がんのサイン2
卵巣がんのサインは便秘や発熱だけではなかった。謎の体調不良が立て続けにあった。
ある日突然、脚がちぎれそうに痛い日があって、仕事場まではなんとか脚を引きずって行ったが(片道1時間半)、帰りはどうにもこうにもならなくて都内からタクシーに飛び乗った。仕事が終わってから最寄りの駅までの、5分ぐらいの距離が歩けなかった。
その日は大好きなメンバーでの飲み会があったのだけど、とても行ける状態ではなく、それでも顔だけでも見たくてタクシーを待たせ、脚を引きずりながら向かった。
「ごめんね!また今度ゆっくり!」とだけ言って、またタクシーに戻った。
みんなが座っているテーブルに、まだお料理は運ばれてなかったけど、店内はチキンを焼いたいい香りがしていたことを覚えているから、まだ食欲はあったのだと思う。
富山に住む姉に、LINEで脚の痛みを報告すると
「なんかねぇ。心配やねぇ」と返信をくれていたのに、私は
「なんでもなるちゃねぇ」と、
加齢のせいとでもいうかのようなメッセージを送り、気に留めなかった。
卵巣がんと分かってから知ったのだが、腫瘍の位置によっては脚に痛みがでる人も稀にいるらしい。
『あぁ、あの脚がちきれそうな痛みは予兆だったのかも』と振り返って思ったが、それは、手術も終えて暫くしてからのことだった。
ほかにも、振り返ってみれば、あれもこれもと思い当たることだらけだ。
万年ダイエッターだった私が急激に痩せたのもそのひとつだ。体重として減っているのは気づいていたが、ショッピングに行った際に、下半身だけ妙に小さくなっていることに気づいた。
『あれ?7号がはける!』
MやLサイズの服がちょうどだった私が、突然Sサイズのパンツがスルンとはけるようになって、驚いた。
ただ、これもがんのサインだとは気づかなかった。なぜかというと、急激に仕事を増やし、生活を変えていたからだ。家族優先の中で仕事をしてきた私が、突然違うレールにぴょんっと飛び乗ったかのように、バリバリ仕事をしはじめた所だったのだ。そのペースは、結婚前を上回るほどだったし、お金にも余裕ができて、エステにも行き始め、定期的に身体を動かしてもいた。
だから、ただただ、『わぁ、やせた♪』と思っていた。
そういえば、エステのとき、マシンで下腹にあてると痛くて
「お腹は痛いからしなくていいです」
なんて言っていたこともあった。でも、これも、あとになって思い出したことで、その頃は、がんだなんて微塵も思っていなかった。
さらに、目が回りそうな毎日の中で、ある日、湯船につかってホッとしていると、お腹のなかでグニュグニュと何かが動くのを感じた。
瞬間的に
『あれ?妊娠した?」と思ったが、すぐに
『いやいや、生理も終わっているし、ありえない。身に覚えもない』と、まだそんなことを思う自分に妙に感心したりしながら、そのグニュグニュに意識を向けた。
その感触は、はじめて胎動を感じたころとそっくりで、かすかなグニュグニュだったのだが、それもまた、がんだとは1ミリも思わずに
『便秘が続いてるから、ガスでも動いてるのかなぁ」で、済ませてしまった。
がんのサインはまだまだあったが、長くなってきたから、また次回!
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