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黒人の親が教える、警官への接し方

全米で引き続き「BLM」(blacklivesmatter)のデモや運動が続いている。

日本では衝撃的な暴動の映像が報道されるけれど、どれだけ多くの人が激怒しているのか、そのベースにある問題が実感として伝わりにくいのではないかと思う。

ブラック&ブラウンコミュニティ(おもにアフリカ系とメキシコ系の住民)が、いままでどれほど警察から不当な目にあわされてきたか、ちょっとしたことで警察につけまわされ、ちょっと間違うと刑務所に入れられるという恐怖を味わってきたか。その痛みを積極的に共有して連帯しようという動きが、今回は白人社会にも大きく広がっている。

トランプ政権になってから先鋭化したヘイトやレイシズムが、危機感を高めているのだと思う。

差別の構造が奴隷制廃止以降えんえんと続いているのに加えて、レーガン時代以降、警察の装備がミリタリー化し、「対ドラッグ戦争」の中で有色人種がターゲットにされて刑務所に入れられ、その結果、親のない子どもたちがまた犯罪に走るという悪循環のなかにブラックコミュニティは生きてきた。

まったく同じことをしていても、白人と黒人では警察に引っ張られる確率が全然違う。

だから黒人の親たちは、警官に職務質問されたときに決して生意気な口をきいたり逆らったりしないように、小さいうちから厳しく子どもに教えこむ。当たり前であってはいけないことが、何世代にもわたって当たり前のことになってきた。

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本当はあってはいけないはずなのに黒人社会では常識になっている会話を描いた、とっても優れた動画黒人の親が教える、警官との接し方」をインスタグラムで見つけたので、勝手に翻訳してみた。
5分くらいの動画なので、ぜひこちらで見てほしいです。

映像制作会社CUTの作ったもの。
以下、拙訳です。

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親子1(父と小学生の娘)

父「ウチではいつも、(警官に言う)セリフを練習してるんだ。
(子どもに向かって)何ていうんだっけ?」
娘(両手をあげて)「わたしの名前はエリアル・スカイ・ウィリアムズ。8歳です。武器はもってません。あなたを傷つけることはしません」
父「いつもこうやって練習してるんだ」

父「世の中には素晴らしいおまわりさんもいるけど、中にはあんまりよくないおまわりさんもいるんだよ」

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親子2(母と10代の娘)
母「わたしの心配は、そういう良くない警官にあなたが出くわさないかっていうこと」

親子3(父と中学生の娘)
父「どういうわけか、肌の色が濃い人たちは警官のターゲットになりやすい」

親子4(母と小学生の息子二人)
母「警官になる前は、みんな一人の人間でしょ。みんな、自分の考えや偏見を仕事に持ちこむんだね」

親子2
母「あなたが何か悪いことをしたって警官が考えるのは、どうしてだと思う?」
娘「………わたしの肌の色のせい?」

親子1
父「前に、何にもしてないのに、手錠をかけられたことがあったんだ。
ショッピングモールを歩いてただけだった。
警官に床にたたきつけられて、唇が切れた。
前歯も欠けちゃったんだ。すごく腹が立った」

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親子4
母「一度、車に乗ってて警官に停められたことがあったわね。
わたしが運転してて、逮捕された。あんたたちが車の中にいて、ほかには誰も運転できないのに、道ばたで。バンパーがちょっと外れかかってるっていう理由でね。バンパーなんか全然ない車を運転してる人だってたくさんいるのに」

親子2
母「わたしの車のブレーキライトがついてなかったって言われた。
目的地に着いて見たら、ちゃんと点灯してたのよ」

親子3
父「ちょうどお前くらいの年のときだよ。(警官に)拘束されたことがあった」
娘「どうして」
父「わからなかった。ただひっつかまれて、パトカーに押し込まれたんだ」

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親子1
父「その時、スタンガンを使われたんだ。おとなしく従わなかったっていうのが理由だった。
スタッフ「エリアル、大丈夫?」
(娘、泣き出す)
父「どうしたの。(娘を抱き寄せる)
大丈夫、ちゃんと生きてるだろう?毎日、こうやって会えてるしこうしてるじゃないか。(ハグする)
大丈夫、落ち着いて。僕まで泣けてきちゃったよ」

親子4
母「外に出たら気をつけなきゃならないの。世の中には誠実じゃない人、あなたをフェアに扱わない人もいるから。
(年少の息子に向かって)ショーン、あなたはあたしたちより肌が白いから、警官に停められることはないかもしれないわね」

親子5(10代の息子と母)
スタッフ「警官に車を停められたらどうするかやってみて」
母「オーケー。あなたが運転してて、警官に停められたらどうするの?」

親子3
父「警官がパトカーを下りてきて、窓をトントンて叩いたら。どうするの?」

親子6(10代の娘2人と母)
母「(警官の役をして)免許証と車検証を出してください」

親子4
息子2「(警官の役で)どうして停められたと思う?」
息子1「わからない。教えてよ」
母「警官が何か言ったときには…ダメよ、あなたは黒人なんだから、そういうふうに相手を見て『わからない。教えてよ』なんて言っちゃいけない」
息子1「でも……」
母「それだけで、あなたを車から引っ張り出す許可証をあげちゃうことになるの。暴力をふるわれるかもしれない。そういうことが起きるんだよ」

親子2
母「怒っちゃダメ。生意気な口をきいてもダメ。『なんで停めたの』なんて言い返したりしないで、指示に従いなさい。落ち着いてね」
娘「オーケー」

親子6
母「車を停められたら、その警官に敬意を示す必要があると思う?警官だからっていう理由だけで?自分が何かしたかどうかに関係なく?」
娘2「それは……難しい質問だな」
母「答えは…」
娘2「…イエス!」

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親子5
母(両手を挙げて)「身分証明書を出すために財布を取るときには、『後ろのポケットに証明書が入ってるから、取っていいですか?』って聞きなさい」

親子2
母「こうやって、両手を見せて。手には何も持ってないことがわかるでしょ」

親子1
娘「(両手を見せて)わたしは、エリアル・スカイ・ウィリアムズ。あなたを傷つけるようなものはなにももってません」
父「それで、手はどうするの?運転して車にいる時には?」
娘「(両手を頭の上に乗せる)」
父「それか、ハンドルに乗せるんだ。両手を見せてね」

親子5
(警官に話すロールプレイを続けて)
母「『電話をオンにしてもいいですか?』」
息子「(両手を挙げたまま)『電話をしたいんです。音声をスピーカーにして通話します』」
母「何をするときも、必ずそれを口に出して言いなさい。動く前にね」

親子4
母「どんなステートメント(供述書)も書いちゃダメよ」
息子1「でも書かなきゃいけないでしょ」
母「いいえ、あなたは書く必要ないの。あなたは未成年だから、責任はあたしにある。誰にもあなたに何をしろっていうことはできないの」

親子2
母「おとなしく…できるだけ静かにして、とにかく出来る限りの手を尽くして、わたしに連絡してちょうだい。
気が重いよね。あなたにそんな思いをさせたくないんだけど…」
娘「ドノヴァンのことが心配なの(泣き出す)。心配…」
スタッフ「それは誰のこと?」
母「わたしの甥。この子の従兄弟のこと」
娘「撃たれたり、刑務所に入れられたりしてほしくないよ…」

親子3
スタッフ「警官に何かメッセージを言うとしたら?」
父「人について学んでほしいし、問題について知ってほしい」

親子6
母「多様性についてのトレーニングを受けてほしい。
今の状況なら、毎月必須にすべきね」

親子4
母「もう今では、何をしてくれたらもうちょっと安心できるとかそういうレベルじゃないね。もう全部最初からキレイに片づけて、最初からやり直さないことには」

親子2
母「(警官が)みんな悪い人ばかりだって決めつけてもダメよ」
娘「うん。…でもニュースや新聞で見ると…何度も何度も同じことが起こってる。違う形で。人は『許しなさい』っていうけど、また起こる。
許しても、同じことが何度も起こると、どんどん許すのが難しくなるよ」

++++++++++++++ここまで++++++++++++++

警官による暴力や不祥事があった際に、責任を追及でき、罪を問えるようにすること。
群集鎮圧用に導入された警察の過剰な装備を削減すること。過剰な暴力を使わないポリシーをどの警察にも徹底すること。

今、デモ参加者とそれに共鳴する人が求めているのは「レイシズム撤廃」「差別の是正」といった大きな目標だけでなく、警察の具体的な改革でもある。


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