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銭湯でコワイ映像を見た、という話

夕飯のときに、また娘と「イカゲーム」の話になり、そこから流れで自分が小さかった時のコワイ体験、という話になった。

それにしても、子供たちの間で何かと話題の「イカゲーム」。娘のクラスではほとんどの子が見ていて、何かあるとその話になるらしい。ギムナジウム1年生といっても、まだ12、13才である。残念ながら、「イカゲーム」は怖い映画が苦手な娘に勧められるようなドラマではどう頑張っても、ない。

娘もそれを分かっているので、既に見た私に内容についてあれこれ質問をしてくる。ネタバレになってしまうので、質問の内容にはここでは触れないが自分なりに思うことをツラツラと話す。

衝撃的な映像はさておき、ストーリーの軸になっているテーマは割と普遍的だと思うからだ。それなりに大きくなってから見ればいいだけの話。

そう、コワイ映像の話だった。娘の小さな頃の体験というのが銭湯で見たコワイ映像だったのだ。

「え、銭湯で死んでる人を見た?」湯船にお化けでも見たのかと思ったら違った。お風呂から上がって抹茶アイスを食べているときに、そこにたまたま置いてあったテレビでサスペンスドラマでもやっていたのだろう。墓地で人が殺され、殺人現場に描かれた白い線が目に焼き付いて離れなかったというのだ。

「ママ、だってまだ6才やってんで。夢にお墓が出てきて、地面に描いてあった人の形がピカーって光っててめっちゃこわかった。」

そんなことがあったのか。それを見てから、暗い部屋でひとりで寝るのが怖くなったと娘は語った。

「なんで怖いって教えてくれなかったの?」と聞くと、説明すると余計にその場面を思い出して怖くなると思ったからだとも。しかし、小学校3年生頃までずっと怖かったと言うではないか。3年生の時にハリーポッターを聴きながら眠れば、コワイ映像が頭から追い出せることが分かったんだそうだ。それで音楽を聴きながら眠るようになったのか。

ずっと我慢していたとは可哀想に。でも、そういうのわかる。小学生のときに、そういえば「家が火事になってなくなってるんじゃないか!?」と割と真剣に考えていた頃があって、学校が終わったら家まで走って帰り、家がまだあるかどうか確認していたことがあったから。

そして、そういうどこからくるのかわからない「不安」みたいなものを親に話してみよう、という気分にはなれなかったから。

あの子供の頃に抱く正体不明の「不安」や「怖さ」のようなものって一体なんなんだろう。一時期、住んでいた家の階下にあるトイレまで歩くのではなくてふわふわと浮いていっていたような感覚も拭えなかった。

娘も12才になって、やっとずっと怖かった昔の話ができるようになった。話してくれた後に、「よくそんなに長い間、ひとりで我慢していたね。」と頭をなでなでしてしまった。あんまりそういう怖い思いをひとりで抱え込まないでほしい。そんなふうに思った。


Image by PublicDomainPictures from Pixabay

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