#2 Mr.Children / 深海(1996.06)
Mr.Childrenの5thアルバム「深海」はPink Floydを意識したようなコンセプト・アルバム。タイトル通り暗く重い曲が多い。最初から最後までシームレスに繋がっている。レコーディングは海外で、アナログレコーディングを中心に行っている。当時ミリオンヒットを記録した6thシングル「Tomorrow never knows」〜 9thシングル「シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜」はコンセプトに沿わないため収録されていない。
○全曲レビュー
M1: Dive
水に潜るSE。この手法は前アルバム「Atomic Heart」でも使われている。やがて重たいチェロの音が流れ次曲へと繋がる。
M2: シーラカンス
このアルバムを象徴する曲であり、当時の桜井さんの心情を投影したような曲。
歌詞はシーラカンスに問いかけているが、逆に自分自身をシーラカンスに例えているようにもとれる。曲調はミスチルには珍しいヘヴィーなロック。ギターリフがたまらなく好き。
M3: 手紙
前曲とは打って変わって超がつく名バラード!アコギとピアノの美メロが切ない歌詞をより際立たせる。「Dive」→「シーラカンス」からの流れは最高すぎる。いつか弾き語りで聴いてみたい。
M4: ありふれたLove Story~男女問題はいつも面倒だ~
若い男女の恋愛の始まりから終わりを描写したような曲。"「愛は消えたりしない 愛に勝るもんはない」なんて流行歌の戦略か?
そんじゃ何信じりゃいい? 「明日へ向かえ」なんていい気なもんだ" という歌詞が今までの楽曲のスタイルを否定しているかのような感じだが、こういったちょっとシニカルな桜井さんのファンだったり。
M5: Mirror
このアルバムには数少ないポップな曲。
"そりゃ碌でもなくポップなんてものでもなく ましてヒットの兆しもない ただあなたへと想いを走らせた 単純明解な Love Song" という歌詞が印象的。前曲のシニカルさから一転した流れにはなんとも言えないけど。名曲なのは間違いない。
M6: Making Songs
数曲のデモ音源を断片的に繋げたもの。最後の「名もなき詩」のワンフレーズが流れ次曲へ続く…
M7: 名もなき詩
言わずと知れたミスチルの代表曲のひとつ。200万枚以上を売り上げた10thシングル。この曲のリズムパターンはBeatlesの「Ticket to Ride」からきたものなのか?
"成り行きまかせの恋におち 時には誰かを傷つけたとしても その度心いためる様な時代じゃない 誰かを想いやりゃあだになり 自分の胸につきささる"
この部分カラオケで何回練習したことか…
M8: So Let's Get Truth
長渕剛のものまねで弾き語る風刺の効いた曲。
アコギとハーモニカというシンプルなサウンドだがこれはこれで好き。曲の終わりにサイレン音が流れ次曲に繋がる。
M9: 臨時ニュース
テレビのザッピング音のSE。途中で「また会えるかな」のワンフレーズが聴こえる。そして次曲へ…
M10: マシンガンをぶっ放せ
このアルバムリリース後にシングルカットされるこれまた社会風刺曲。と同時にミスチルはロックバンドということを再確認させてくれる曲。"愛せよ単調な生活を 鏡に映っている人物を 憎めよ生まれてきた悲劇を 飼い慣らされちまった本能を そして事の真相をえぐれ"という歌詞が切れ味バツグン。
M11: ゆりかごのある丘から
9分という長尺だが、おなじ失恋ソングの「手紙」とはまた別の切なさがある曲。戦争を終えて帰ってきたものの、恋人はもう他の誰かのものになっていたといった内容。終盤のサックスがいいアクセントになっている。
M12: 虜
歌詞も音も重い恋愛をテーマにした曲。歌詞はドロドロとした昼ドラのような世界観。イントロのギターリフと終盤のゴスペル?的なコーラスが非常に印象深い。
M13: 花-Mémento-Mori-
11thシングル。暗く深い深海から見つけた救いの手のような曲。絶望から這い上がろうするポジティブな心情が歌詞から伺える。
"負けないように 枯れないように 笑って咲く花になろう"
M14: 深海
ラストを飾るタイトル曲。自殺願望を仄めかしたり、シーラカンスに(深海へ)連れ戻すよう頼むんだりと最後の最後にして暗い世界観。そして最後は、海から出たのか、それとも海にまた潜ったのかどっちともとれる水の音で終焉。
このアルバムは曲単体で聴くよりはアルバムを通して聴くことをおすすめします。というか、アルバム全体を1曲とみて聴いた方がいいかもしれません。売れた先には何も残らなかったり、当時の報道等で精神的に病んでいた頃の桜井さんから生まれたこの名盤は、本人からしたらやはり否定的ですが、これがなかったら今のミスチルは存在していなかったと思います。今のミスチルしか知らない人に聴いてもらいたいですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?