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【レポート】「在庫・不良在庫を減らしたい」が4割ー小売・卸売企業が直面する重要課題の実態調査

Zaikology Newsを運営するフルカイテン株式会社は、2020年1年間に小売・卸売企業から寄せられた相談と問い合わせの内容をまとめ、小売・卸売業が売上や仕入れ(発注)、在庫についてどのような課題を持って事業に臨んでいるかを明らかにするレポートを作成しました。全体の19%が「在庫を減らしたい」とした半面、あくまで不良在庫を減らし在庫の適正化を図りたいとした企業も16%ありました。また、在庫まわりのデータ集計・計算を自動化するニーズは全体の25%超に上りました。
本稿では、このレポート全文をご紹介します。

「在庫を減らしたい」が最多の19%

2020年1月~12月、当社が提供する小売業・卸売業向けに売上増加と在庫削減の両立を支援するSaaS(クラウドシステム)『FULL KAITEN』に関する問い合わせから、FULL KAITEN導入の商談を実施した企業のうち、アンケートへの協力が得られた企業は118社あった。グラフ1は、問い合わせフォームへの入力内容と商談でのヒアリング内容をまとめたものだ。

企業によっては複数の回答を寄せている。業種は大半がアパレルで、他にユニフォーム・制服、靴、オフィス機器、身の回り品があった。

全商談グラフ2

「在庫を減らしたい」が最多の22件で、全118社の18.6%に上った。一方で、「不良在庫を減らしたい/在庫を適正化したい」は2番目に多い19件だった。
以上からは、恒常的な在庫過多に悩んでいる企業がある半面、あくまで「不良在庫」を減らして在庫高を適正な水準にしたいと考えている企業も多いことが窺える。

小売業や卸売業では在庫を減らすと売上も減り、売上を増やすには在庫を増やす必要があるというのが定説とされることから、よく売れる商品の在庫だけ持ちたいという願望が透けて見える。

また、「エクセル(Excel)管理のため業務負荷が高い」が16件(13.6%)、「SKUが多く在庫コントロールが難しい」は11件(9.3%)に上った。「業務が属人化している」との回答も3件あり、これら3つを合わせると全体の25.4%に達する。データ集計・計算を自動化するニーズが高いことが浮き彫りになった。

このほか、「発注業務の負荷を下げたい」「在庫リスクや不良在庫を可視化したい/不良在庫が発生するリスクを減らしたい」という声もあった。これらは、エクセル管理をはじめとした手作業のままでは実現が難しく、ITツールの適切な導入によって初めて実現する類いの命題であるといえる。

「値引きを抑えたい」「粗利を増やしたい」も切実

収益面での問い合わせ・相談も目立った。「値引きを抑えたい」「粗利を増やしたい」「客単価を上げたい」を合わせると、全体の16.9%に相当する20件となった。

増収を期して在庫を増やすと、売れ残り在庫も増えて値下げ(値引き)が増え、粗利率が低下しがちだ。粗利率を保とうとすると在庫が増えるジレンマに陥るのが小売・卸売業の現状だといえる。

売上を大きく伸ばすことが難しい新型コロナウイルス危機という環境の下、粗利率の維持と在庫高の適正化を両立させるには、値引きを抑制しながら在庫消化を進める必要がある。さらに、客数(注文数)を増やすには莫大なコストがかかるのに対し、客単価の向上は注文数を増やすよりもハードルが低いとみられていることが想像できる。

他方で、「売上を増やしたい/在庫ばかり増えて売上が増えない」は8件(6.8%)あったほか、「在庫回転率を向上させたい(売上げは増えているが在庫も増えている)」が16件(13.6%)に上った。
これらは、現状の在庫水準と比して売上が過少であるという、(当事者も気付いていない)潜在的な課題感が背景にあるとみられる。

DXで「在庫の質」の可視化が必須

逆に、需要予測で現状を打開したいという回答は相対的に少なかった。
「需要予測で発注精度を向上させたい」は4件(3.4%)にとどまった。2019年から2020年の新型コロナウイルス危機前までは、マスメディア等で需要予測の精度向上はAIの活用とセットで語られることが多かった。

全商談グラフ

しかし現実には、予測の結果というものはAIが予測し得ない外的要因に大きく左右される。現在の技術水準では、外的要因から受ける影響を考慮した予測は難しく、AIをもってしても抜群な精度での需要予測は困難であるという事実が、コロナ危機下で徐々に実業界に浸透してきたと拙稿はみている。

最後に、今回の調査内容を踏まえ、課題解決に向けた提言を結語としたい。
在庫過多に悩まされているからといって、売り方を変えずに単に在庫を減らすだけでは、売上の減少を招き事業縮小につながる。このため、売上への貢献度や売れ残りリスクといった「在庫の質」をSKUごとに客観的な数値として可視化したうえで、各々の「質」に適した売り方を実行し、手持ち在庫から効率的に売上と粗利を得るビジネスモデルへの転換が求められるといえる。

また、不良在庫を減らして在庫高を適正化するには、どの商品が「不良在庫」なのかを見極める必要がある。その見極めに際しても、「在庫の質」の可視化は必須となる。
こうした在庫の質の可視化(数値化)は、値引きを抑制して粗利を増やすうえでも必要不可欠だ。なぜなら、本来なら値引きする必要のない商品を全ての在庫の中から絞り込み、定価またはごく薄い値引きで販売するという作業を地道に繰り返さなければならないためだ。

以上のような可視化は、エクセル管理をはじめとした手作業では実行が困難であり、「在庫」の文脈でデータを有効活用してビジネスモデルを変革するDXを早急に推進する必要があるだろう。

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