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『食の歴史』著ジャックアタリを半分くらい読んで感想


図書館で借りてまるまる無料で読めるというのに、結局のところ冒頭数ページだけ読んで新品を通販で即買いした本書。ホヤホヤの新品だったのに、すでに破れたり、紙に焼き菓子の油が染み付いています。本は付箋だらけです

ザックリとした食の世界史が俯瞰できます。歴史て、こんなに興奮するんですね…! 日本語訳もとても易しく訳されていて読みやすい。人文、ノンフィクションは、本によっては専門用語が多く難しいものも多いのですが、この本はタイトル通り「食の歴史」が淡々と記されているので、人文ジャンル不勉強でも全然読めます。現在進行形で西田幾多郎やレヴィーストロース(原作)を積読している私でも読めてます。

だって「食べる」ことは、生まれたら全員が毎日欠かさず行っていることだから。誰でも食の知識は毎日更新されていって、無自覚に知識を積み立てているからです。いつも「食べて」いますが、食べる行為とは知的に溢れていると感じました。

以下感想は、半分くらい読んだ途中報告になります。

まず冒頭から驚いたのは菜食主義が紀元前からはじまっていたことです。

紀元前600年前から紀元前500年前ごろのインダス側流域においては、ジャイナ教の発展とともに菜食主義の実践が始まった。

『食の歴史』著:ジャックデリダ/訳:林昌宏P56

知識が不足していたせいか、菜食とは流行りだと勘違いしていました。紀元前から菜食を選択する人が、21世紀を刻んでも存在している事実に長い歴史の息吹を感じました。

ギリシア哲学には、健康という観点とは別の意味で食生活に関する指針があった。たとえば、ピタゴラスは動物愛護の精神から菜食主義者だった。人間の魂は動物の体に移るという考えから、ピタゴラスは、羊毛や皮の利用、そして動物の生贄にも反対した。

同書P77

同書には、真逆の主張をしているアリストテレスの記述もあるところが興味深いです。

ピタゴラスとは逆に、アレクサンドロス大王の家庭教師でもあったアリストテレスは著作『動物誌』において、生物の序列を述べ、動物には道徳心が欠如しているのだから、動物は食べてもよいと説いた。

同書P77

ピタゴラスの動物愛護には良い印象をもちますが、人間の魂が動物の体に移るというのがよくわかりません。この一文だけで理解するのは難しいですね。
対するアリストテレスの生物に序列をつけることには反対です。動物には道徳心が欠如していると言い切っていいのでしょうか…それも疑問です。
私の場合、肉は食べても良いという意見ですが、アリストテレス的な考え方で肉を食べるのは否定します。

フランス革命のときの食事情も考えさせられます。

1709年、フランスでは大寒波による飢饉により、当時の人口の3%に相当する60万人が死んだ。この飢饉により、パンの価格は10倍に急騰し、フランス全土で暴動が起きた。

同書P136

この時代だと、頑張って働いても食うに困りますね。例えばですが、もし仮に600円の牛丼が6000円になったらと考えると、働く意味ないじゃん、という気分になります。自暴自棄一直線ですよ。
だから、人々はフランス革命を起こして、飢饉をどうにかしようとした。しかし革命をするだけでは足りず、対策として“ジャガイモ”が登場します。しかし、それもひとくせあったようです。

ジャン=ポール・マラー[フランス革命の指導者の一人]は、ジャガイモを普及させるため、チェイルリー庭園を含め、パリの緑園帯でジャガイモを栽培させた。マクシミリアン・ロベスピエール[フランス革命の指導者の一人]は、ジャガイモに毒があるという理由からマラーの計画に反対し、ジャガイモ畑を破壊させた。

同書P138

21世紀版SNSに例えると、飢饉にはジャガイモがいいぞと拡散するインフルエンサーがいて、ジャガイモ栽培をすすめたが、逆に、ジャガイモには毒があるぞ、毒を食べさせるのか!! と拡散するインフルエンサーもいて、大混乱というイメージでしょうか。
どっちがデマで真実なんだ…と悩みそうですが、21世紀人からみると、どちらも真実なんですよね。ジャガイモの芽や緑の部分は、本当に毒があって絶対に食べてはいけない。しっかりと包丁で切り落として捨てる。
確かにジャガイモは毒があるが、生きるための栄養もある。食べるためには、正しい知識を蓄えておかなければならない。フライドポテトとか肉じゃがとかポテトサラダとか当たり前のようにジャガイモを食べていますが、先人たちの労苦があってこその、ポテト料理があると思うと…感慨深いです。

長い知的財産、苦闘した人類の歴史があるから、目の前の食を頂ける。食って、めっっっちゃ知の宝庫じゃないですか…

個人的な意見になるんですけど「食の形骸化」は危険だと感じています。なぜ食べないのか、なぜ食べるのか、それぞれ長く積み重なった文化と風土があるはずです。
自身の体もわからず、地元の歴史も知らず、ただ健康になるから、おいしいから、と食すだけでは物足りないと感じています。知識が詰まった毎日の「食」が、ただのエネルギーチャージでは寂しすぎます。

最新の医学的なことも大事ですし、長く続く食文化の伝統にも目を背けるにはいかない…と私個人では思うのですが。

ネットだけでは、事象と歴史をかき集めることができないと諦めていたので、食にスポットを当てた易しい歴史書があるのは、ありがたいし、単純に歴史にひきこまれます。紙の本の強みですね!

ほんの一部を抜粋してつれづれとかきましたが、全部読んだら、もう少しまとめて感想かきます。


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