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ベルリン廃墟ツアー①公営プール跡

日曜日の朝。9時の待ち合わせに間に合うよう、坂道をテクテク歩く。ベルリンの週末は朝が遅いので、この時間に通りを歩いている人はほとんどいない。そんな週末の朝の静けさがわりと好きだ。いつもなら、まだ寝ている時間なんだけれど。

ツイッター上で、廃墟の写真を定期的に上げている人がいることに気づき、一度リプライしたら「廃墟ツアーやりましょう!」と声を掛けてもらった。

ひとりで廃墟ツアーもいいかもしれないが、使われていない建物の中に潜入したときに何が起こるのかわからないのも廃墟スペース。ひとりで行くことは基本的には避けるべき場所である。ふたりでタッグを組んだ方が何かと心強い。

そんなわけで、今日は天気もいいので予定通りベルリンを北上し、目的地まで歩くことにした。それほど遠くはないが、普段は行かないエリア。以前、幼児向けの体操教室に子供たちを連れて行ったことがあるくらい。ロシア語の講座も確か受けたことがある。旧東ベルリンのパンコウという地区だ。

友人がすでに下調べまでしておいてくれたので、目的地にもなんなく到着。フェンスの一部が開いていたので、そこからスルリと身体を滑り込ませる。カメラを持って中に潜入するわけだが、ロケの感覚に近いというか、なんだか久しぶりの現場感があってワクワクする。

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家でコツコツ作業するのもいいが、やはり自分の足で出向いてその場所にあるものと対峙するのが好きなんだよなぁ。それが人でも、工場でも、コンサートホールでもサッカー場でも企業でも廃墟でも同じ。その時にその場所でしか得られない情報や空気、感情、ストーリーというものがあるのだと思う。

だから本当はオンライン越しのインタビューではなく、現場に飛んで対面で話を聞いたり、自分で現地の写真や映像を撮ったりするべきなのだ。今のような状況ではそれもなかなか難しいが、時間や予算が許せばそうしたい気持ちが強い。

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1995年にベルリンにふらっとやってきた当時は、市内のあちらこちらに工場跡や持ち主不明のアパートなどが残っていた。その時もやはり友人に連れられて、そういった場所をいくつか見に行ったことがある。フィルムカメラの時代だったのと、ハイスペックのカメラを持っていなかったので、残念ながら写真がほとんど残っていないのだ。

「そのうち撮りに行けるだろう」

そんな悠長なことを言っているうちに、2000年以降の開発ラッシュで東ベルリン側の灰色の建物群が一気にカラフルに様変わりした。時すでに遅し。だが、2021年になった今でも、かろうじて市内にも数カ所、そういった当時の名残りを感じさせられる廃墟群が残っているところがあるようだ。

今日、足を運んだ建物は入り口に"SCHWIMMHA(LLE)"というロゴがあったので、以前は公営プールだったようだ。解体費用などが確保できず、長年打ち捨てられた結果、このような廃墟と化したのだろう。

時間を見つけて、これから友人とベルリン市内や郊外に残る「忘れられた場所」に足を伸ばしてみたいと思っている。

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