推しについて雑感
推しの新衣装を拝むイベントが先日あった。この人は私の推しだと認識して一年、面白い人だなと感じて一年半になる。と思う。
クリスマス前あたりからの疲れがようやく抜け始め、うっすら出ていた蕁麻疹が鎮まり、大変高威力だった供給になんとか助けてもらって今この文章を精査している。ありがとう推し、あなたがいるからなんとか頑張れた。シャープになった顔のラインを丸くしていくよ。
新衣装。私が推しを推すようになった頃には既に粗方(というのも変だけど)お召し物が出揃っていたため、こういう格好の推しが見たいけど叶わないだろうなぁ〜と、妄想はタダだから脳内でチャンパオ姿の推しを思い浮かべてニチャっていたところに、たいそう素晴らしい着物をあつらえてきた。羽織の紋や帯の意匠、根付、扇子の見せ方、チラリとだけ覗く羽織の裏の刺繍、何から何まで感嘆の息が漏れるほど粋で美しい。それを着こなして一つ一つ丁寧に披露してくれて、その方向性でいこうと決めた推しと、後押しした同僚と、デザインをしてくれたママ(そもそもの世に出る姿を形作ってくれた人をこう呼ぶ文化がある)には感謝しかない。ママすげえ、こんなに推しの良さをより引き立たせることが可能な人がいるんか、いるんだ。
しかし、衝撃を受けたのは別の部分だった。
普段は天然だかなんだかわからないが、パーマがしっかりかかっており、推しといえばくりんくりんの髪型である。別の衣装に合わせてオールバックにしていたり、ヘアバンドをしていても、髪にはウェーブがかかっているのがよくわかる。新衣装に合わせた髪型はそのウェーブがしっとりとして、降ろされ、更にセンター分けだった。ゆるーーーーいウェーブに落ち着いた、しっとりと降ろされたセンター分け。とてもいけない。
普段くりんくりんのパーマで視線が散らされていたことに気付かされ、しっかりとした男らしい顔の骨格が露わになる。顔の造形に変化はないはずなのに、メイクの効果だとしてもしっかり通った鼻筋と、僅かに無骨さが垣間見える顎のラインが明確になる。流し目がダイレクトに視界に入る。アイラインと(多分)マスカラ(かつけまつ毛)で隈取かと見紛う目に色気が滲む。あれ、推し、美しくないか…?
可動域にもおそらく工夫があり、体を傾ければ作られる科。扇子で顔の半分以上が隠れると流し目に艶かしさが迸る。あれ、推し、美しいな…。
ピエロを自称し、アイデンティティにもなっている白塗りの顔、口裂け女よろしくオーバーリップなんて目じゃないほど顔の端まで届きそうなほど引かれた柔らかなグリーンのルージュ、左目の下に描かれたパステルピンクの大きな雫。顔はピエロなのに色気や艶かしさが大爆発を起こしている。
でもそれは、推してきた文脈があるから刺さるものだと思う。
推しは一人で喋り続ける。初配信のときから既にそうだったらしいが、視聴者に話題を提供されなくても一人で喋る。日頃何考えてんだコイツと思わざるを得ない斜め上の発想から、あるあるネタまで一人で、話題を自分で生成して喋る。
推しは歌う。歌謡曲から特撮、J-POP、平沢進、オーケン、岡本靖幸、一介の、それでいて界隈では大きな箱に所属している者がそこチョイスするんだというようなジャンルの歌を歌う。そしてうまい。
自身で作成した初心者向けの動画は、それまでの配信の切り貼りではない。初心者向けの皮をかぶった、ファンも困惑する内容である。全編小ネタコント新作撮り下ろし動画(今で言うとshorts詰め合わせ)は今も疲れたときに見る。一年推してきた身が見てもよくわからない。
視聴者参加型?企画も、みんなのお母さんの作ったチャーハンの写真をください、実家で食べる鍋の写真をください、それらをみんなで見る配信をします。夜勤にまつわるエピソードをください、クリスマスに厳選して読み上げます。ちょっとだけすけべな香りがする怪談噺をください、48遍撰んで朗読します。なんだそれは。でも面白いんです。
そう、推しを推しているとなんだそれはの連続だ。ブチャラティみたいな身体で、ピンクとターコイズグリーンと銀色?薄紫?の三色のくりんくりんのパーマで、「なんだコイツは…?」をファンに絶対忘れさせない活動をしているから、今回の新衣装の、(頭見ると派手髪だし顔は白塗りだしアイメイクエグいし唇緑だけど)しっとりセンター分け粋満点色香百満点和装がブッ刺さったのだと思う。
推してこなかったら、今回の新衣装をたまたま見かけただけだったら、興味を持っても深掘りするまでには至らなかった。なんか見た目どうにかなってるけどかっこいい人がいるな、で済んでいた。推してきた文脈が、全てを輝かせる。推しってこういう存在なんだと初めて理解したと思う。
今回の繁忙期は本当に辛かった。日々が限界を極め、情けないことに買い逃したグッズが何点かある。再販される可能性があるものについてはそれを待つにしても、なんとも歯痒い状態だ。疲れたときの買い物はタガが外れやすい。容易く破産に至る可能性が高いときに迂闊に買わなかったのを少し褒めたいが、それはそれとして推しのグッズは欲しけりゃ買え。今後の推し活への反省点をきっちり噛み締めようと思う。あの時ポチったグッズが、未来の自分を救うこともあるんだぞ。
新衣装お披露目、ありがとうございました。
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