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なぜ、未亡人は美しく見えるのか? Chapter 4 街の中で見かける「色」の秘密を解明する(4)


黄色は注意というけれど

なぜ赤ではなく黄色?

信号や車の話で、赤は進出色で一番迫ってくるように思え、しかも色自体で注意を引き、事故の起きにくい色である、と解説しました。
それが事実だとすれば、逆に車から身を守りたい存在などは、とにかく赤い色にしておけばそれだけ安全なのでは、とも思ってしまいます。
特に子どもの小学校の行き帰り。親として「知らない人」の存在とともに心配なのが交通事故です。交通事故から子どもを守るため、車から見えやすく、事故の起こりにくいモノを身に付けさせます。しかし、実際に子どもたちが身に付けているモノを見ると、赤はあまり使われていません。明るい黄色などが定番です。ランドセルのカバー。小学生の帽子。そしてレインコートなども黄色が使われています。
黄色といえば、一番目を引く色彩というわけでもありませんし、むしろ相手をリラックスさせる効果を持つ色でもあります。
なのに黄色は、まさに車から身を守るための定番色になっています。

黄色と人間の目の関係

黄色が選ばれているのには、実は人間の目の構造に理由があります。
ちょっと難しい話ですが、とても面白いのでお話ししたいと思います。
人間の目には、光を調節するレンズの部分と、入ってきた光を人間の体内で使える信号に変換する部分があります。
この変換する部分の入り口が、視神経といわれる部分です。
この視神経は、明るいところで活躍する(つまり昼間が中心)錘状体と、暗いところで働く杆状体(かんじょうたい)という二つの部分から成り立っています。
錘状体と、杆状体は、明るいところと暗いところでそれぞれが得意な力を発揮して働いています。
明るいところで色を見分けることを得意とする錘状体。これに対して、暗いところで働く杆状体は、色に対しての感覚が弱く、暗くなってからもしっかり識別することが求められる青系統の色に高い感度を持っています。

夕方や明け方、なんだか世の中が青っぽく感じれた経験があると思います。これは暗いところで活躍する視神経、杆状体(かんじょうたい)が一生懸命に働き出し、色を感知する錘状体が活動していない状態なため起こる現象です。
昔懐かしいヒット曲に「パープルタウン」という曲がありましたが、これも視神経、杆状体の活躍のおかげでできたといえるかもしれません。
一日の終わりの夕暮れ時。日が徐々に落ちて、昼間から夜へと変わる時分。今お話した通り、視神経も昼間の錘状体から夜担当の杆状体へと仕事の担当を徐々に移行していきます(もちろんスイッチが切り替わるようにではなく、重なり合って働いています)。そうなると、色中心の世界から青中心の感覚に変わります。すると昼間はあんなにもはっきり主張していた赤が黒っぽく感じられあまり目立たなくなってしまいます。これをプルキニエ(プルキンエ)現象といいます。
そんな中で、目立つ色は何か。これはとにかく明るい色です。明るい水色、明るい黄色、あるいは白。その中で一番目立つ色が黄色だったのです。
その上黄色は、色の項目でご説明した通り、進出色と後退色の中間に当たる色で、自分との距離が一番正確にわかる色です。つまり黄色は明るくて目立ち、車に乗っている人にとって、自分との距離が正確にわかるもっとも安全な色であったわけです。
道路にある標識がはっきりとした明るい青なのも、実はこの夕暮れ時に起こるプルキニエ現象に配慮された結果です。次第に暗くなり青い色を感知しやすい杆状体がもっとも見やすい色であるためです。


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