非難せずただ聞くだけ
今日は昼前に突風が吹いたかと思うと、一気に外が暗くなり、ゼルダの伝説に出てくるような激しい雷雨になった。そして、なんとなく外に出るタイミングを失ってしまった。雷雨のあと、一瞬だけ涼しくなったが今はまた蒸している。
変な天気のせいか、これまた明るくない話を一気に読んでしまい、ふと昔友人から聞かされたエピソードを思い出してしまった。なぜ今になって。はぁ。
「〇〇さん(私のこと)は善悪で判断しないで、ただ話を聞いてくれるからとても助かる」彼女はよくそんなことを言っていた。そして時折、「もう死にたい」と電話をかけてきたりもした。行けるときは彼女の下宿先まで行って、そこでまたとにかく延々と話を聞いていたように思う。ただ、毎回電話があるたびに駆けつけていたわけでもない。とにかくちょっと風変わりな人だったのだ。
そんな彼女に最後に会ったときに聞いた話にはどうしても納得が行かなくて、批判めいたことを言ったのか言わなかったのか。今となってはどういった反応をしたのかすら記憶にない。確かなのはその話を聞いたあと、こちらから連絡を取ることはなくなったように思う。もうベルリンに住み始めた頃だっただろうか。
「いや、それ犯罪だから」
彼女の言葉を聞きながらぼんやりそんなことを考えていた。
元来、他人にジャッジしたりアドバイスすることは極力避ける方だ。話したいことがあれば好きなだけ話せばいいし、不愉快でなければそのまま聞いて受け流すようにしている節がある。ただ、本当に大事に思っている人にはあれこれ言いたくなって嫌がられてしまったりもするので、対話というものはなかなか難しい。
彼女の話はいつも波瀾万丈で物語のようだったが今から思えばどこまでが本当でどこまでが嘘だったのかもよくわからない。でも、いくら心を許した友人でも話さなくていいこと、というのはあるのではないかと思う。また私が何も言わずに聞いてくれる、とでも思ったのだろうか。そうだとしたら、やはりどこかで罪悪感があったのかもしれない。ただ、余りにもあっけらかんと話す様子を見ていると、ちょっと背筋が寒くなったのだ。
もしかすると自分のことは特別だ、という意識がどこかで働いていたのかもしれない。そうでないかもしれない。風の便りに結婚をして息子がふたりいる、という話をあとで知った。
他人なんて外面だけでは何もわからないし、付き合ってみたところで結局のところは何もわからないものなのかもしれない。
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