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【クラシック音楽】真夏の夜の「ウエスト・サイド・ストーリー」

N響の演奏会も、なんだかんだとなかなか行く機会がないのだが、NHKの「クラシック音楽館」では、定期演奏会を放送してくれるので録画して楽しむことができるのはありがたい。

今夜は、シンフォニック・ダンスがテーマのプログラム。前半は、かのバーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」である。

「ウエスト・サイド・ストーリー」には思い出がある。

かれこれ10年近く前になるだろうか。

ロンドンに出稼ぎ仕事のため滞在していた私の逗留先は、ロイヤル・アルバート・ホールから歩いてすぐの、とある大学の寮だった。夏季休暇で学生がいない期間、一般の旅行者に部屋を貸してくれるのだ。今ほどではないが、当時も夏の観光シーズンのロンドンのホテルは高かったから、本当に助かった。

7月の暑い夜だった。ちょうどサッカーのワールドカップが盛り上がっていて、同じ寮に滞在している、世界のあちらこちらからの旅行者も、食堂のテレビの前で歓声を上げていた。昔からサッカーにはどうも馴染めない自分は(これにはいろいろ理由があるのだが、ここでは触れないでおく)、思い立って、ひとりロイヤル・アルバート・ホールへ向かう。

行き当たりばったりで、とりあえず何かやっていればと思い、チケット売り場に着いた時には、もう開演ギリギリだった。チケット売り場で何をやっているかと聞けば、かの有名なミュージカル映画「ウエスト・サイド・ストーリー」をオーケストラの生演奏でやるという。本当は、本格的なシンフォニーでも聴けないかと思っていたのだが、狭くて暑苦しい学生寮の部屋に戻るのもためらわれた。

人気のイベントのようで、大きなホールだが、良席はあまり残っていないようだった。迷っていると、応対してくれた私よりずっと若い受付の男性が「ちょっと待って」とカウンターの下からチケットを一枚取り出した。どうやら、都合の悪くなった人が、受付に預けたものらしい。「どうせ無駄になるから」と気前よく私に暮れた。

よく覚えていないが、多分、三階席くらいだったと思う。少し角度がついて、画面は決してみやすいとは言えない席だったが、あの大きなホールいっぱいに響き渡るオーケストラの生演奏で見る名作ミュージカルは特別な体験だった。

終演後、チケットをくれた受付の彼にお礼を言おうと思ったのだが、会うことはできなかった。

これが自分の、ロイヤル・アルバート・ホール初体験。その後、Promsを含め、何回か通ったが、この時の初体験は、どうにも忘れようがない。コロナも一応の収束を見た今年こそ、またこのホールを訪れることができるだろうか。

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クラシック音楽館 N響 第1978回定期公演
2023年2月10日(金) NHKホール
放送日時 2023年5月14日21:00〜23:00 NHK E
指揮 ヤクブ・フルシャ
バーンスタイン 「ウエスト・サイド・ストーリー」からシンフォニック・ダンス
ラフマニノフ 交響的舞曲
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