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スティーブ・アルビニ Steve Albini

その人は「音」の人であったと思う。
ミュージシャン、ギタリスト、サウンドエンジニア。
音楽に生きる人というのは様々であるけれど、
彼は「音」の人だったと思っている。

彼が自身のバンドで鳴らすギター。
彼がエンジニアとして創造した音楽。
僕がその何に魅了され、打ちのめされ、憧れ、ぶっ飛び続けたかと言えば
それは「音」そのものだった。
一度聴いたら忘れられない音。
いや、忘れられないなんて生やさしい言葉ではない。
脳に突き刺さり、頭の中をえぐられるような音。
BIG BLACKのギターの音を始めて聴いた時の衝撃。
確かにギターの音である。エレクトリックギターの音である。
わかっている。わかっているのに出てくる言葉は
「何だこの音!?」
それを耳障りな汚いノイズとして嫌悪する人もいるだろう。
僕は全く逆だった。完全に打ちのめされて虜になった。

SHELLACを始めて聴いた時。
「何だこの音!?」
生々しくむき出しのバンドの音。強烈なドラムの音。深い奥行き。
狂ったようなギターの音。あまりにもカッコ良すぎた。

彼にはギタリストとして彼にしか出せない完璧な音があり、
サウンドエンジニアとして彼にしか作り上げることのできない確固たる技術があった。まさに技術者であり職人。卓越した技術をもっていた最高のエンジニア。
彼は天才とか才能とかそういう言葉で形容されるのは嫌なのではないのかなと勝手に想像している。
彼が録音した数々の名盤から僕は巨大な影響を受けてきた。
彼の仕事はクールで素晴らしかった。

音楽を成立させるものは何か。様々な要素がある。
楽器を演奏する技術、曲・メロディを生み出す能力、リズム感、そして音そのもの。音そのものとは何か。
金属や皮、木、プラスチックなど様々な物質が叩きつけられたり、こすられたり、弾かれたりすることで生まれる波。それが音。
人間の脳には耳から入ってくるある特定の種類の音を鼓膜や骨で感じた時「心地よい」と捉えて最高の快感を感じるはたらきがあるのだろう。
彼の生み出す音は僕に最高の快感をもたらしてきた。

音が周波数によって音階というものに定義される以前の音そのもの。サウンド。
演奏のテクニックのレベルやメロディの良し悪し以前の音そのもの。
そのバンドが、人が鳴らしている「音そのもの」。
それをテープというメディアで完璧に記録し続けてきたのがアルビニというエンジニアの仕事だった。
その技術は彼の死によって永遠に失われてしまった。
彼の鳴らすギターの新しい音ももう聴くことはできない。
彼のシカゴのスタジオでレコーディングをしたいという僕らの夢は失われた。
こんな悲しいことがあるだろうか。僕は巨大な喪失感に打ちのめされながら、彼の仕事への最大級の賛辞を送りたい。

彼の残した偉大な仕事・作品群は今日も僕の脳をかき回し刺激を与える。しびれさせる。そして考えさせる。
良い音とは何なのか。
カッコ良い音とは何なのか。

スティーブ・アルビニ。
音楽にとっての宝であったと思う。
感謝と賛辞を送りながらご冥福を祈ります。
最高に汚く下品で美しいエレクトリックギターノイズを本当にありがとう。







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