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ヴィム・ヴェンダースの東京

今日は子どもたちと改装前のKino Internationalで「Perfect Days」を観た。お昼ご飯のあとに行くにはちょうどよい時間帯。うっかりドイツ語吹き替え版のチケットを購入してしまったが、まぁそれは仕方がない。ありがたいことにセリフが少なめだったので、思ったより違和感を感じなかった。あぁ、それでもやはり日本語で観たかったなぁ。

「うわ、ママ、日本語じゃないやん!意味ない!」とは息子。厳しいのである。「しょうがないけど、日本語の方がよかったわ、ママ」と優しめの娘。

お昼の上映回はドイツ語バージョン(DF)が多いのである。しまった。

正面入り口フロア

それはそうと、ヴィム・ヴェンダースの東京はどうだったか。この方、やはり街に住む人々に対する視線が非常に優しい。ストーリーについてはネタバレになってしまうので割愛するが、たとえば近所のおばあさんが早朝に箒で落ち葉をはくシーンとか、駅地下の飲み屋だとか、鄙びた銭湯だとか。良き時代の日本を丁寧になぞっている。スカイツリーや東京のビル街の俯瞰などがそれとは正反対の現代の東京としてスクリーンに映る。

子どもたちもテンポのゆっくりとした映像だったが、最後まで観てそれぞれに感想を述べていた。日本語で観せてあげたかったなぁ。やれやれ。

ひとりの中年以上の男性の丁寧な暮らしぶりが描かれているのだけれど、日本で生活するのであれば、彼のような暮らしになるのかな、なんて想像してしまった。職業がどうこう、というのではなく、暮らしぶり、という点において。

好きな音楽を聴いて、気になる古本を手に取る。植物の世話をする。行きつけのお店に行く。そういうささやかで丁寧な生活。

そんなのすぐに飽きちゃいますよ、と私を知る人には言われてしまいそうだが、一度くらいそんな生活をしてみたいと思うのだ。

「日々の暮らしって、どこにいても朝起きてコーヒー飲んで仕事して、というのは同じやんな。日本でもそれをやってみたい」、子どもたちにそう言ったら、「ドイツには缶コーヒーもコンビニもないで。それに日本はご飯がおいしいからなぁ!」と予想外の答えが返ってきた。

やりたいことはやってみる主義なので、タイミングを見計らって東京とは言わないが、たとえば大阪で同じようなことをやってみたいな、などと思わせるヴィム・ヴェンダースの東京を舞台にした映画だった。

レトロな内装

Kino Internationalもレトロな内装がとてもいい映画館なのだが、改装前に足を運ぶことができてよかった。


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