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久しぶりのフォルクスビューネ

本当に久しぶりにフォルクスビューネ(Volksbühne)へ足を運んだ。久しぶりすぎたのか、2時間半が経ったところで集中が切れてしまい途中で抜けてしまったのだが、実はそこに至るまでにすでに何度か船を漕いでしまっていた。

ドイツ語のシャワーを一気に浴びたのでなんら不思議ではないのだけれど、正直なところ少し新鮮味に欠けていたのが原因なのかもしれない。観劇というものには割と当たり外れがあるような気がするし、見るときの自分の精神状態や体調なども大きく作用するのではないかと思う。

カトリン・アンゲラー(Kathrin Angerer)が非常に特徴のあるアクセントで話すのがおかしくて最初の方は笑い転げていたのだが、結局何が言いたいのかよくわからないセリフを延々と聞く羽目になり何度か意識が遠のいた。

今回は全く予習もなしで足を運んでしまったが、"Fantômas"にも多くの作品が引用されていて、なぞられている作品に通じていないとなかなか意味が取れないというトリックがある。今回のような早口のセリフが延々と続く舞台の場合、難易度がぐっと上がるわけだ。

2時間半で音を上げて外に出てしまったが、ホール係の人に長さを尋ねると「あと15分ほどですよ」と言われたときは少し拍子抜けしてしまった。カストロフの5時間以上の我慢大会にくらべればまだマシな方だったのだ。残り15分で席を立ってごめんなさい、という気持ちに一瞬なってしまったが、飽きてしまったのだから仕方あるまい。

ロシア、アメリカ、ソビエト連邦。FBIにKGB。台詞に何度も繰り返し出てくる「不安」(Angst)。世界情勢を揶揄していたり、示唆しているのだろうけど、途中からセリフを逐一追いかけて理解しようとしている自分がバカバカしく思えてくる。意味のあるようでないことを演者が大声で延々と語り続けるせいだろう。それこそがまさに世界の縮図なのかもしれないところがこれまた辛くもある。

文字通りぐったりと疲れて友人と劇場を後にした。それでも行っておいてよかったな、というのが今日の感想である。"Fantômas"は2023年10月11日にプレミア公演があった作品。ポレッシュは何を思いながらこの作品に取り組んでいたのだろうか。今となってはもうわからない。

ベルリンの劇場も含めたカルチャーシーン、そしてこの街そのものが今より不自由な場所になりませんように。そんなことを劇場の入り口に置かれた蝋燭や献花を眺めながら思ったりもした。

フォルクスビューネの入り口



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