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詩集#3

50
第三詩集です。
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2023年10月の記事一覧

【詩】月雫

月より滴るは赤い雫 この手が貴方を汚さぬように 月が涙を拾い 私の代わりに血を流す 月は…

【詩】逃避行

紫紺の空の下を 貴方とふたり 月から逃げて 逃げて 獣道を走っても走っても 月はどこまでも…

【詩】窓を開けよ

二人でいると 二人きりで生きてきたように錯覚してしまうから 窓を開けなければならない 世界…

【詩】はだいろ

肌色なんていう色はないから クレヨンから「はだいろ」がなくなって うすだいだいも ココアブ…

【詩】悪魔が来たりて

悪魔が忍び寄る もう玄関先まで来ている 私は、そいつが誰だか知っている そいつが悪魔だと知…

【詩】走る

走る デマが走る 軍人が、警察官が、ジャーナリストが、走る デマが走る 一般市民が、善良な…

【詩】声の降る

声が降る 君の声が降る それは 大地の底から沸き上がるマグマであり 天から降り注ぐ慈愛の鈴の音であり 全身を包んで疲弊を癒やすブランケットであり 体じゅうの細胞を覚醒させる解放であり 共に立ち上がって歩む光であり 日々の煩わしさをいっとき忘れさせる熱狂の渦であり これがあれば生きていけると思える支えであり どんなことでも起こり得る錯覚の源であり 絶望を絶望のまま抱えるための希望であり 日常を生き延びるための非日常的エネルギーであり いつもすぐそばにあり 永遠に手の届かない

【詩】小さいわたし

小さいわたしが泣いていた 声を上げるでもなく 体をよじるでもなく 物に当たることもせず 一…

【詩】感染拡大

生命とは、致死率100%の性感染症である と、どこかの医師が言った 新しいウイルスによる感染…