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朗読劇「もう一度君と踊りたい」


台詞は少ないのに、彼がこの役で良かったと思わされたことがなんだか悔しかったです。



こんにちは、柚希泰夢です。先日、オンライン配信のBOOKACT「もう一度君と踊りたい」を観ました。今回のnoteではその感想を、主に登場人物と役者さんメインで書かせていただこうと思います。

今回の記事では幾つかの台詞について言及する程度ですが、次回の記事はがっつりネタバレいたしますのでご注意ください。



二人のアーティスト

この朗読劇を観るに至った理由は、また岩谷翔吾くんと長谷川慎くんの演技が観たいという単純なものでした。映画「チア男子」での岩谷くんの感情をあらわにするシーンがとても心に残っており、それに加えてシンプルに笑顔が素敵な人だな、という印象があって。

また、長谷川くんに関しては他の記事で紹介しているように大好きなドラマ「主人公」で池田勇次郎というとてもお気に入りの役を演じていて、彼の演技そのものというよりは、池田勇次郎ではない彼に興味がありました。


岩谷くんと長谷川くんはTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEというLDH所属のアーティストで、この劇もLDHが企画をしているそうです。そのためか劇の内容は駆け出しの若いダンサー5人を描いたものでした。加えて実際に下積み時代から共に活動していた5人(ミラクルズと呼ばれていたそうです)が配役されており、キャスト陣にとってもかなり思い入れの強い公演だったようです。

正直あまりこの辺りの事情には詳しくなく、彼らを昔から応援しているファンでないと楽しめないのかな、という心配もありましたがそれは杞憂に終わり、「もう一度君と踊りたい」を純粋な作品として、楽しむことができました。

後述の通り脚本というか、プロデュースの仕方については色々思うところもありましたが、とにかく何よりも、彼らの演じる登場人物達の存在感と、期待していた岩谷くん演じるおがぴーがとても良かったんです。そして、朗読劇という形式の面白さを知れたのも大きな収穫でした。



朗読劇とキャストの人生

個人的な話になりますが、自分は数年の朗読経験があり、観劇も好きです。しかし、朗読劇を観るのは今回が初めてでした。小説とも劇とも異なる、朗読劇のための脚本のカタチはとても興味深かったです。

特に印象に残っているのが、藤原樹くん演じるりんちゃんと長谷川くん演じるたーちゃんが公園で話すシーンです。


“自分の話をした。この日初めてなのに、初めてな気がしなくて”
“初めて会ったのに、初めてな気がしなくて、自分の話をした”


朗読劇だからこそ使える、小説でいう"地の文"の言い回しの重ね技!小説でやってもまどろっこしいだけですし、劇でテンポを作るのは会話メインです。朗読劇でやるからこそ良いテンポを作り、しかも人物二人の心情の重なりがよく伝わる最高の台詞だと思いました。音響も合わせてこの台詞が作ったテンポを活かして、幾つかの"地の文"が二人によって次々と繋がれていくのも、二人が打ち解けていく様子を上手く演出していて素敵の一言に尽きました。朗読劇ってこういうことか!!!とこの時点でテンションMAXです(笑)


このような所謂“地の文"を読むのはこのりんちゃんとたーちゃんの二人です。メインはりんちゃんですね。彼は特に展開に合わせて心情の変化が大きかったのですが、しっかりと藤原くんの演じるりんちゃんが確立されていたためブレがなくて良かったです。内向的なタイプに見えるのに後半激昂していますが、それでも「あありんちゃんだなあ」と思えました。あまり感情が出にくい目をしている、というのもあったかもしれません。

自分と同じダンサーを演じるということで、他のキャストもかなり感情移入していたのだと思います。まっすぐな感情表現が多く、登場人物の存在感、生々しさが強く伝わってきました。



ただ、キャスト陣の感情の乗り方に関しては色々リスキーな部分もあったと思います。最初に書いた通り、この脚本は事務所所属のアーティストの経験とオーバーラップしていくところが一つのポイントになっています。だからこそキャストは感情を強くのせて朗読をしていますし、本人にとってもファンにとっても心に残るものになるのだと思います。でも、その売り方ってなんか、それこそ劇中に出てくる”大人”のやることだよなあ、と。

デリケートな展開を含みますし、演じている側が自分の経験を消費、エンタメ化されているように感じてしまうのではないか、辛い経験と重ねてしまうことに上手く折り合いが付けられるのだろうか、など、完全に脚本をキャストの人生に被せにいっているからこそ少しひっかかる部分はありました。ただこの懸念は観る側の想像の域を出ないので、キャストがどう思っているかは分かりませんし、この辺にしておきます(笑)



朗読劇ならでは、という点でもう一つ印象的だったのが、個々のキャストの台本の扱い方でした。

”地の文”を読む藤原くんと長谷川くんはしっかり朗読しているような感じでしたが、ごっちんを演じる佐藤大樹くんとおがぴーを演じる岩谷くんはあまり台本を見ておらず、その違いも面白かったです。特に藤原くんはりんちゃんとして”朗読”するのが上手くて…どう上手かったのかは表現できないのですが、とにかく凄く良かったです。そしてりんちゃんの感情が昂っていくにつれてたーちゃんの”地の文”が減るの、本当にずるいと思います。りんちゃんの感情の勢いに押されていることが表されているようで…描写が少なくなっていく彼の胸中を思うと……ずるいです、本当に(笑)


また、彼らの本領発揮である最後のダンスシーンもとても良かったです。まず、台本を置いて、ダンスの位置につくまでがダサくならないことにびっくりしまして(笑)

徐に立ち上がって、座っていた椅子に台本を置いて、幾つか台詞を言ってからゆっくりと移動する。そこに劇的な演出があるわけでもないのに、何故か様になっていて…ステージに立つ人って凄いですね。5人が気持ちを込めて踊っているのが伝わってきて、朗読劇の一部として馴染んでいた気がします。役として踊っていた、そんな気がしました。

劇中歌の「もう一度君と踊りたい」も柔らかくて、あたたかくて、でもどこか切ない雰囲気で、劇の随所で、そして最後のダンスで使われるに相応しい、そんな歌だったと思います。



岩谷くんの演技

さて、今回一番のお目当てだった岩谷くんについてですが、結論から言うとやっぱり物凄く好きだなあ、と思いました。今回の役、おがぴーは他の方に比べ台詞数が多いわけではなさそうで最初は少し残念だったのですが、後半からは岩谷くんがおがぴーで良かった…と心から思わせられて。

勿論他の役の岩谷くんも観てみたいですが、事務所から選ばれなかったことについて本音を吐き出すおがぴーが本当に良くて、ハッとさせられました。「チア男子」を観た時も感じましたが、岩谷くんのみせる「悔しさ」が本当に好きです。表情と揺れる声の質感がマジで本当にめちゃくちゃ心から好きで!!(笑)

自分はこの朗読劇で他の役を演じた岩谷くんを知らないから言えるのかもしれませんが、岩谷くんの演技を楽しみにしていた者として、台詞は少ないのに、彼がこの役で良かったと思わされたことがなんだか悔しかったです。それぐらい素敵でした。本業はパフォーマーさんですし難しいとは思いますが、これからも色々な作品に出て欲しいなと思っています。




さて、長くなったので今回はこの辺で。次回は各々の登場人物への想いをぶちまけたいと思います(笑)ここまでお読みくださりありがとうございました。

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