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手術当日

いよいよ手術当日だ。

私は本日の手術の順番3番目らしい。
先生、私の前に2人も手術するのかぁ。私のとき疲れちゃって、失敗っ!なんてないよね汗(どうも恐怖で、変なことばかり思う)

手術30分ほど前になると、病棟看護師さんに点滴をされる。
しばらくしたところで、さ、そろそろ手術室へ向かいましょう。と促され、点滴棒を自分でカラカラ押して恐怖の手術室へ。手術室まで歩いて行ける?と聞かれたが、どのくらい手術室まで遠いのかわからないので、曖昧に、、多分行けると答える。このとき、私は3分くらいしか普通には歩けないくらい、足が痛かった。

手術室に入ると、中に待機していた外科手術看護師さん達に、ワッと取り囲まれ、さぁさぁと椅子に座らされる。なんか人気者になった気分。奥には主治医の先生もいて、にっこりとこっちを見て笑っていた。手術着を来ている先生を見ると、あぁ、私、本当にこれから手術なんだな、とまたもや溢れてくる緊張感と恐怖。

ここで、病棟看護師→外科手術看護師に引き渡される。

看護師さん達に、体調はどうか、フルネーム、生年月日、今日はどこの手術をするのかなどと、決められている手順通りに質問をされる。事前に練習した通りに優等生チックに答える私。

とにかく看護師さん達、先生、みんなニコニコしてて、かえって怖い、、、。
きっと患者が緊張しないように、全員で笑顔対応をしてくれているんだと思うが。不意に、看護師の1人に「何か運動されているんですか?」と聞かれ、その質問が唐突だったので意図がわかりかね、え?裏返った声で返答をしてしまう。

「あ、、すごくスタイルがいいので、、、背も高いし運動されてたのかな?って、、」と看護師さん。

残念ながら、いいのは体格だけで、運動経験はないのだ。
背も高いし、色黒だし、まさに運動部をそのまま体現してはいるが、かなりの運動音痴。中学時代はブラスバンド部なのよ、ええ。

看護師さん達と、そんな雑談をしているうちに手術台に呼ばれる。

みんなが、不自然なほどにニコニコしている中で、麻酔医、君だけは正直だったと思う。ニコリともせずに、こちらをチラッと見て「〇〇さん、よろしくお願いしまーす」と無愛想に呟いた様がかえって麻酔の腕を信じられる気さえした。もちろん根拠はないが。

手術の開始が待ちきれなかったのか、この麻酔医。
手術台に私が仰向けになって、まだ主治医が手術開始とも言ってないうちから

「ねぇ、もう麻酔始めていーい?」と言ったりしていた。病院の力関係とか人間関係の相関図に疎い私も、麻酔医ってなんか、、、個性強くて、病院でも空気読めない人が、、なるのかな、なんて思った。麻酔医って、超失礼なことを承知で言えば、こだわりの強い変態っぽいというか。ええ、すみませんほんと。

そんな麻酔医に、がぽって口にマスクを当てられた後、私はあっと言う間にワープ。

気がついたら、看護師さん達が顔を見つめていて、先生がニコニコとこちらを覗き込んでいた。すっきりとした目覚めで、気持ち悪さもない。
よく寝た日の朝みたいだ。手術が終わったのだな。目が覚めたから無事なんだな。

「〇〇さん、終わりましたよー」と声をかけられ、
無意識に伸ばした私の手を先生がかっちり握ってくれた。なんか嬉しい。

そしてプラスチックケースに入ったものを見せてきた。
「取ったヘルニア見る?」と。

水溶液の中でゆらゆら揺れる椎間板ヘルニアは崩れた珊瑚礁みたいだった。
そしてクルクルと回る様はまるで海の中の生物みたいだし、なんか綺麗だった。自分の体の中にあったものだからか、愛おしくさえ思う。

お前かー!私を苦しめていたのはー。と思わず声が出る。
冗談ぽく言いたかったが、術後でうまく声がでず弱々しい声量で悪態をつく私に看護師さん達も笑っていた。

部屋まではベッドでカラカラと運ばれ、あっという間に自分の病室に到着。
まだこの時点では私も興奮状態だったのか、酸素マスク付いてる状態の自撮り写真とか撮ったりして、夫に送ったりしていた(夫は手術の日は仕事だった)。

母親にも送った。母は「まさか、手術当日にこんな写真を送って来るとは思わなかったよ!」と驚いていたが、いい顔してるね。と顔写真を見て安心してくれたみたいだ。私も、この写真は手術直後にしてはいい顔していたと思う。
安心感に溢れているというか。

しかし私は知らなかった、この後に来る術後2日間の苦しみを。地獄だぜー

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