
私のBtoBマーケティングの仕事については下記の記事をご覧ください。
私の会社員時代の仕事については下記の記事をご覧ください。
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