私家版 ロックかるた 「ね」
どうしても欲しくて、でも売っていない。だから、自分で作ってしまった「私家版 ロックかるた ブリティッシュ・ロック編」。
世界にたった1セット。
クリーム。
ジャック・ブルース、エリック・クラプトン、ジンジャー・ベイカーの3人によるスーパー・グループ。
クリームという名前は「the cream of the crop」という慣用句に由来しているそうです。
当時、すでに最高のテクニックを持つと評価される3人が集まったのですから、クリームなのです。
文句なし、最高のバンドです。
面白いのは、このバンド結成時の逸話です。
新しいバンドを始めたいと考えていたジンジャー・ベイカーが、すでに名ギタリストとして知られていたクラプトンを誘います。
するとクラプトンは、ジャック・ブルースの加入を参加条件として提示します。
ベイカーはブルースの加入を承認。
しかし、クラプトンは知らなかったのですが、ベイカーとブルースは、犬猿以上に仲が悪いという間柄でした。
ジンジャー・ベイカーとジャック・ブルースは、同じバンド仲間だったのですが、ステージ上での喧嘩や演奏拒否など朝飯前。
ベイカーはブルースをクビにしましたが、彼は相変わらずライブ会場に現れ続けます。
最後は、ベイカーがナイフを持って「もう二度と来るな!」と、どやしつけたとか。
その相手と再び手を組めと、なにも知らないクラプトンが言うのです。
ベイカーもクラプトンの提案は拒否できません。
彼は、すでにロンドンの壁に「クラプトンは神」と落書きされている存在です。
そして、クラプトン同様、ブルースの実力を誰よりも理解しているベイカーです。
仕方ないね、クラプトンがそう言ってるのだから。
そう自らを納得させるのに長い時間は必要なかったのでしょう。
最強のスリーピースバンド、クリーム誕生です。
1966年、デビューアルバム『フレッシュ・クリーム』 (Fresh Cream) を発表。
68年には、3枚目のアルバム『クリームの素晴らしき世界』 (Wheels of Fire) で全米1位を獲得。
しかし、68年11月のロンドン公演を最後に、活動期間、わずか2年で解散となります。
ブルースとベイカーは、やっぱり仲が悪かったようですね。
その上、周りを無視して、ステージ上でも自分の音ばかりに没頭するようになってきたとか。
クラプトンは、
「自分が演奏を止めてもベイカーもブルースも気づかない」
と語っています。
もうダメですね。
解散後、クラプトンはいくつかのバンドを経験しますが、最後はソロ活動に専念することになります。
ブルースも専らソロ。
ベイカーは、リーダー気質でしょうか、いくつかのバンドを結成して活動を続けました。
人の言うことを聞かない独裁者ベイカー?
人の言うことを聞かない自由人ブルース?
……もしかしたら、そうだったのかもしれません。
クラプトンだって、結局バンド活動は長続きせず、です。
そもそも、固定されたグループの一員というのは無理なメンバーだったのかも。
この3人が一時的にせよ集まった。これが奇跡だったのかもしれませんね。
2014年10月25日、ジャック・ブルース死去。
ベイカーは「とても悲しい日だ。さようなら、俺の友人よ」とコメント。
また、ファン・クラブを通じて「素晴らしい男、ジャック・ブルースが亡くなったと聞き、とても悲しい…。この困難な時、彼の家族へ思いと祈りを」との声明が発表されました。
5年後、2019年10月6日、ジンジャー・ベイカー死去。
クラプトン、健在なり。
(つづく)