Raysから学ぶ組織力と戦術論
MLB(メジャーリーグベースボール)のレギュラーシーズンは佳境を迎えている。
地区優勝、はたまたワイルドカードでのポストシーズン進出を目指して、一戦一戦の重要度が増している。そんな中、アメリカン・リーグ東地区をTampa Bay Rays(タンパベイ・レイズ 以下Rays)が今年も現地9月17日現在2位に8.5ゲーム差をつけて独走している。といっても、レベルが高いリーグでのこの数字は称賛に値する。
順位 チーム 勝敗 ゲーム差
1 Tampa Bay Rays 92勝56敗 -
2 Boston Red Sox 84勝65敗 8.5
3 New York Yankees 83勝65敗 9.0
4 Toronto Blue Jays 82勝65敗 9.5
5 Baltimore Orioles 47勝100敗 44.5
昨年も、レギュラーシーズン60試合制であったが、2位に8ゲーム差をつけての地区優勝で、その勢いそのままアメリカン・リーグチャンピオンに輝いた。
そんなRaysの強さの秘訣は組織力であると断言することができる。
Raysは同地区のYankeesやRed Soxと異なり、お金のないチームである。30球団で見ても、チーム総年俸は下から数えて五番目である。
ちなみに、Rays、Yankees、Red Soxの総年俸はそれぞれ7,100万ドル、2億100万ドル 、1億9,300万ドルである。
つまり、Raysは大谷翔平選手のようなスター選手がいるわけではない。それでも両リーグ最多の得点をマークしている。
Raysはどのチームよりも勝つためのメンバー編成を行う。そのため、毎試合打順やメンバーが異なる。四番でホームランを打っていた選手が翌日スタメンから外れることも珍しくない。
一体何人ベンチ入りしてるんだと錯覚するぐらい目まぐるしく顔ぶれが変わる。しかも、その選手が出場しても平均以上の打力があるため、どこからでも点が取れる。
また、奇襲ではなくなってしまったが、常識に捉われない戦術をさも当たり前のように慣行する。
今となってはほとんどのチームで採用されている、初回にリリーフ投手を登板させ、2回から3回に本来の先発投手を起用するオープナー。
オープナーの発展系で、9イニングすべてリリーフ投手のみで継投するブルペンデー。
これらはお金のないRaysが知恵を振り絞った戦術であり、比較的コストの安い過小評価されているリリーバーを多く獲得することで、威力を発揮している。
さらに、Raysは先行投資が巧みである点も素晴らしい。
2018年、オープナー戦術を御披露目したわけだが、シーズン途中に当時のエースを放出し、まだ実績のない若手有望野手を獲得した。この時点で計算できる先発投手は一人しかいなかったが、オープナーやブルペンデーを駆使しながら、若手先発投手を育成した。ちなみに、この年はオープナーとブルペンデーを使い始めてから順位が上がり、地区2位で終えていた。また、この年獲得した若手有望野手は翌年に覚醒した。
昨年オフにトレードでエースを放出し、後任エースもシーズン途中に長期離脱を余儀なくされ、絶対的なエース不在の中でチーム防御率はリーグ上位である。
そして、まだ実績のない弱冠20歳の若手有望ショートをメジャーデビューさせるために、ショートの選手をトレードで放出し、枠を開けた。人気お笑い芸人MCを違う番組のMCに移動させて、まだテレビに出たことない若手有望お笑い芸人を大抜擢するようなものだ。その選手は期待に応えて、現在大活躍中である。
他にも外野四人シフトやリリーバーオールクローザー理論(筆者命名)などユニークな戦術を取り入れているので、とにかく目が離せない。
久々にMLBについて語ってみました!
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