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思い立ったが吉日

ロンドンに初めて行ったのは大学生のとき。英米文学科だったので、単純に英語圏に興味があったのだ。次にロンドンに行ったのは母親がベルリンに遊びにきた90年代後半。このときは母の希望で行ったのだと思う。どこに泊まったとか、何をしたかとか細かなことは忘れてしまったが、母とコベントガーデンでショッピングをしてフラワープリントのパープル系のワンピースを買ってもらったことは覚えている。そのワンピースはまだクローゼットに掛かっている。そのうち娘が着るようになるだろう。当時の私のようにドクター・マーチンと合わせたりして。

そう、ロンドンは楽しかった。ベルリンに比べると断然都会だし、人も多く活気があった。それはおそらく今も変わらないのだろう。ただ、当時はまだまだ未完成のベルリンの街に惹かれ、英語圏ではなくなぜかドイツの首都に住むことに決めた。何かが自分の琴線に触れたのだと思う。偶然、第二外国語はドイツ語を専攻していた。

ベルリンに来てからは、モスクワにばかり足を運ぶようになり、ロンドンには全く行かなくなってしまった。撮影の仕事をしていたときも、ロンドンの機材屋と国際電話でやり取りをする機会こそあったが、実際に撮影に行く機会には恵まれなかった。ペテルブルクの白夜祭やバルト三国の列車の旅は撮影に行けたというのに。

そんなわけでずいぶんとご無沙汰をしているイギリスに行くことにしたのだが、きっかけは単に自分の好きなアーティストのライブがポーツマスであるというだけである。しかもなぜロンドンではなくポーツマスなのか。ロンドン公演が会場の事故で延期になり、振替公演は一旦キャンセルしたものの、後日サイトを見たらポーツマスのチケットだけはまだ残っていた、たったそれだけである。わざわざライブのためだけになぜそこまでしなければいけないのか。正直面倒な気持ちでいっぱいだが、そうでもしなければこの先10年、またロンドンに行かずに終わってしまうのではないか。ちらっとそんな風に思ったのだ。

10年後に果たしてまだ欧州にいるのだろうか、こんな疑問がふと湧き上がり、今行っておかないと後悔するような気がした。自分の「〜した方がいいのでは」という勘は割と的中することが多いので、毎年体調を崩す12月ではあるが重い腰を上げることになった。よっこらせ。いつまでこの思い立ったが吉日を実行できるのかもわからない。周囲でもちらほら体調を崩している人が増えてきた、そんな年齢である。明日どうなるかわからない、をモットーにできることはどんどん行動に移していこうと思っている。そんな2023年の師走。


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