ツイキャス

最近、ツイートのタイムラインを見ているときに「後何分後から配信します。」「ただいま、ライブ配信中です。」というのに2度ほど出会した。

ひとつは坂口恭平さん

坂口さんは彼の著書「独立国家のつくりかた」を読んで興味を持つようになった。ツイートでフォローしているうちに、彼が自分の携帯番号をプロフィールに載せ、「死にたくなったらかけてください。」と公言していることを知るようになった。

なんて人だ。こんな人がいるのか。

とにかく驚いた。そして、彼の創造力というか創作のエネルギーに呆れ返った。毎日パステル画を描き、文字をそれこそ大量生産し、畑に通う。それだけでなく、とにかく毎日毎日クォリティーの高い物を作り続ける人なのである。多分、死なないように作るタイプの人なのだろうと思う。

しかも、自殺者をゼロにしたい、という思いだけで死にたくなっている人からかかってくる電話を15本から20本くらい受けているのだ。一体どうなっているのか。よくわからないが、とにかく天才肌の奇人変人なのであろう。

坂口さんのツイキャスは24時間ライブという形式のものだった。そこで初めてギターを弾きながら歌っているのを聴いたのだ。自分がうつ状態のときに紙に殴り書きしておいた詩のようなものを歌詞にして曲をつけるのだそうだ。

もうひとつは白神真志朗さん。

坂口さんとは全くタイプも違えば、世代も違うが、Spotifyでたまたま流れてきて一目惚れではなく、一耳惚れをしてしまった人だ。それについては「あなたのことはす全て」でも一度触れている。最近、ぴったりくる音楽と出会う機会がほとんどなかったので声を聴いて衝撃を受けた。Spotifyでほぼ毎日のように音楽を聴く中で私の好みが絞られた結果なのだろう。

音楽との出会いも以前のそれとは大違いだ。まだネットのなかった時代は自分の周囲にいる友人や親、好きな相手の聴いている音楽に影響を受けたものだ。人から人へ、またはラジオやテレビから流れてくる音楽に興味を持ち、それらを聴いていた。カセット、あるいはレコードで。レンタルレコードショップがあった時代だ。

今はどうだろうか。人に勧められて聴くことはもちろん今でもあるが、それよりも「おすすめの曲」機能や、「ファンのお気に入り」機能などで点から点へ延々と検索できるようになった。ここ数年で音楽との出会い方が大きく変化したように思う。

コロナ禍でライブやコンサートといった活動ができないのは色々と大変だと思う。これは日本でもドイツでも同じことだ。ただ、Spotifyなどで気付くのは2020年に新作をリリースしているアーティストが多いことだ。対面でのライブ活動ができない今だからこそ、創作活動に打ち込めるのかもしれない。

いつまでこの状態が続くのか先が見えない中で芸術活動を続けている人たちには尊敬の念しかないし、応援したいと心から思っている。

タイトルを書いた時点で見えていたゴールからはずいぶんと逸れてしまったが、とにかくこうしてドイツにいながら気になるアーティストのツイキャスで少しでもコミュニケーションの輪に加われるなんていい世の中になったものだ、と今日はちょっと感動すら覚えた。大袈裟かもしれないんだけど。

*タイトル画像はみんなのフォトギャラリーよりllust_hime さんのイラストをお借りしています


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