劇場版『ハイキュー‼ゴミ捨て場の決戦』感想
3セット目、温存していた(?)もろもろの「絵作り」が解放されて、これでもか! というくらいいくつもの角度から快いアニメーションを味わった。
自分のお気に入りは点数のカウントが6-7になる前後の一連のアニメーション。腕の振りはふだんの可動域を越え、飛び跳ねるときには全身が悦ぶ。熱気溢れる運動は、フルセットにもつれ込む試合の盛り上がりに呼応しているかのように見えた。
言い換えれば、熱に当てられ、常軌を逸したキャラクターの運動や縦横無尽なカメラワークは、試合そのものの逸脱してゆく在り方に呼応しているから説得力がある、と言える。
この対応の頂点がラストシークエンスと重なるのだから、povの選択は極めて正しい。あくまで試合を「見る」客体だったわれわれはしかし、最後には「する」主体として、研磨に同一化する。フィクションを極めると、リアルに還ってくるという逆説。
この緊張が幾人もの汗によって解けるのも極めて正しい。ひとつの独我論的世界に「成って」しまったわれわれは、他者たちの「呼びかけ」によってバレーという何人もの人間が携わるスポーツに呼び覚まされる。汗で滑ったあの瞬間こそ、研磨が「バレー」に、クロ(黒尾鉄朗)に出会った瞬間の再演なのだ。
2024.2.20
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