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なぜ、未亡人は美しく見えるのか? Chapter 1  世の中は「色」仕掛けに溢れている(3)

歳をとると自然が恋しくなるのはなぜ?

「自然の中で暮らしたい!」は色のせい

年をとるほど自然の中で暮らしたくなる。30歳代くらいの方々には理解しづらいことかもしれませんが、多くの場合、こうした現象は、40歳代となった頃から、ますます膨らむばかりです。これはかなり多くの皆さんの共通意識となるようです。
「海が見える高台で、いつかは暮らしたいよね。本当に気持ちいいだろうな」
といった言葉も、とてもよく耳にします。テレビ番組などで紹介される悠々自適でリタイアしたご夫婦も、まず間違いなく、緑豊か、広々と海が見渡せて、といったところを住まいに選ばれるようです。
反対に、「歳をとったら大都会で暮らしたい」と、田舎で暮らしていたご夫婦がわざわざ新宿あたりに引っ越してくる、といったことはあまりないようです。昔は街の風景、ネオン輝くビルや人の群れの中にいても全然平気で、むしろ望んでその中を泳ぐように過ごしていたものなのに、最近、緑の森の風景や広々とした海の風景がやたらに恋しい、いつも身近にあって欲しい。そんなふうに思うようになってきます。
静かな生活がしたい。もう都会のうるさい騒音の中で生活するのに飽きた。ゆっくり自分のペースで暮らしたい。
確かに、自然の中での暮らしを望む背景には、そんな「静かさ」や「優しいペース」、「広々さ」を望む気持ちが働いていることでしょう。
しかし、こんな壮年世代の切たる思いの裏側でも、実は「色」という要素が、私たちの身体の中で意外に大きく作用しています。
自然の、あの青や緑色そのものが、年齢を経てきた方々にとって、若い頃のお店のネオンのように、強い吸引力を持つようになるのです。

目も日焼けをする

メラニン色素というものをご存知かと思います。
あの日焼けの元になる存在です。
太陽光線が皮膚に当たることによって、皮膚表面に浮上し、肌をこんがり日焼けさせてくれる、あのメラニン色素です。日焼けした顔と身体に白い歯がキラリッ!と、なかなか見た目も素敵なものです。ただ40歳を過ぎた頃になりますと、日焼けは単なる肌のクスミの原因になってしまっていますが。
このメラニン色素、当然ですが、若い人たちを日に焼けさせて、かっこよくするのが本来の仕事ではありません。
肌を黒くすることによって、必要以上に当たる太陽光線が、それ以上肌の内部に届かないようにするのがメラニン色素の目的です。つまり、太陽光線を遮断して、肌の内部を保護する働きをしています。日焼けすることで太陽光線の約50%を遮断する、ともいわれています。
実はこのメラニン色素、肌の部分だけではなく、目にもあるのです。目も太陽光線によって日焼けしている。もちろんお肌と同じように真っ黒になるわけではありませんが、ごく弱いメラニン色素が働いて、目に必要以上の太陽光線が入らないよう、緩やかに遮断しています。表面に現れたメラニン色素は、普通ですと、その役割が終わると、お肌の新陳代謝とともに、少しずつなくなって、肌は元の状態に戻ります。
ただ、ご存知の通り、年齢を経てくると、完全に消えなくなり、メラニン色素がそのまま肌に残ってしまう、ということがあります。いわゆるクスミ、シミといった類のもので、多くの女性の悩みのタネにもなっています。
実はこのクスミと同じようなことが、目の中でも起こっているのです。
目に、消えきらなかったメラニン色素が少しずつ付着してクスんできます。すると何が起こるのか。肌と同じように、太陽光線が遮断されることとなります。ほんの何パーセントの光、それも太陽光線全体が遮断されるのではなく、遮断されやすい色の光が脳に届きにくくなります。
具体的には青、緑、紫といった色です。
人というのは不思議なもので、足りないものほど欲しくなる傾向を持っています。
今まで脳に届いていた青、緑、紫の色が少なくなると、今までと同じ量を欲しくなります。自然界の中でなかなか見つけにくい紫は別として、自然の緑、海の青を、もっともっと欲しくなります。つまり多くの緑や青を今まで以上にたくさん見て暮らしたいと願うようになるわけです。
すると、冒頭の「自然の中で、(青い)海を見ながら、豊かな自然(緑)に囲まれて暮らしたい」という望みが自然に現れてくるようになります。
お歳をめされて、突然髪をインコのように紫に染めたり、花屋の片隅で地味に控えている紫の花を好むようになる、といった現象も、同じことから来ているかもしれません。
目が、届きにくくなった自然の色を求めていたのです。
ですから、願いかなって海の近くなどに住みはじめると、もう後戻りはできないかもしれません。都会よりも強い陽射しの中で、目のメラニン色素もいよいよ活発に
働きだし、その結果、付着するメラニン色素も少しずつ増え、より青や緑が欲しくなります。
都会に出ると、なんだか目に映るものが殺伐と感じて、寂しくて、逃げ帰るように海の近くの我が家に帰る、といったことも起こるのかもしれません。
もし、お近くに子どもさんがいるようだったら、その目をよく覗き込んでみてください。特に白目の部分。ほとんどメラニン色素が付着していないその白目は、青みがかったきれいな色をしています。

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