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#2 日本放送協会

正式名称

日本放送協会にっぽんほうそうきょうかい
NIPPON HOSO KYOKAI

略称

NHK
エヌ・エイチ・ケイ

設立

昭和25年6月1日
放送法に基づく日本放送協会の設立日

放送局所在地

東京・渋谷と全国の道府県庁所在地などに計54局

業務内容

  • 国内放送(総合テレビ、Eテレ、BS、BSプレミアム4K、BS8K、ラジオ第1、第2、FM)

  • 放送と受信の進歩発達に必要な調査研究

  • 国際放送

  • その他、放送法に定められた業務

職員数(2022年度)

10,343名


根拠法

電波法 昭和二十五年法律第百三十一号
放送法 昭和二十五年法律第百三十二号

契約種別

地上契約

地上系によるテレビジョン放送のみの受信についての放送受信契約

衛星契約

衛星系及び地上系によるテレビジョン放送の受信についての放送受信契約

特別契約

地上系によるテレビジョン放送の自然の地形による難視聴地域又は列車、電車その他営業用の移動体において、衛星系によるテレビジョン放送のみの受信についての放送受信契約

受信料額

令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画より主な月額を示す

沖縄県を除く地域

・地上契約 月額 1,100円
・衛星契約 月額 1,950円
・特別契約 月額 860円

沖縄県

・地上契約 月額 965円
・衛星契約 月額 1,815円

令和4年度決算

【図1】日本放送協会の令和4年度決算|会計検査院

日本放送協会(NHK)は以下、協会という。

協会の資産

図1によると協会の資産は、1兆2,973億19万1千円である。

協会の負債

図1によると協会の負債は、4,107億7,084万3千円である。

協会の純資産

図1によると協会の純資産は、8.865億2,934万8千円である。

協会の事業収支剰余金

一般企業で言う当期純利益に当たる事業収支剰余金は、図1によると285億8,478万6千円である。

事業収支剰余金の取り扱い

放送法第七十三条の二の定めにより、還元目的積立金として積み立てなければならない。

協会は、毎事業年度の損益計算において第二十条第一項及び第二項の業務(前条第二項第一号に掲げる業務を除く。)から生じた収支差額が零を上回るときは、当該上回る額のうち総務省令で定めるところにより計算した額を還元目的積立金として積み立てなければならない。

放送法 第七十三条の二

前条第二項第一号に掲げる業務を除く。とあるのは次の業務である。

第二十条第二項第二号及び第三号の業務(専ら受信料を財源とするものを除く。)

放送法 第七十三条

二 協会が放送した又は放送する放送番組及びその編集上必要な資料その他の協会が放送した又は放送する放送番組に対する理解の増進に資する情報(これらを編集したものを含む。次号において「放送番組等」という。)を電気通信回線を通じて一般の利用に供すること(放送に該当するものを除く。)。
三 放送番組等を、放送番組を電気通信回線を通じて一般の利用に供する事業を行う者(放送事業者及び外国放送事業者を除く。)に提供すること(協会のテレビジョン放送による国内基幹放送の全ての放送番組を当該国内基幹放送と同時に提供することを除く。)。

放送法 第二十条 第二項

生放送を除き、かつ受信料を財源としない放送番組や協会が放送する番組への理解を深めるものならば、電気通信回線(インターネットやケーブルテレビなど)の放送事業者を除く一般事業者に提供するような業務からなる収支は計算から外す、という理解で良いかと思われる。

この理解が正しければ、当該業務で出た損失は純粋な協会の損失となり、逆に利益となれば、積立金に含める必要のない利益だという理解になる。

還元目的積立金の取り扱い

還元目的積立金は、協会が次項の規定により収支予算を作成し国会の承認を受けた場合において当該収支予算に係る事業年度の損益計算において前項に規定する収支差額が零を下回るときに、当該下回る額を当該事業年度の予想収支差額(当該収支予算で定める当該収支差額が零を下回る場合における当該下回る額をいう。次項において同じ。)を限度として補う場合を除き、取り崩してはならない。ただし、総務大臣の認可を受けた場合は、この限りでない。

放送法 第七十三条の二 2

要は、事業年度の収支が赤字になる場合に取り崩せるお金、また総務大臣が認可した場合に取り崩せるお金という理解になる。

令和6年度収支予算書

協会がウェブサイトで公開している令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画によると、令和6年度収支予算書は次のとおりである。

【図2】令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画|日本放送協会
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/assets/pdf/2024/syushi.pdf
【図3】令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画|日本放送協会
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/assets/pdf/2024/syushi.pdf

令和6年度収支予算では570億7,904万8千円が赤字となる見込みのため、還元目的積立金から補填できる。

渋谷放送センターの建替

現在、協会の渋谷放送センターの建て替えを行っている。

【図4】令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画|日本放送協会
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/assets/pdf/2024/syushi.pdf

放送会館の整備には当然多額の資金を要するが、財務諸表上は東京渋谷の固定資産になるため、不動産価格の上昇が続けば資産として非常に心強い。

人件費

【図5】令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画|日本放送協会
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/assets/pdf/2024/syushi.pdf
【図6】令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画|日本放送協会
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/assets/pdf/2024/syushi.pdf

放送法

ここまでは協会に関して取り上げてきたが、ここで、そもそもの根拠となる放送法を知ることとする。

この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

放送法 第一章 総則

今回は協会について取り上げているため、放送法の中でも協会に関する部分に注目する。

協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送(国内放送である基幹放送をいう。以下同じ。)を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うことを目的とする。

放送法 第三章 日本放送協会 第一節 通則

協会は、他人の営業に関する広告の放送をしてはならない。
2 前項の規定は、放送番組編集上必要であつて、かつ、他人の営業に関する広告のためにするものでないと認められる場合において、著作者又は営業者の氏名又は名称等を放送することを妨げるものではない。

放送法 第八十三条

協会は、公共の福祉のために放送を行う事を目的としている。また、広告放送を行ってはならないが、広告目的でないと認められるものについてはそれを妨げない。

定義と番組編集の自由

ここまでは主に協会に関する放送法の部分を見てきた。
放送法には協会に関する規定もあるが、例えば民間放送事業者もこの放送法の規定を遵守する必要がある。

この法律及びこの法律に基づく命令の規定の解釈に関しては、次の定義に従うものとする。
一 「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)をいう。
二 「基幹放送」とは、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)の規定により放送をする無線局に専ら又は優先的に割り当てられるものとされた周波数の電波を使用する放送をいう。
三 「一般放送」とは、基幹放送以外の放送をいう。
(以下、省略)

放送法 第一章 総則 定義 第二条抜粋

放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。

放送法 第一章 総則 第三条 (放送番組編集の自由)

電波法

電波法が出てきたので、電波法にも触れる。

この法律は、電波の公平且つ能率的な利用を確保することによつて、公共の福祉を増進することを目的とする。

電波法 第一章 総則

電波とは

一 「電波」とは、三百万メガヘルツ以下の周波数の電磁波をいう。

電波法 第一章 総則 第二条

無線局の免許等

無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。ただし、次に掲げる無線局については、この限りではない。
一 発射する電波が著しく微弱な無線局で総務省令で定めるもの
(以下、省略)

電波法 第二章 無線局の免許等 第一節 無線局の免許 第四条(無線局の開設)抜粋

おわりに

協会は公共の福祉のために放送を行うことを目的としている。

民間放送事業者は、広告を放送することで対価を得て、その資金で放送を行っているが、協会は受信者から受信料という形で放送を行う事により、広告主の影響が及ばない構造となる。

放送法によると、協会、民間、いずれにしても公平な放送をするよう定めているが(放送法第四条)、資本主義における公平な放送を期待するとなると協会の放送形態がより中立的と言えるだろう。

ただし、放送番組は適法である限り何人にも制限されるものではないが、電波法における免許制である限りは、放送とは関係のない、行政側の意図で実質的に放送ができなくなることも絶対に無いとは言えない。

例えば、無線局免許の停止、取り消し等によるものが想定できる。

ゆえに、真に公平な放送と言えるのは、電波も行政の免許によるものではなく、一つの外国資本の参入を制限した固定資産のように扱った前提でなければ、無線局免許の停止取り消しに配慮した放送にならざるを得ないだろう。

受信料という財源だけを根拠に公平性の実現を謳うのは、不十分であるという考えも絶対にないとは言えないことを念頭に置くべきである。


さて、災害や緊急事態などの放送においては、近年のインターネット環境と端末の普及を鑑みて、行政放送、あるいは民間放送、またはその両方を置き、行政放送は緊急時に税金で運用、すべての民間放送に優先同時配信することで役割を明確にし、無借金経営の輝かしい優良企業たる協会は民営化してよいのではと個人的には思うところである。


参考および出典

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