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マサチューセッツからの友人

アメリカから帰国し、ゴールデンウィークも後半に入る頃、ある連絡が来た。
アメリカでツアーをしていた時にマサチューセッツ州のノーサンプトンで対バンをしたバンドのメンバーからだった。”今、日本に遊びにきているんだけど会わない?”という内容でした。その連絡に僕らはとても驚いたし嬉しかった。

アメリカをツアーしていた時、マサチューセッツという場所はとても思い出深い場所でした。マサチューセッツと言えばダイナソーJrやピクシーズを生み出した州です。初めてのツアーでマサチューセッツの日程が決まった時はワクワクしていました。初めて演奏したのはノーサンプトンという街のクラブでした。ニューイングランドと呼ばれているこの州らしく、この街は古いヨーロッパのような街並みが残っていて、最初に入ったカフェにはアーティストっぽい人も多く活気があるように感じました。その日のライブはステージはなくフロアでの演奏でしたが、人がぎっしり入ってすごい熱気でした。自分の目の前で踊り狂っている人たちを見ながら演奏するのは本当に楽しいことでした。それ以来ノーサンプトンやその近郊のマサチューセッツの街には何度かツアーに行きました。その時対バンしたBlood Mobileというバンドはダイナソーみたいでかっこよく、音楽の話でも意気投合できました。そのバンドとはその後何度も対バンしました。昔のブログで書きましたが、マサチューセッツの郊外の一軒家の地下でやったハウスショーは僕にとってはカルチャーショックでした。週末、庭で焚き火をしながら、地下室では爆音の音楽が流れています。上の階ではそれぞれが音楽を聴きながらお酒を飲んだり駄弁っていたりします。こうやって週末を夜中まで楽しく過ごすのかという光景を見て、僕はアメリカン・オルタナの真髄を見た思いでした。不思議なもので、ちゃんとした音響もないような普通の家(と言ってもかなり広いですが)の地下室なのに、音がいいんです。ノイジーでぐしゃぐしゃでラウドで。演奏していてとても気持ちがいいのです。僕は一人で妙に感動していました。こんな風に語り始めるとキリのないマサチューセッツという街なのですが、思い出話はまた後日。

そのバンドのメンバーからの連絡だったのです。

彼女たちは新宿に滞在しているとのことだったので、新宿で待ち合わせました。
連休の夕方の新宿は、道ゆく人の半分以上が海外からの人たちでした。ちょうどアメリカから戻って、アメリカが懐かしく感じていた時だったので、妙な安心感を感じたりしました。無事会えるかどうか心配でした。なにせ5年ぶりくらいです。お互い顔を覚えているのかどうか。しかしそんな心配は杞憂でした。すぐにお互いを認識し再会を喜びました。食事をしよう、となったものの大変でした。どの店も空いておらず、結局とんかつのレストランで1時間以上待ってようやく入ることができました。待っている間、たくさんの思い出話に花が咲きました。前述のマサチューセッツの話はその時にも思い出していたものです。色々な話をしました。音楽、映画、政治、経済など。アメリカの誰と話してもこれらのテーマは定番です。
食事の後、新宿のバーに行きさらに話しました。ビールを飲みながら、つい先ごろバッファローで感じたことをまた思い出していました。
こんな風にアメリカの友人が随分できた。それも結局音楽で繋がることができた人たちなのです。5年の歳月も関係ない。そう考えるとすごく不思議な気もするし、当たり前のようにも感じる。だって自分たちの表現を全力でやった上でできた友人なのですから、繋がりは途切れないのです。終電までたくさん談笑をして別れました。

バッファローから帰ってきて数日後に東京でマサチューセッツの友人と会う。
とても不思議で面白い現実。
またいつか対バンをしよう!と握手をして別れました。
音楽で生まれる繋がりの深さを改めて感じた夜でした。


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